弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

衆議院解散の意味合い

2014-11-24 11:57:34 | 歴史・社会
新聞を見ると、世論の多数意見として「なぜ解散するのか理解できない」とされているようてす。

私の意見は明確です。

《解散したから、消費再増税が延期できることになった。》

解散風が吹き始める直前まで、自民党と民主党は消費再増税賛成であり、国会議員の半数以上は消費再増税賛成でした。
新聞も消費再増税賛成、経団連も賛成、連合も賛成、内閣が意見を聞いた有識者も半数以上が賛成です。
たとえ安倍内閣が消費再増税延期法案を国会に提出しても、否決されていたであろう、というのが現実でした。

それがどうでしょう。
解散風が吹き始めるととたんに、民主党が消費再増税延期派に転じてしまいました。そして実際に解散が決まると、もはや消費再増税延期に反対する候補者は一人もいない状況です。
結果として、消費再増税の是非は総選挙の争点から消えてしまいました。

私は、消費再増税反対の意見でした。
日本は、15年以上もデフレと円高で苦しんできました。何はともあれ、デフレ脱却と円高是正が最優先課題でした。しかし民主党政権は何も具体策をとらず、デフレと円高が放置されていました。
安倍政権になってやっと、デフレ脱却の方向に向けて具体策がとられました。日銀による金融緩和がそれです。その結果、まずは円安と株高が進行しました。時間遅れでデフレから適正なインフレに移行しつつあり、雇用状況にも改善の兆しが見えるようになりました。
しかしそれにしても、やっとよちよち歩きが始まったばかりです。ここで寒風を浴びせたら、いつまたバッタリいってもおかしくありません。
それにもかかわらず、民主党野田政権は、有効な経済政策を全く打たないまま、3党合意の元に消費増税を法制化しました。

自民党安倍政権になって、金融緩和を中心とする経済政策を実行しつつ、しかし消費増税については見直しをしていませんでした。5%から8%への増税は、何とか乗り切れると踏んだのでしょう。しかし、今年4月からの経済は悪い方向にどんどん傾いていきました。エコノミストは「想定範囲内」としていましたが、1年前の想定と比較したらずっと悪い状況です。
こんな状況で来年の秋に消費再増税を行ったら、それこそデフレ脱却は完全に頓挫して日本経済が奈落に落ちる可能性もあります。

私は、消費再増税は延期し、再増税時期は経済の体力が確固としてから、と考えていたのですが、政治状況はほとんど不可能と思われました。
それが、解散風が吹いただけで、国会議員は全員が「消費再増税を延期すべき」に変節してしまったのです。
今回解散する最大の目的は消費再増税延期でした。しかし、解散風が吹いただけでその目的は達しました。ですから、安倍首相が「私は解散など一言も言っていません」として解散しない選択肢もいいかな、と思ったのですが、これだけ風が吹くと首相といえども解散にせざるを得なかったのでしょうね。

消費再増税を延期すると、社会保障改革が頓挫する、という議論があります。しかし、消費増税の結果として経済が落ち込み、「増税したのに税収が増えない」ということになったらどうするつもりだったのでしょうか。おそらく、「増税によって財務省は歳出権が増えた。だから、たとえ税収が増えなくても、歳出を増大したであろう。税収が増えずに足りない分は国債を増発すればいい」と言うことだったのではないでしょうか。そうだとしたら、ここは消費再増税を延期し、「社会保障改革はどうするのだ」という点を国会で審議した上で必要な措置を執る、という方が明らかに健全です。

先日、テレビで「総選挙の争点は? アベノミクスの成果は?」という放送をしていました。市井の人たちが登場し、「景気が落ち込んでアベノミクスの恩恵はない」と発言していましたが、よくよく聞くとそれは「4月からの消費増税が悪さしている」ということでした。現在世の中では、「消費増税の悪影響」は「アベノミクスの失敗」に一括りされています。議論が混迷していますね。

国民の7割は消費再増税に反対だといいます。しかし解散風が吹かなかったら、国会議員の過半数が消費再増税に賛成でしたから、再増税は断行されていたでしょう。
解散総選挙があったからこそ、国民の希望である消費再増税延期が実現するのです。にもかかわらず、世の中では「何のための解散・総選挙か訳わからん」との意見が主流ですね。

総選挙の行方は混沌としています。
コメント (1)
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