馬糞風リターンズ

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「ショウブ」地名考(1)新日本地名検索

2022年03月27日 | 地名・地誌

「勝負谷橋」名前は橋が設置された場所の小字地名「勝負谷」に由来すると考えられます。そこで地名としての「勝負谷」について考えてみます。

「民俗と地名・民俗地名語彙辞典(上)」(三一書房)

【ショウブ、ショープ】

地すべりの災害の起りうる土地に住んでいる人々は、水が最大の誘因である場合が多いのだから、水の管理をきちんとすればいいわけである。その水路管理の場所をショウブ(菖蒲)とかショウズ(ショーズ)という。

昔は浄化の意味もあったのか、水路に菖蒲を野生させていたので、水路または水汲み場をショープといった。

〔小川豊『地名と風土』二巻〕

ショープは水路のこと。菖蒲谷、勝負谷と宛てた地名は多し。菖蒲はショーズやシズと同根で「細流」を意味する地名。

植物の葛潜も、そういう環境の名によっている〔『日本地名学』Ⅱ〕。

菖蒲の地名は、北海道以外の全国に多い。

菖蒲、菖蒲池(沼、沢、日、追、作、野、根、尾、越、峠)、勝負谷(平)、勝生、勝部、勝風、庄部、庄府、庄布

シ  川、生部、正部、正部谷(日、家)、相婦、小分谷、醤油谷価  〔『日本の地名』〕。

 勝負、菖蒲などは「ショウブ」地名であり表記として勝負、菖蒲、勝部・昭府・庄斑などなどで表記されています。

そしてこの「ショウブ」地名は北海道や離島などを除いた列島各地にみられるそう珍しくない地名です。

新日本地名索引全三巻・別巻地名レッドデーターブック(アッポク社)

国立科学博物館 金井弘夫(植物科学研究部部長) 編

国土地理院1/25,000地形図から全地名38万余件の読みと漢字 ・位置を収録したわが国最大級の地図地名資料。自然科学・博物学・文学・統計等の広い分野で活用されている。博物学全般にわたる基礎資料としても有効。

Aboc - アボック社 -新日本地名索引全三巻

大変な労作です。「落合」「相生」地名の分布を調べたことがありますが、国土地理院の地図を広げて虫眼鏡片手に定規でなぞって拾い出したことがあります。

それから比べれば格段に効率がよく便利なものです。

 新日本地名検索・五十音編から「ショウブ」地名を抽出しカウントしたのが下記の表です。

国土地理院1/25,000の地図上に200ヶ所「ショウブ」地名があります。

下菖蒲(山形・佐賀)、下正部(長野)、下正夫(徳島)、下菖蒲庭(福島)などの地名があります。

このように○○ショウブを抽出すればもっと多くの「ショウブ」地名が存在すると思われます。

即ち「ショウブ」地名は、それほど珍しくないことが分かりました。

更に縮尺の大きな地図であればもっと多い「ショウブ」がカウントされるかもしれません。

また、時代を遡った場合はどうなるのか興味のあるところです。

「勝負谷橋」で名前の由来で参考にした「小字地名」を全国に拡大すればかなりの数の「ショウブ」地名を採集することができるはずです。

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勝負谷橋(9)橋の名前は地名が由来。

2022年03月06日 | 地名・地誌

「勝負谷橋」に関しての古い記録は見付りませんでした。又、説話や伝承もありませ。その為に橋の名前の由来を考えるには他の方策が必要となります。

 勝負谷橋(8)の調査データーによると、橋の名前は多くの事例から設置された川の名前、或いは地名(橋の両端の地名が異なる場合:両右方の地名から1字取り合成したりします)に由来します。

勝負谷橋は天竺川に架かっています。「勝負谷橋」(2)で検証したように「天竺川の由来については、流域にあった天竺山石 蓮寺からきた」ことから、設置された川「天竺川」は古代からの名称と考えられますから該当しません。

そうすると「勝負谷橋」は「勝負谷」と云う地名と考えられます。

豊中市史(旧版)の付録に「豊中市小字表」があります。

旧村の小字地名の一覧がが列挙されています。

「旧熊野村」57.勝負谷(しょうぶがたに)があります。

参考として旧桜井谷村少路13.菖蒲谷(しょうぶだに)と云う小字があります。

新修豊中市史・第1巻・通史Ι・豊中市大字小字図1~8

「勝負谷橋」の名前の由来は、設置場所の小字地名と考えるのが妥当と思われます。

 ※次回からは「勝負谷」から「ショウブ」地名を調べます。

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