脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

右脳活性化in長野

2008年06月30日 | 私の右脳ライフ

魅力的な町小布施に行ってきました。
小布施といえば栗。栗の花盛りでした。

 

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小布施は平成14年から各地区に「脳のリフレッシュ教室」という名前のボケ予防教室を立ち上げてきました。各教室はちゃんと続いていて、その交流会の様子を2月29日と3月7日のブログに報告してあります。
その本年度立ち上げ地区のための講演会です。
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講演会前日の夕方から勉強会が予定されていましたので、それに間に合うためにはゆっくり自宅を出発すればいいのです。でも、折角ですから「この際善光寺参りでも」と思い立って、長野の友人を誘って数時間の善光寺参りとしゃれ込みました。
長野駅に到着したのが11時まえ。早速駅前の川中島バス「ぐるりん号」に乗って100円で善光寺大門前へ。

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バス停のこちら側には 、こんな風情のある建物がありました。
昭和初期の建物だそうです。もともとは五明館という創業200年という古い旅館だったそうですが、フロント部分がクラッシック郵便局(その名も善光寺局)、一部おしゃれな漬物やさん、そして立派な庭付き離れはレストラン五明館になっていました。
周りにもおしゃれなお店が立ち並び、人も行き交い、街づくりに心を配った開発がなされていました。
私たちのお昼の時間が近づいています。
このレストラン五明館にも心惹かれるものはあったのですが、道向こうを見ると、さらにまたおしゃれな建物が!
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The Fujiya Gohonjin「藤屋御本陣」と表記すればピンと来るでしょう。江戸時代からの屈指の老舗旅館で加賀前田藩の本陣だったそうです。
そこをリニュアル。イタリアンレストランやウエディングができるように改装したと聞いて、「今日のお昼はここ!」と異口同音に意見が一致しました。
私がもともとミーハーなのです。
クロークで受付、ちゃんと案内されてダイニングルームへ。昔の雰囲気は残せるだけ残した、そんな感じで和のテイストいっぱいのモダンインテリアでした。
ダイニングルームから庭を見る
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メニューは、3000円くらいかと覚悟していたのですが、パスタランチ1000円、魚料理を選んだコースは1500円。それにフォカッチャ食べ放題。
左の壁一面に日本画の壁画が残されていて、イタリアンとの、よく言えばコラボが図られていました。
客層はほとんど女性。
フロアいっぱいのお客さんでしたが、男性は二人だけ、それもカップルで来た若者でした。
女性は友人同士、母娘、幼児連れなどさまざまな組み合わせ、年齢もさまざまでした。  
サロンからの景色                
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「長野ではじめてサービス料を取るレストラン」というのが、ここの触れ込みですが、そういうお店ができたら「行ってみよう!」という乗りで行動できるのは女性のほうが多いのかなあ?
もともと平日の昼間は男性はお仕事、でもここに見えてる年配の方たちは全部女性だし・・・
男性は夜の接待には来るかも。でも退職後に来る人はどのくらいいるかなあ?
など、私たちの席では「レストランと老後の生活」をテーマに話が盛り上がりました。結論は「興味津々。何事にも首を突っ込めるほうが老後は有利よねえ」と今日のミニトリップを自画自賛して後はサロンに席を移してコーヒータイム。
その後は、善光寺におまいりしました。
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本堂では、お戒壇巡りをしました。
「お戒壇巡りとは、瑠璃壇床下の真っ暗な回廊を巡り、中程に懸かる御本尊様とつながれた極楽の錠前に触れ、秘仏の御本尊様と結縁を果たし、往生の際、お迎えに来ていただけるという約束をいただく道場です」
真っ暗の中をそろそろと進んでいったのに、肝心の錠前に触れず終い。どう考えても残念だったのでお坊様にたずねて再挑戦。二度目で結縁を果たすことができました!隣の長野県信濃美術館・東山魁夷館でまさに右脳刺激を実感し、4時に長野を出発。5時間の密度濃いミニトリップは終了しました。
あ~、楽しかった♪

 

 

正常から認知症への移り変わりー時の見当識から類推可能な重症度

2008年06月19日 | 正常から認知症への移り変わり

ボケ始めはどういうことがおきてくるのか、続けていろいろ書いてみました。

研修会でも強調するように、生活していく時、その原点をなすものは「見当識」(特に時)です。
見当識には三つあります。
「今何時か」「ここはどこか」そして「私は誰で、あなたは誰か」この三つの見当識が確実でないと、安定した生活は望むべくもありません。
今日はその見当識の中でも、MMSの成績と相関が大きい「時の見当識」の落ち方についてまとめてみます。

見当識が低下していく順番は、時→所→人ですが、最初に低下が始まる「時の見当識」ですら、実は小ボケの状態ではまだあまり影響は出ていません。
我が家のグラナダ
                     
小ボケの終わりごろになって、今日の日付がややあいまいになってきます。
関心が薄くなったり、一日二日間違えたりしますが、指摘されるととてもよく納得してくれます。
我が家のルノアール

中ボケになると、まず本人がしつこいほど聞くようになりますが、いくら教えてあげても「ざるに水」状態になって今日の日付はあいまいなままになります。
つまり見当識の中で最も早く低下し始める「時の見当識」ですら、いくら注目していても、ボケの早期発見はできないということになります。
トケイソウ

大切な情報を! 時の見当識の低下順です。
まず日付があやふやになります。ちょっと間違えても修正できるまでが小ボケ。日付があやふやになって、すぐに修正できなくなったら中ボケに入ったことになります
それも一日二日の間違いから、上旬中旬下旬程度はわかっている状態、何日かまったくわからない状態まで幅があります。
日付がすっかりわからなくなってから、今年が何年かわからないということがおきてきます。
でも、そのときなら今が何月かはわかっているのです。ここまでが中ボケの真ん中で、改善の可能性がとても大きいレベルです。

次に、今が何月かすっかりわからなくなってくるのですが、そこまでいくと中ボケの真ん中を越えて下限に近づいてきていますから、なかなか改善は難しくなります。

年と月の関係と同様に、今何月かがわからなくても、今は夏とか冬とか季節はちゃんと分かっている状態が、まず起きてきます。

そしてその後に季節感が無くなるのです。
そのレベルになると今の季節が何なのかはっきりしませんから、夏なのにセーターを着たりマフラーを巻いたりし始めます。冬なのに夏の格好をすることもあるにはありますが、頻度は夏に冬の格好をするほうがはるかに多いのです。
中ボケの下限ということになります。ここまでくると維持を図るのが精一杯でしょう。
そしてここまでくると「ボケたんじゃない?」と囁かれるようになりますよね。
去年のダリアが咲きました
  

大ボケになって、昼と夜を取り違えて、夜中に電気をつけて回ったり、騒いだり、果ては会社や田んぼに行くと言い張ったりします。
そうすると、そう「気の毒にボケた」って言うんですよね?

「時の見当識」に注目しても、小ボケは発見できませんが、大ボケの症状を見せる前に、いろいろなレベルや段階があることを知っておくことも大切でしょう。

「時の見当識」に関連して、北海道K町のK保健師さんの話が面白くて忘れられません。               
「教室に来るのに、十分時間をとって来る人はまあまあです。
ほんとに元気な人は大体駆け込んできます。だって皆さんすることがたくさんあって忙しいんですから」
「あまりにも早々と来る人は事情をよく聞かなくてはいけません。家人の都合で、『ついでがあるから早いけど送っていくよ』というケースがあるからです。
そういう時は本人は何か持ってきて時間つぶしをしています。本とか手芸とか俳句ノートとか」
「1時間も早く来るときは、友達と会うのが楽しみでついつい早く来たという場合もあるし、時間を間違えているのかもしれません。
時間を間違えているときは、持ってこなくてはいけない物を持ってき忘れたりというようなトラブルが他のシーンで起こります。そしてまた、その手のトラブルを繰り返すのです。こういう人が小ボケ」
ホテルの七夕飾り

「中ボケの人は、教室開催日を間違えてしまって、一人だけ別の日に来ます。
何度も『今度の教室は何日だったでしょうか』と電話がかかってきたりすることもよくあります。そういう時は、結論的にはほとんど間違えてしまうんですけどね」
インパチェンス
 
このように、症状は、興味深く聞くことができるでしょうが、保健師さんたちは専門家なのですからその次の段階が大切なのです。
この症状は、どういう脳機能レベルなのかを類推する癖をつけてください。
もちろん繰り返しお話しているように、まず、脳機能テストが必要条件ですよ。
自分の中で、この脳機能ならこのような行動(症状)という物差ができるためには、脳機能テストの実践と生活実態の聞き取りが不可欠なのです。

早くその物差を身につけていただきたくて 、軽い症状からの推移を書いたのです。


正常から認知症への移り変わり「おしゃれだった人が・・・」

2008年06月10日 | 正常から認知症への移り変わり

洋服を上手に着ることができなくなって、誰かに着せてもらうようになったら
「とうとう、洋服も着られなくなってしまいました」といい、それは「そこまでボケてしまった」と同じ意味に使われます。
近所のいがいが根。荒れた海です。 

今日まで元気でおしゃれをしては外出を楽しんでいた人や、そこまででなくても、朝になったら寝巻きを着替えて季節や目的にあった洋服を着ることができていた人が、突然、自分で洋服を着ることができなくなることはありません。
もしあれば、それは重篤な精神症状か(それならば、若いときから繰り返しています)脳の器質障害がおきたことを意味します。
着衣を司る場所は右脳にありますから、そこに梗塞や出血など病変が起きたら、突然洋服が着られなくなります。
そのときはすぐ脳外科を受診することです。

ボケが進んでいった最終段階は皆さん承知していますから、この着衣について、老化が加速されたらつまりボケ始めたらどんなことが起きてくるのかお話しましょう。小ボケの段階。

「おしゃれだった人が」か「きちんとしていた人が」が前提条件です。

①おしゃれをしなくなった。
②お化粧をしなくなった。
③あんなにセンスがよかったのに、考えられない色使いをしている。
④ブローチをウエストにつけている。
⑤襟ぐりや袖口から下着が見えている。(のに気にも留めない)

⑥いつ見ても髭をそり残していたり、そり傷が目立つ。
⑦ネクタイやシャツに食べこぼしが目立つ。
⑧ネクタイの締め方がだらしない。
⑨ズボンのチャックがきちんとあがっていない。

小ボケは社会活動での不都合が起きる段階ですから、家庭の中ではその状態が起きていても問題にされないことがほとんどです。

中ボケの段階。

中ボケの始まりは、小ボケの程度がちょっとひどいくらいのものですから、
「なんとなくだらしないんです」とか
「ちょっと、ズボンをあげたり、シャツを突っ込んだりしてあげないとグズグズなんです」とか、よくいわれます。
これって、幼児が一人で洋服を着たときと同じですよね。
もちろん、ボケの進行とともにだんだん小ボケとは違うことがおきてきます。

①セーターの上からシャツを着るというふうに着る順番を間違える。

②シャツの前後が逆になったり、裏表になったりする。
肩パットのある服を裏返しに来ても平気です。
この頃、シャツや上着のボタンの掛け間違いやかけ忘れが目立ちます。

③目的にあった服装ができない。
パジャマを着たまま、出かけたりします。
中ボケ下限になると、葬式に礼服を着ず普段着で出かけるようなことも起こります。

④服の着替えを嫌がる。
風呂上りに、汚れた下着の上に重ねて新しい下着をはいたりもします。

⑤重ね着が目立つ。
襟があろうがなかろうが、順不同に重ねます。
パンツ、下穿き2枚、ズボン、スカートとはいて苦しがったりもします。
季節に関係なく重ね始めます。
中ボケの下限で、夏にセーターを着て「もしかしてボケ?」と言われはじめます。

⑥暑くても脱がない。寒くても着ない。
幼稚園児が気温に応じて着脱ができないのと、ちょうど同じです。
この段階で、夏にしっかり布団をかけて寝て脱水状態になったりします。

大ボケの段階。

①汚れた下着をそのままに着る。
高齢者の失禁はよくあることですが、正常であれば適切な処置ができるのです。汚れたまま着ているとしたら、大ボケに入った指標です。

②洋服を着るのにやたら時間がかかる。
着衣失行の一歩手前のように、セーターを頭にかぶるだけでも試行錯誤。最終的には着られても時間がかかりすぎるので、結局は家人が着せるようになっていきます。

おしゃれだった人が、小ボケに入ったらすぐにわかりますが、もともと身なりに無頓着のまま来た人は、当然わかりにくいことになります。
それと、洋服はすべて妻任せという場合もわかりにくいですね。

いくら症状を書き連ねても、ボケの早期を見つけようとすればするほど、脳機能検査が不可欠ということがよくわかります。





正常から認知症への移り変わり「スピードが遅すぎて怖いんです」

2008年06月06日 | 正常から認知症への移り変わり

脳の老化が加速されたとき、つまりボケ始めたら車の運転に関してはどんなことがおきるのか話してみましょう。
  「ちっとも顔を見せないんだから・・・」(人の見当識)4/29
  「♪今日もコロッケ、明日もコロッケ・・・」(料理)5/17
  「部屋で鶏でも飼わなくっちゃ」(食作法)5/22
に続く第4弾です。
今朝撮った我が家の日本アジサイたち
(花の直径は6~8センチ足らず)
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小ボケ(ほとんど男性)の付き添いの家族の方(ほとんどその妻)がよく言われることばです。
「お父さんの車に乗ってると、スピードが遅すぎて怖いんです」

他の車が50キロを超えたくらいのスピードで走っている道で、よく言えば悠然と、正確に表現すればまったく自分のことだけしか考えずに(これも正確に表現すれば、考えられずに)、30キロくらいのスピードでトロトロと運転する人がいます。もちろん以前は普通に運転ができていたのですよ。

もともと加齢とともに難しくなってくる注意集中・分配能力は、前頭葉の老化が加速されると、早い段階から影響を受けることになります。ちなみにそのために「かなひろいテスト」ができなくなるのです。

小ボケ状態になっても、運転はできるのです。それどころか中ボケの人が運転していることだってあります。
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農業を長くやってきた高齢者は、体に染み付いて体が覚えているような行動、鍬を振るう。畝を立てる。苗の植え付け。草取り。支柱の用意。収穫の手際etc
農作業そのものは上手にこなすことができます。

小ボケの主婦が、単調ではあっても家事をそれなりにこなすというのと同じです。
小ボケは家庭生活には支障を起こさないという所以です。

ついでにお話しすると、中ボケになると、その作業中に判断が必要な状態が起きたら、トラブルが起きてきます。
やたらと苗を植え替える。雑草と一緒に苗も抜いてしまう。食べごろのものを収穫できないetc

運転は、本来的には注意集中力も注意分配力も大きく要求される作業なのですが、いったん体が覚えてしまったら、実際には前頭葉を関与させずに体が覚えたレベルでの運転もできるのです。
ただし、本人は周りの状況に注意を分配させることができないので、その道路の車の流れに乗ることはとても難しくなります。自車にしか注意は向けられていませんし、手際は悪くモタモタしますから、その結果「スピードが遅すぎる」状態になるのです。

私の今までの経験では、北海道別海町の保健師さんから
「小ボケの人の運転はほんとに怖い。冬の雪道を100キロくらいで運転した人がいます!」と聞いたのが、「スピードを出しすぎて怖い」唯一のケースです。
この場合は、もちろん注意集中・分配力にも問題はおきているはずですが、それ以前の状況判断力に問題があると考えるべきでしょう。
アクセルを踏み込まないという抑制が効いていないことも考えられます。
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具体的な例を挙げておきます。 

①軽い接触事故が多くなる。
自宅の車庫入れの時にちょっとぶつける。
ことは誰にでもあることかもしれませんが、それを繰り返す。
塀や壁にちょっとぶつける。
ことは誰にでもあることかもしれませんが、ぶつかった後にバックせず、そのまま前進を続けるためにコツンと当たっただけの傷が線状になって痛手が大きくなる。
バックのときに、確認しないままにバックしてちょっとぶつけてしまうことを繰り返すこともあります。

②駐車場でのトラブル。
広い駐車場でなかなか自分の車が見つけられない。
ことは誰にでもあることかもしれませんが、一度その体験をしたら覚える工夫を普通はします。小ボケになると毎回困惑してしまうのです。
会社に出勤してまず1階に駐車し、その後ちょっと出かけて今度は2階に停めたような場合、退社時「車が無くなった」と大騒ぎ、時には警察にまで連絡したりします。

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③運転マナー。
フラッシャーが遅い。どころか出さないままに右左折をしたり車線変更をしたりします。
中央線寄りを走っているので右折の準備かと思っていると、まったく関係なかったり、逆に左折したりします。
半ドアに気づかずにそのまま走ることもあります。
駐車の時、幅寄せや縦列駐車が極端に下手になります。

④出会い頭の事故が多くなる。
四つ角でも、トロトロ出るので大事故にはなりません。
「確かにこちらを見てたのに出てきた!」と相手側が憤慨することもよくあります。

⑤道を間違える。
慣れた道を運転しているときに、どうしてこの道を選ぶのかわからないような行きかたをしたり、「アレッよくわからない」と呟きがもれたりします。
普通運転しているときは、現在の運転そのものにも注意を集中しますが、一方で、どこに何のためにどのようにして(道の選択)行くのかも同時進行的に考えています。そこがあいまいになるということです。
どこかに行くときや帰るときに、予想外の時間がかかってしまうことがよくおきるようになるのです。
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⑥事故を起こしたときの対応ができない。
万一、事故がおきたとき、特に人身事故の場合はその後の対応がとても大切になります。
怪我があるようならば、まず救急車。警察や保険屋さんや家などに連絡しなくてはいけません。
そのあたりが、まったくお手上げ状態になるのです。
いわば腰を抜かしたような状態とでもいえばいいのでしょうか。その場の状況に適切に対応する前頭葉がうまく機能していないのですから当然といえば当然ですが。

その行動を起こしているときに前頭葉はどのように関与しているのかを考えるようにしましょうね。
行動のパターンは前頭葉が働いた結果なのですから、以前と比べてどう変化したかも大切な指標です。

 

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