バスーンふぁんたじあ

アマチュアバスーン吹きのメモ書き。

『Fagottoにおけるリード製作のトリセツ』ご紹介

2023年07月26日 | リード
大阪フィルハーモニー交響楽団1 番ファゴット奏者であり、ファゴットリード工房「えんとつ」でもおなじみの久住雅人氏による『Fagottoにおけるリード製作のトリセツ』を購入した。リード製作の初歩からリード調整まで、氏の経験と知識を元に分かりやすく解説した久住氏渾身の一冊だ。



この本の特徴を挙げるならば、次の二点である。

1、日本語で書かれている。
2、材料の選び方から、丸材の加工、組み立て、削り、調整、リードに対する考え方まで、写真入りで詳しく丁寧に分かりやすく解説されている。そのため、この一冊があればリード製作を始めるための一通りの知識が入手できる。

 
1、について。当たり前のようだが、これがこの本の一番の特徴であり利点であり、日本人でリード製作(調整)を始めようという人にとっては最大の恩恵である。

リード製作の著作については、外国語で書かれたものはすでに何種類もあり、スキナー本のようにリード製作者にとってはバイブルのような本もある。現在は、インターネットで検索すればいくらでもリード製作・調整についての記述は出てくるし、ユーチューブで解説動画も山ほど出てくる。が、そのほとんどは外国語である。
外国語で書かれたものでも、辞書を引きながら何とか読むことはできるであろうが、細かいニュアンスまでは分からない。しかも、インターネットの情報は断片的でまとまっていない。

これまでにも日本語で書かれた解説はあったが、情報量は非常に少なく、やはり断片的なものがほとんどだった。唯一ある程度まとまっていたのは、私が学生時代に初めてリードを作ったとき参考にした、中西祥之氏の『現代バスーン奏法』で、糸を巻かないリードの製作方法だった。細かいところまではもう覚えていない。この本は、大学の後輩に貸したところ、いつの間にか先輩からの寄贈本という扱いになってしまっていて、現在私の手元にはない。まだ受け継がれているのかは不明。その他にも、バンドジャーナルやパイパーズなどの専門誌に掲載されることもあったが、雑誌という文字数が限られている中でのことなので、情報量は少なかった。

なので、これだけの情報量を分かりやすく「日本語で読める」解説書は、日本で初めてではないか。日本人のバスーン奏者にとっての僥倖である。

2、について。詳しい内容については触れないが、リード製作に必要な知識とテクニックが久住氏の経験と溢れんばかりの情熱で解説されている。
材料の選定からマシンの取り扱いなど基本的なことから、組み立て、調整までとても細やかに解説されている。ただ、リードの設計や削り方などは、氏のリードの仕様であり考えによるだろうから、すべての人に合うリードができるわけではないが、ここを起点に自分に合ったリードを製作していけるだろう。

 たぶん、ふだんから「えんとつ」リードを利用している人は、氏の完成リード、プッペ、プロカマがあれば、プッペと完成リードをお手本にしながら、この本を参考に組み立て、削り、調整していけば、初めてリードを作る人でもある程度のリードはすぐにできるようになるのではないか、と思える。

思い返してみれば、私が本格的にリード製作を始めたのは17、8年前になるが、当時はリード製作のための情報や知識をインターネットで収集するのは非常に困難だった。特に日本語で情報発信をされているプロの方はほとんどいなかったと記憶している。そんな状況の中で、唯一私たちアマチュアに、インターネットで情報を提供されていたのは久住氏だけだったのではないだろうか。当時盛んだったmixiでも専用の掲示板でアマチュアの方々と情報交換をされていたし、当時の氏のHPには簡単ながら丸材からのリード製作の過程が公開されていたように思う。私にもそのHPは参考になった。

そんなわけで、『Fagottoにおけるリード製作のトリセツ』は、これからリード製作を始めようと考えている人、リード製作に関わっている(主にアマチュア)の人にとって、必須の一冊になるだろう。価格の一冊1万1千円は高く感じる方もいると思うが(特に学生さんにとっては)、これだけの(日本語で書かれた)書籍は当分の間出ることはないと思うので、どうしようか考えている人は買いましょう。こういった書籍は(失礼ながら)再販されることは少ないので、在庫があるうちに購入しておくのが吉。
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