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『西郷隆盛』 第九巻 単行本 海音寺 潮五郎 (著) 2008/3/7

2015年09月26日 | 本と雑誌

西郷隆盛 第九巻 単行本   2008/3/7
 
海音寺 潮五郎   (著)

amazon 内容(「BOOK」データベースより)

鳥羽・伏見の戦いに敗れた慶喜は恭順。西郷と勝の会議で江戸城総攻撃は回避されたが、上野戦争が勃発する―。著者の生命を燃焼させた幕末維新史の決定版、ついに完結

amazon 登録情報

単行本: 379ページ
出版社: 朝日新聞社; 新装版 (2008/3/7)

=====


上野の銅像の話からはじまって、上野戦争で終わり、これが著者の絶筆となった。

『武将列伝』や『悪人列伝』その他なども遠い昔に読んだ記憶があるのだが、

史伝とはこういうものだったのか。
膨大な史料、当時の手紙などをていねいな現代語訳で示し、それ自体が幕末維新の歴史を語る。

著者の考えも小説と違い直接的だ。

「伝記というものは、ほれこんで、好きで好きでたまらない者が書くべきものと、私は信じています。」(一巻あとがき)であっても、ひいきの引き倒しにはならないのである。
その記述の詳細さは、これまで読んだ西郷伝や維新史を圧倒している。著名な作家や歴史家の説も、もう簡単に鵜呑みにしてはいけない。


西郷隆盛ほど多くの伝記が書かれている人物は、イエスキリストをのぞけば
ほかにはいないだろう、とはよく言われるが、
本書は、個人の伝記としては世界的にみても最も長いものになるのではないだろうか。
大変な長編である。

明治六年(征韓論 遣韓大使をめぐる論争)政変 西南戦争 大久保の死 ともっとも読みたかった
ところにさしかかる前に、絶筆となってしまった。

しかし、第一巻からふりかえると、西郷の敬天愛人の思想についてそのつど語られ、他の西郷伝記や研究書にある誤解や盲説はていねいに、しりぞけられている。

征韓論について後世の誤解(一般に考えられているような、内治が先か外事が先かの論争ではない)についての見解や

西郷と大久保との違いなどについては、これまでにほぼ浮かび上がっていたのだが西南戦争での城山での死については、もう少し読みたかった。

統制主義の久光に取り入って出世した大久保、統制(久光)嫌い西郷との違い。

大久保の内務省国家・警察国家路線は、後継者によって継がれ、昭和の敗戦まで続いたが、城山の露と消えてしまった西郷は、

戦後の新しい価値観からは、否定的にみられる傾向もある。

これまでの西郷に関する本の著者が、ないがしろにしてきた、奄美での西郷の暮らしや、その間の中央政治の動きについて詳しくかかれている。

 それは、維新史を考える上でも西郷の思想を知るうえでも重要なことである。

=====もちろん鹿児島が日本近代のさきがけになることができたのは。西郷や大久保など政治的英雄がいたからだけではない。

世界にひらけた海や、地理的条件、海外の新しい文化や実学の知識と技術を吸収した学者や、技術を具体化して人々の存在を抜きにして歴史は語れないのだが。

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