脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

質問「脳を元気にする食べ物やサプリはあるか?」

2021年11月01日 | エイジングライフ研究所から
だいぶ前に友人から質問が来ていました。
「脳を元気にする食べ物やサプリなどありますか?」
私の答え「ないです。実にそっけなくてごめんなさい。でも、基本的な考え方が違うので、ないとしか言えません」
友人はもう少し食い下がってきましたが、その時も認知症に対する考え方がこれほど違っている状態の中で、エイジングライフ研究所の主張をどうやって、世の中の皆さんにお伝えすればいいのかと、ちょっとへこみました。

そもそも、一般的に「認知症の原因」としてあげられるものは、まずアミロイドベータです。皆さんも耳にしたり読んだりされたことはあるでしょう?
脳の中に、アミロイドベータがたまってきて、老人班を形成し、それが認知機能低下を引き起こす(のではないか?)。という大前提があります。
あくまでも仮説ですが、それを前提にしていろいろな試みがなされていました。

たまったものを除去する。
たまらないようにする。
正統的ですが、なかなかうまくいかない。世界中の製薬メーカーでこの試みに対して努力が払われましたが、結論としてアミロイドベータに対するこのような試みはすべて徒労に終わった…アミロイドベータ説の破綻というこの事実はどういうわけか、あまり巷で納得されているようではありませんね。

現在はこんな試みが始まっています。できるだけ早く、アミロイドベータを見つける。早くて少量のうちに見つけることができればどうにか除去できて悪さをしないのではないかという試みです。
そもそもアミロイドベータがなぜ生成されるのかということも、完璧には解明できていない状況で、どんどん除去してもいいのかどうか?と私は素朴に思います。

認知症になる原因として、今お話ししたアミロイドベータとかタウタンパクとかの物質を想定する限り、このようなアプローチになるのは当然ともいえますね。
長い間、多くの人材や、多くのお金を費やしながら成果が上がっていないからこそ、視点を変えてみる必要があると思います。

認知症を作り上げる原因物質があるのではなく、大胆に言い切ってしまえばそれらの物質は結果に過ぎない。このような考え方を、皆さんに提示したいと思います。
エイジングライフ研究所の長い間の活動から、導き出された結論は「認知症になるかどうかはその人の生き方による」。
生き方というのをもう少し詳しくお話しすると、「生き方」というのは「脳の使い方」にほかなりません。
巷には「脳トレ」と称して様々なドリルやゲームっぽいものなどあふれています。中にはこれは使えるかもと思わせられるものも稀にありますが、そのほとんどが「脳の働き」をあまりにも単純化していると思います。

人が生きていくときには、その瞬間、瞬間に、様々な状況の判断や見通しを立てて行動を決定しているものです。その時、その人の価値観や体験や現在の心理状況なども大きく影響しています。
進むか退くか。楽しく取り組むか、いやでもなすべきものとして取り組むか、義務としてやるか。
それらのすべてが私たちの脳の働きの結果であるというようなアプローチには、お目にかかったことがありません。
もちろん全体的な脳の働きをそのままに理解することは、困難です。理解がしにくいところもたくさんあります。
でも、子供は子供なりに、大人になればなるほど複雑に状況判断しながら生きています。毎日をいろいろ思いを巡らせながら生きているのに、「脳りハ」は単純化しすぎているのではないですかといいたいのです。

本題です。
「脳を元気にする食べ物やサプリはあるか」
やっぱりないとしか言えません。第一に脳脊髄関門という働きがあって、ほとんどの薬物は直接脳に入ることができません。覚せい剤とアルコールだけはその関門をすり抜けることができるのですが。そこから考えても、専門家に尋ねてはいませんが、サプリがそのまま脳にしみこんでいくなんてことは、ありえませんね。
ひところ注目されたDHAなどの青魚由来のさらさら油分。必須脂肪酸が血液の巡りをよくすると言われたのですよね。

脳は使うことによって、血液を呼び込む。その結果血液の流れがよくなるのです。
じっと居眠っている生活、つまりほとんど脳を使っていない状態では、血液は動きようがありません。栄養分を運搬できる血液が用意されていても、宝の持ち腐れ。
寝たきりの生活は一般的に言えば脳の活動から言えば不利だというしかありません。でも、寝たきりであったとしてもその人が、自分が受け入れざるを得ない現在の状況を深く意味づけたり、周りへの感謝に思いを馳せたりしているとすれば、脳はイキイキと活動していることになります。その時は寝たきりであったとしても、脳の血流はどくどくと流れているということになります。
結論として、脳を自分らしく使い続けることをしないと、正常老化に廃用性の機能低下が起きてきて、その先に認知症が起きてくるという私たちの主張から言えば、食べ物やサプリは必要条件であったとしても(そこにもかなり疑問符は付きますが)十分条件にはなりえない。ということになります。
脳を使うときのキーワードは、脳全体の司令塔である前頭葉です。自分らしく楽しく充実した生活をすることこ認知症予防に直結します。

よかったらこの記事も読んでください。
この世に認知症治療薬はほんとうにあるのか?


2 コメント

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Unknown (佐久本梛生)
2021-11-07 19:33:31
高槻先生、お世話になります!
沖縄、佐久本です!今回高槻先生に出会い脳についてとても興味をもちました。本当に良い時間でした。
自分でも脳について勉強してみようという気持ちでいっぱいです!!!
Unknown (ageinglife)
2021-11-07 20:59:04
コメントありがとうございます。
今回は仕事でしたから、ゆっくりお話しできなくて残念でした。
11月というのに、沖縄で再びの「夏」を楽しみましたが、これからは段々と寒くなってくることでしょう。
どうぞお体大切になさってくださいね。

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