脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

有朋自遠方来、不亦楽乎-JTT奮闘記②

2020年03月17日 | 私の右脳ライフ
春雨や菜種梅雨ということばがあるくらいですから、今の時期、雨が降っても仕方ありませんが、先日はお客さんが滞在中二日間とも雨・・・という残念なことが起きてしまいました。
ところが。
私たちみんな大満足。幸せ感いっぱいに過ごしています。私たちというのは、次男が幼稚園年長さんだった時の担任の木ノ内先生。仲良しだったけい君のママ。お知り合いになったときから言うと40年!ママ友石野さんとは年に1度か2度は触れ合いがありましたが、木ノ内先生とはほんとに何十年ぶり!静岡県磐田市から来てくれました。
ホンコンドウダンツツジ

先生から頂いたメールの抜粋です。青字です。
「~学びと感動の連続でした。久しぶりの高槻さんとの再会、おいしいサバオクンバーガー(城ヶ崎海岸駅から1分肴や大ちゃんのオリジナルランチ。サバすり身の自家製さつま揚げ使用。絶品)、聚光院襖大徳寺聚光院伊東別院、宗弘さんご家族の御心遣い、珍しい「ぼんてんば」、川奈ホテル、ためになるちょっと難しい脳の話、食事南京汁(親戚のおじいさんが私の作ったカボチャスープをこう命名。そういうエピソードを語るのも楽しい)、黒牛の赤身ステーキ(長男がちょっとかかわっているポケットマルシェで注文しました)、Jガーデンの足湯とシダ、素晴らしい雪景色どこも温かな人との触合い、高槻さんのお人柄のお陰だと思います。ありがとうございました。行けて良かったです。ご主人様の優しさと熱意とても魅力的でした。~」
ちょっと褒められすぎですが、結構あれこれと楽しんだなあと、ニヤニヤしてしまいました。
川奈ホテル(1936設立。日本のクラッシックホテルのひとつに数えられる)

ほんとは入れない川奈ホテルのメインダイニングで。右端は先週伺った河津「禅の湯」の由里子おかみです。飛び入り参加でしたが、しっくりとなじんでいましたね。
「ハリーポッターみたい」ぱっとそんな言葉が出てくるのも楽しい!
「この窓の向こうに富士山が見えるんです」晴れた日に来なくっちゃあ!

コーナーのお花。

曇り空でもきれいです。

翌日天気が良かったら、富士山を見に行くつもりがあいにくの空模様。
「天城に鹿でも見に行こうか」と夫が言い出して、急遽天城高原へドライブ。だんだん雪が見えてきて、車内はちょっと興奮状態。磐田は風花は舞っても積もることはないんです。
木ノ内先生が一番喜ばれたかな。ずっと幼稚園児との対応をやってこられたので、みずみずしい感性がそのまま維持されているのですね。

道端で青年たちが雪だるまつくりを楽しんでいました。

ランチのために寄った、東急天城高原ホテルのロビー。
ここでも「真正面に富士山が見えるんですけど・・・」といってくれますが、私たちは
「富士山の御祭神は木花咲耶姫。美人が来ると顔を出さないんですってよ」と笑いの種。

遠くの山

近くの馬酔木の植え込み

天気は悪くても、楽しい一日。再会を約束してお別れしました。
宴の後、余韻をかみしめています。
新しいことやものを見たり体験したりすることは、確かに楽しく脳も活性化されます。ところが今回の満足感はそれとはまたちょっと違う気がします。
自分の人生を振り返ったときに、確かに幼いわが子と一緒に時を過ごしたという実感が迫ってくるのです。満ち足りた幸せな時間をもう一度味あわせてもらった、そんな気がしています。
木ノ内先生が「大ちゃんの何事にも興味津々。果敢に挑戦する。そのうえ出来そうと思ってやる態度に感心しました。今でもよく覚えています」といってくださったとメールしたら
「おおー、懐かしい!この態度は母の育児の賜物だね」と次男から返信が届きました。
幸せな時間をありがとうございました。



有朋自遠方来、不亦楽乎-JTT奮闘記①

2020年03月16日 | 私の右脳ライフ
JTT:Japan Takatsuki Toursは、友人たちと遊ぶ時に運転を受け持つのが夫。スケジュール作成担当が私ということをふざけて名乗ってるのです。
メンバーは誰々?天気は?今しかできない「もの」や「こと」はないか?食事は?
友人たちの顔を思い浮かべながら、セットしていくのは楽しいものです。
2月3月に友人たちが訪ねてきてくれました。繰り返し訪れるところもたくさんありますが、同行者が違い天気が違うだけで、感動する場所も会話も異なるところも面白いものです。
城ヶ崎海岸のJガーデンは、皆さんが「ここはどこ?日本じゃあないみたい」といいます。コテージとカフェ。最近足湯も楽しめるようになりました。

1メートルは優に超えてるリュウゼツラン。水平線には房総半島が見えます。

5センチくらいの宇宙の木

こんなお客様に遭遇することも。

塔に登ると360度の展望です。

京都大徳寺聚光院伊東別院も魅力的です。千住博さんの襖絵をすぐそばで見られる幸せ・・・
待合まで設けられたお茶席があります。京都聚光院の閑隠席の写しですって。

一般の人はあまり行かないところに小さな墓所があります。さくらに惹かれて・・・

聚光院は襖絵も建物も魅力的ですが、景色も見事。川奈ホテル、初島、高い山は大山でしょうか。

「初島に行きたい」という友人がいて総勢5人の女子会。熱海―初島はたった30分の船旅ですが「旅感」は高まります。左に見える初島は黒く、遠い大島はかすんで見える。とっても常識的だけどなぜかしら?

今日の宿は初島クラブ

コロナの影響でしょうか。泊り客は少なかったようで、露天風呂に私一人というぜいたくさ。大室山と小室山が見えています。

朝散歩。初島灯台。K添さんご夫妻と一緒に行った初島旅行を思い出しました。
12月の右脳訓練(レイアウトが崩れて直せません)もう9年も前の話!
青空と灯台を見ながら、そばにK添さんがいるようでした。
一緒に楽しんだ時間というのは、思い起こせばいつでも脳を活性化してくれます。

この女子会には、仏像イラストレーターの田中ひろみさんがいたため、下田の上原美術館へ。実は半月前にも訪れていましたけど。
つまり同じ展示を二度拝見しましたが、十分に楽しめるところがすごいです。前回は快晴、今回は小雨模様の訪問でしたが、ひとしお風情があったように思いました。

仏像を系統立てて展示してありますから、最初は圧倒されます。

ホール入り口の金剛力士像。阿形。(回転できません)

吽形
こんな素敵なお庭を眺められる休憩室もあるのです。

俳句に打ち込んでいる友人がいましたから、俳人の心に触れる体験になるといいなあと思って「小室山椿鑑賞会」にも行ってみました。
椿の館があるのです。入口。

お雛様と一緒の展示で、和風のレイアウト。

でも洋花の椿も。

一輪挿しにたくさんの椿が挿されています。茶道で珍重する花もたくさんあって、ちょっと余分の感動が。紺侘助は知りませんでした。

伊豆にくらしていますから。

これも初めてです。

友人の声「なぜ~なぜ都鳥っていうの!」
「都鳥ってゆりかもめのことだから色じゃない?『名にし負わば いざこと問わん みやこどり』」
ここまで言うと「業平よね」。なんだか雅なこと。

金魚葉椿。葉を主役にして挿されていました。

月見亭から。珍しい富士山。

こんな元気な椿も。
「30句は作ります!」とメールが届きました。ガンバレ💗

小ボケの人の運転をやめさせる

2020年03月15日 | 二段階方式って?
二段階方式を導入している町の保健師さんから質問が来ました。
「近隣の町で高齢者(85歳)が加害者の死亡事故が発生しました。
わが町でも、二段階方式で、MMS合格しても、かなひろい不合格(ほぼ0に近い点数)の方が運転しています。絶対事故を起こすと確信しますが、免許返納を説得できず(しても聞き入れない)にいます。
ご助言をいただければと思います」

(客人のポルシェヴィンテージカ―。ナンバーの354にも意味があるそうです)

私の回答です。
「世の中で使われる認知症テストはすべてMMSと同じと思えばいいのです。MMSが合格しても、たとえ満点でも、前頭葉テスト不合格者がいるということを識者はたぶん誰も知りません。それが『小ボケ』ですよね。
病院勤務時代は、とっても簡単で
『この脳機能では運転したら(させたら)いけません』でおしまい。
理由は簡単で公道で運転するには前頭葉の注意集中や分配力が必須だからです。
能力がなければ、どんなにやりたいといってもやらせてあげることはできません。
脳卒中の後遺症で片麻痺があってまったく立てない人が『今すぐ歩きたい』といっても、『脳に卒中が起きてしまったので、今は無理。リハビリがんばってみましょう』といいますね。
『お勧めはできないんですけども、それだけ歩きたかったら、好きなように歩いてみましょうか(そして転んでも、それはあなたの責任ですけど)』とは絶対に言いません。それと同じです。
皮ベルトで留めてある!

病院でない時はどうするか?
血圧や血液検査の異常値で考えてください。
血糖値、肝臓や腎臓その他の異常値に対してどのような生活指導をしますか?
まあ、まず受診でしょうけど、受診勧奨にしろ生活改善指導にしろ、その時のこちらの気分はどうでしょうか。
数値が悪いほど、真剣に『それ以外にはない!』しかも『できるだけ早く!』と指導しませんか。
『食べ過ぎ・飲みすぎ・運動不足・栄養バランス・ストレス・休養』などなど、よりよい生活になるように、やるべきまたはやってはいけない指導をしますよね。
マフラーがラッパみたいでした。

かなひろいテストの数値は、前頭葉の注意集中・分配力を表しています。
そこに問題があるとき、(前述のように運転などはまさにこの能力を使っています)
『この状態ではできないこと』『より悪化を防ぐためにしてはいけないこと』『改善のためにすべきこと』を指導するのは当然のことです。
血圧や血液検査の結果を使って生活改善指導をするのと同じ情熱でやりましょう。
それらの結果には信頼性があって、かなひろいテスト結果には信頼性がないので強く指導できないというのなら、脳機能検査をする必要性はないということになってしまいます。

付け加えると、結局は、どのくらいの誠意となおかつ熱意をもって指導したかに尽きると思います。
血液検査の結果を踏まえて、生活改善指導をしても改善につながらない人はいます。手を変え品を変えても、家族を巻き込もうとしても変化が起きないときには、私たちは諦めるのではないでしょうか?
それに匹敵するだけの過程をくぐって、なお、運転をやめないときには・・・
あきらめるしかありません。
私は、一回限りの生活指導をすることがよくありますが、この方の残りの人生をよりよく過ごしていただけるように、誠意を込めてお話しします。
だめなら・・・仕方がないとあきらめるのです。
検査結果に確信をもって説明すれば、ほとんどのケースは理解してくれるのですよ。
特に小ボケの方たちは、自覚があるだけにやりがいがあります。
ツーシーターですから夫だけ。

去年の池袋の事件も、まさに小ボケレベルの脳機能を疑いますよね。膝関節の問題ではなくて。
ブログに書きましたので時間のある時読んでみてください。
(続)の「法に定められた『運転免許取り消し方法』」こちらは必ず一度は読んでおいてください。
長くなりました。
実務研修会は10/7~8を予定しています。
では、お元気でね!」

お返事が来ました。
「かなひろいテストの威力、二段階の威力はすごいです。
自信をもって生活指導できてますので。
今回の先生のご助言で『間違いない』と自信がつきました。
ありがとうございました。」
がんばってください!
 

東日本大震災 高齢者を認知症から守る

2020年03月11日 | エイジングライフ研究所から

今日でもう9年が過ぎたのですね…この日には2011年3月20日に書いたブログを再掲することにしています。


私は、3月10日から、岩手県に行っていました。11日の地震発生時には、岩手県藤沢町(一関市と宮城県気仙沼市の中間)で講演をしていました。震度7と後から聞きましたが、地盤のせいか建物のせいかしゃがみこむこともなく、実際、壁にかかっている表彰額も一枚も落ちることはありませんでした。
こんな大災害とも思わず、ただ交通遮断になりましたから、そのまま一関市の小野寺保健師さんのお宅で生活をさせていただきました。ラジオの情報は聞いていたのですが、16日夜になって初めてテレビを見て、その惨状に声もなく涙が流れるばかりでした。(その後、奥州市の知人の暖かいお心づかいで、18日に花巻空港から帰宅することができました)

この避難生活に関しても報告したいことや感謝したいことは山のようにありますが、今日は、エイジングライフ研究所の原点に立ち返って認知症の発症やその予防について話したいと思います。

認知症の発症という観点からみると、今避難所にいる高齢者の方だけでなく、ご自宅にいらっしゃる方でも、大変危ない状況だと考えざるをえません。

 エイジングライフ研究所は、脳機能という物差しを持って認知症を見ていきます。
通常は、症状(どんなことを言うか。どんなことをするか)から認知症を考えるのです。セルフケアに支障を起こす、徘徊、夜中に騒ぐ、粗暴行為、異食など余程困ったことをしでかさないと認知症と思われていません。
普通の高齢者が、昨日までまったく正常で、ある日突然このような状態になるでしょうか?認知症は徐々に進行するものなのです。

まずは脳の機能を説明しましょう。
右脳、左脳については皆さんもよくわかっていらっしゃるでしょう。
簡単に言うと左脳は「言えばわかる」脳です。
右脳は「言葉ではうまく言えないけど、でもわかっている」時活動しています。
昔の人は「よく遊び、よく学べ」と言いましたが、遊ぶ時に効率よく働くのが右脳。学ぶ時に効率がいいのが左脳といってもいいでしょう。

わかりにくいのが前頭葉のはたらきです。
脳全体の司令塔の役割を担っています。前頭葉がその状況判断で右脳、左脳を上手にその人らしく使いながら生きていくのです。
「よく遊び、よく学べ」が右脳、左脳の説明なら、「十人十色」が前頭葉の説明に相当します。

生きていくということは、自分らしく三頭建馬車を動かし続けるということです。
その時、それぞれの馬の元気さも大切ですが、その馬を上手に使いこなすことができる御者(前頭葉)の働きがなくては、馬車は上手に走ることができません。

前頭葉機能は広範囲にわたりますが、その中の注意集中分配力は、18歳でピークを迎え20歳代はそれを維持し、その後は加齢とともに直線的に低下していきます。年齢とともに能力低下を起こしても、それは必然であって認知症ではありません。

老化が加速していくときに、認知症への道に入ったということなのです。
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老化が加速されていくときには、まず前頭葉の老化が加速され、その後脳の後半領域の機能低下も順々に起きてきます。
そのレベルによって、認知症は三段階にわけることができます。回復が極めて困難な大ボケに至るまでには、最初のきっかけから6年以上もかかります。

  小ボケ:「指示待ち人」
家庭生活は問題ないが社会生活がこなせない。世話役ができない。趣味をやめてしまう。無表情。

  中ボケ:「言い訳のうまい幼稚園児」家庭生活に支障が出てくる。話していることを聞けば、変わりないが、やることは幼稚園児のようになる。
      
  大ボケ:「脳の寝たきり」
セルフケアにも問題が出てくる。通常はここからをボケと思っている。
「」内は家族による、生活状態の一言表現。

 以下、きっかけの説明はその2へ


東日本大震災 高齢者を認知症から守る(きっかけ)

2020年03月11日 | エイジングライフ研究所から

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上のグラフの星マーク「人生の大きな出来ごと。生活の大きな変化」の説明です。
重要なことは、そのことが起きたらだれでも老化が加速するのではないということです。そのことが起きて、その変化に適応できず、閉じこもったり何もしなくなったりしたら、いいかえるとそのことをきっかけにして三頭建の馬車が止まってしまったら老化が加速していくということなのです。その状況変化が御者の意欲をなくし、指令を出すことをやめてしまうときが認知症への第一歩なのです。
 
仕事一筋の人の定年退職。
息子に代を譲ったおじいさん。

嫁が来て、しゃもじを渡したおばあさん。

孫が手離れた祖父母。などなど

繰り返しますが、「そのことが起きたら」ではありません。
「その後の生活が新しく描けなくて何もしない状態になったら」前頭葉は出番を失って老化を加速していくのです。
 
 「高齢者が、病気やケガで安静にしていたら、ボケてしまう」ということは世間の常識です。

「20代の若者が長期安静にしたらボケるでしょうか?」
講演でこの質問をすると皆さんは笑って
「そんなことはない」と言われます。
このことは皆さんが脳の老化曲線を承知しているということではないでしょうか。
入院した高齢者が全部ボケるわけではありません。
ボケる人は、安静にして 何もしない!
ボケない人は、リハビリに励んだり、回復するにつれて人の世話をしたり、手芸などの趣味を楽しんだりしています。
このきっかけの説明をよく理解していただきたいと思います。
左下から反時計回りです。
左下。
脳は「使ってナンボ」という正直者です。
三世代同居をしていても、孫は勉強、塾と忙しく、子どもは仕事に追われている。その結果、起きる時間も別なら食事も別。当然会話もない。一人でテレビで時間を過ごすしかない。
このような生活は、脳から見れば「ひとり暮らし」以外の何物でもありません。
楽しみや刺激の少ない生活は、前頭葉の力を発揮する場がありませんから老化を早めます。
右下。
家庭内に種々のトラブルが発生し、「何もしてやれない」とか「この先どうなることか」とか「世間さまに顔向けできない」などという状況になった時、
「お手上げ」と前頭葉が判断してしまうと、頭の中はそのことで覆われて、将来の展望も楽しみも何もキャッチすることができなくなります。
子どもの離婚騒動、サラ金、リストラ。孫の病気、非行、不登校などの心配事が相当しますが、今回の大惨事こそこの状態の最たるものといえるのではないでしょうか。
最後に右上。
「別れ」を意味しています。
これは親しい人との死別を筆頭に、友人や孫との生き別れもあります。ペットとの別れもありますし、趣味のサークルに参加できなくなるというような別れもあります。
身体の不調も「別れ」と位置付けてもいいかもしれません。
環境の急激な変化そのものも、前の環境を失ったと考えればやはり「別れ」でしょう。

「あの人がいれば、あれもできるし、これもしたい。でもあの人がいないから・・・」
「元気なら、もっと見えれば、もっと聞こえたら、何でもできるけど、思ったようにできないから、あれもできない。これもできない」
「この環境でなければ、できることがあるのに」
そう思ってしまうことは私たちには十分に理解できます。
でも、この先には
「あれもしたくない。これもしたくない」という意欲低下が待っています。

意欲は前頭葉の働きですが、前頭葉がその力を発揮する必要条件とでもいえるもので、意欲なくしては、司令塔としての前頭葉機能(状況の判断、決断、指令)は発揮できません。そうすると三頭建の馬車も止まってしまうのです。

その別れを乗り超えられずに、閉じ込もり、目標も楽しみも何も見つからない生活が続く時、馬車は留まったまま、御者も馬も動くことなく時間だけが流れていく・・・脳は老化をどんどん加速していきます。
最も危ない状況です。
今、テレビの画面で拝見する高齢者の皆さんの胸中を思う時、まさにこの喪失感のただなかにいらっしゃるだろうと思うのです。
最初は、状況の理解そのものもあまりにも受け入れ難く、現実のものとしてとらえられなかった可能性すらあります。
でも、落ち着いてくれば来るほど、そして高齢であればなおさら、事の重大さや失ったものの大きさに打ちひしがれてしまうでしょう。将来に対する展望が描けないことを責める気持ちはありません。多分私だって・・・

でも。とあえて言わせていただきます。
こんなに過酷な運命に翻弄されたのに、その先にまたボケという悲しい状況を迎えさせるわけにはいきません。
どうにか、それぞれの皆さんの馬車が再び動き始めることができるように、心を配っていかなければいけないと思うのです。

どのようにして、馬車を動かすことができるのか?その3としてまとめます。

東日本大震災 高齢者を認知症から守る(脳のリハビリ)

2020年03月11日 | エイジングライフ研究所から

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私たちの三頭建の馬車の仕組みは 仕事勉強の左脳、身体を動かす運動脳、そして趣味や遊びの右脳の三種類の仕事に特化された馬たちと、それを上手に操る御者役の前頭葉から成り立っています。

 いつの時でも、三頭の馬が働いて馬車が動いている時には前頭葉は全体を見守っています。
それ以前に、動き始める時もまず前頭葉が状況を判断して一鞭をふるうところから始まるのです。
 このことはとても大切なことですから、よく覚えておいてください。

「馬車が動き始める時と動いている時には、御者は必ず働いている」
「何かをやろうと思う時と、やり始める時と、やっている時には前頭葉は必ず動いている」と言い換えられます。

 脳の老化が加速されるのは、前頭葉が出番をなくして、何もしなくなるところから始まります。まず置かれている状況を判断しなくなる。意欲がなくなる。周りに関心が持てなくなる。
前頭葉がその状態になると、馬車を動かす三頭の馬たちはいくら元気であってもその力を発揮できない状態(小ボケ)が続き、次第に三頭の馬自体も力を落としていきます(中ボケ)。
最終段階が御者も馬も倒れてしまった状態(大ボケ)と考えるとわかりやすいかと思います。

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エイジングライフ研究所は、脳の老化が早まった場合には「脳のリハビリ」ということで、脳の元気を取り戻す指導をします。その柱は二つあります。
 ①一日一時間の散歩を。
 ②右脳を使って楽しむ時間を。

散歩
「ボケ予防のために歩いています」という方は多いですが、理由として
「歩いたら、歩く刺激が脳に行くでしょ?」と思っていることがほとんどのようです。もちろん外に出て歩けば、自然に触れ、景色や花を楽しみ、風や日差しを感じたりして五感を通じてその刺激が脳に入ることは間違いありません。
でもこれは本末転倒の考えです。

「歩く」時には、脳の運動領域が身体に対して命令を出し続けなくては歩けないのです。脳卒中で脳の運動領域に損傷を受けた人は歩けません。
一時間歩いていると脳の運動領域は一時間働いています。もちろん前頭葉もです!自覚がなくても歩くことは、間違いなく広範囲の運動領域が働くことですから、皆さんが考えるよりも脳を使うという効果がありますが。

「歩く」時には、運動領域の多くの部分が活性化されます。でも足腰に痛みのある方は、椅子に座って上半身だけの運動でもいいのです。

 効果的なのは「体を動かすことで、脳を動かすことになる。そうすればボケない」という自覚です。自覚を持てば持つほど御者はその行程を大切に思って、意識的に状況の変化をキャッチしようとするとは思いませんか?
誰かに言われた結果であっても、体を動かしている時には脳が働いているのです。でも、自分で、というのは御者である前頭葉が目的をはっきり持って、「こんな時だからこそ、体のためだけではなくて、脳を動かしてボケないようにしよう」と考えると、自分の体調や周りの様子にも気を配りながら運動を始め、そして続けることになりますね。その時前頭葉が目覚めています。

 そこまで考えられないのが現状でしょう。だれかが音頭をとって、避難所の高齢の方たちの運動を促す時間が実現できたらいいのです。そうしておくと、習慣化することにもつながりますし、自宅に帰られても、あるいは仮設住宅に移られても、ボケ予防としての運動の大切さを訴えやすくなります。

右脳
Migi 

その1で説明したように、右脳でよく遊び、左脳でよく学ぶのです。
仕事や勉強は「やらねばならない」もので、趣味や遊びは「楽しくてもっとやりたい」ものですね。
形、色、音楽など右脳を使う場面からは、もっとやりたいというレベルの意欲がわいてきます。
元気をなくしている脳にとっては、右脳刺激の方が適切な理由です。

避難所のテレビ報道で、中学生の合唱に涙する方々を見ました。こういう時だからこそ、より強く胸に訴えてくるのでしょう・・・

そういうことはできても、上表にあげたような一般的な右脳刺激は皆さんのお気持ちを思うととても無理だとわかっています。

でも、どんな厳しい状況の時だって右脳は使えます。それは感情を行き来させるという状況を作ることです。人とのコミュニケーションを図る時、私たちはまず「言葉を使って」と思います。でも言葉だけでは人とのコミュニケーションは成立しません。
自販機の「ありがとうございました」はコミュニケーションでしょうか?
言葉の内容以上に、相手の表情、身振り、声の調子、高低、強弱・・・
そのような情報をもとに私たちはより深く相手の心情を知ることができますし、自分の気持ちも伝えることができます。
言葉以外のすべての情報は、右脳と前頭葉の連係プレイの下でやり取りされます。この時間は、脳の機能としては高次元で、とても脳はイキイキと活動しています。

言葉を発することなく、手を握り合っても、抱き合ってもわかりあえるのが私たちです。テレビ報道で、涙で言葉にならない方を見ながら私たちも涙を流しました。ともすればあふれそうになる涙をこらえながら言葉少なに語る人にも、涙しました。言葉の奥に隠されたその方の心情を私たちは感じることができます。

悲しい時間ですが、私たちの馬車はそんな時しっかりと進んでいるのですよ。

一人でポツンと過ごすことのできない避難所だからこそ、悲しみを訴え、気持ちを労りあい、共に涙を流していいと思います。
そして次の段階が来た時には、皆で声を掛け合い、必ず前を見て自分の馬車を自分らしく動かそうと思っていただきたいと思います。
今後、高齢者が住むことになる仮設住宅や施設も用意されていくことでしょうが、人は体があって生きていればいいというものではありません。その人らしく生き抜いていっていただくためには、その人の覚悟が要ります。
本当に前を向くことが難しい状況だと承知の上で、ボケないためになお前を見て生きていっていただきたいと切に願います。

亡くなられた方々のご冥福を祈りながら、残された方々に笑顔が浮かぶ日が来ることを信じて、今回のブログは書かせていただきました。


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