弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

渋谷シエスパの爆発事故

2007-06-23 09:38:09 | 歴史・社会
東京は渋谷のど真ん中で、白昼に大爆発事故がありました。爆発があった建物は骨組みのみを残して崩れ去り、3名の方が亡くなりました。

爆発があった建物の地下1階では、1500mの地下から温泉を汲み上げる設備が稼働していました。今までの報道を総合すると、温泉と一緒にメタンガスなどの天然ガスが汲み上げられ、何らかの理由で漏洩して地下室内で濃度を増し、メタンガスであれば5.3-14.0%の爆発限界を超え、何らかの火に引火して爆発に到った模様です。

ガス検知器が設置されていなかったことが問題になっています。しかし、都内の同様の施設の9割がガス検知器を設置していないというのですから、今回の会社のみを責めることはできません。
思い起こせば、東京の北区で温泉掘削中に可燃性ガスが噴出し、大火炎が発生した事故がありました。あの事故と今回の事故をダブらせれば、「地下室のような密室内で汲み上げを行っていれば、メタンガスが充満して爆発することは十分にあり得るではないか。何でその事態を予測した予防策が採られていなかったのか」ということになります。
しかし当事者にしてみれば、法令を遵守しつつ掘削業者に井戸を掘らせ、温泉を統括する環境省の指導や、衛生を管轄する保健所の指導を受けつつ癒しを提供していたのであって、爆発の危険があったなんて寝耳に水かもしれません。「バクハツゲンカイって何?」というレベルかもしれません。

ここはやはり、「安全を確保するための法規制が不十分であった」と言わざるを得ないでしょう。
主管官庁はどこなのでしょうか。
温泉法に制度的欠陥=若林環境相という記事で、
「若林正俊環境相は22日の閣議後の記者会見で、東京都渋谷区の温泉施設で起きた爆発事故について「温泉法はこのような爆発の危険を想定していない。そういう意味では制度的な欠陥があったと言わざるを得ない」と指摘し、現行の温泉法では安全対策に限界があるとの認識を示した。
 その上で「既存の諸法制の中で行政的に事業者に(安全対策を)要請する道がなければ、温泉法の改正も含め新たな立法的な措置を検討しなければいけない」と述べた。」
とあります。やはり温泉を管理する環境省が主管官庁ということですか。

あとは自治体の指導があります。
今回は密室である地下室に汲み上げ設備とガスセパレータが設置されていました。千葉県であれば、このような設備は許可しなかったということです。

重大事故が発生するたびに、「何でこのような事故を想定した安全規制が法制化されていなかったのか」と感じます。
ジェットコースターの車軸が疲労破壊した事故もそうです。ジェットコースターが長足の進歩を遂げ、車軸にかかる応力は昔の比ではないでしょう。それにもかかわらず、安全のための規制を強化してきませんでした。エレベーターを含め、所管は国土交通省住宅局建築指導課です。車軸の疲労破壊のようなダイナミックな現象について、事故を未然に予測して対策を立案する能力があるような気がしません。

温泉運営時のメタン爆発を予防すべき環境省も同様です。

しかし、北区での温泉掘削中の火災事故は厳然として発生していたのです。気の利いた役人であれば、「掘削完了後の営業中の温泉についても、火災や爆発の危険があるのではないか」と気付いてもおかしくありません。なぜ気付かなかったのでしょうか。
・危険に対する感度が鈍かった
・規制緩和の流れの中で、規制を強化する施策は提案しにくい
・前例主義の下、前例に反した政策で失敗すれば責任問題だが、前例通りにしていて事故が起きても責任は生じない
・所管以外の部署で危険に気付く人がいても、縦割り行政の中でその気付きを生かすことができない
・対策は事故が起きてから考えれば良いという態度
といったところが想像できますが、実態はどうなんでしょうか。

温泉法などというわけのわからない法律ではなく、消防法で規制すべきかもしれません。
コメント
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