脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

MMSだと中ボケなのに・・・側頭葉性健忘

2008年10月10日 | 側頭葉性健忘症

昨日、面白い相談がありました。
N市のY本保健師さんから、「判定困難」というFAXでした。72歳の女性で検査結果は

    MMS18点(時の見当識=3.粗点22点)
    かなひろいテスト判定値37(30,4,可)
    30項目は1・2・9・10
    生活歴聴取は、ターニングポイント4~5年前とすれば一応あり

質問は

    ①MMSは中ボケなのに、なぜかなひろいテストがここまでできるか
    ②正常レベル対象の認知症予防教室に来て支障はないか
京料理(吹き寄せ)P1000001

最初に結論を説明しておきましょう。

このように、かなひろいテストが見事に正常域でありながら、MMSが不合格になる場合、まず考えることは「側頭葉性健忘」です。マニュアルC110Pを参照してください。

京料理(刺身)P1000002

マニュアルCの該当箇所に目を通してもらってから電話をしてもらいました。

その時点で、Y本さんと私の間には、被検査者の方に対する共通理解が生まれていました。
ここが二段階方式のすごいところです。
検査結果を解釈できるようになると、目の前にその人が居るような気がしてきます。
京料理P1000003 (焼きナスにとろろとジュレとトンブリ掛け)

「このケースの場合は、まず表情がある。動作がきびきびしている。おしゃれ。話によどみがなく、感情も豊かで気持ちがよく伝わる」とここまでは、私の解釈はパーフェクト。

電話の向こうで、Y本保健師さんが「そうなんです」を繰り返してくれます。

京料理P1000004 (焼き物)

「覚えられないとか忘れて困るとか心から訴えなかったですか」
これははずれました。
側頭葉性健忘の人は、ほんとに心底困った感じで、上記のことを訴えることがほとんどなのです。

いわない方も居るんですね、文字通り十人十色ということでしょう。
京料理(しんじょ)P1000006

「とにかく、この人がボケてるなんてとても信じられない!ということでしょ。どうしてMMSがこんなにも点が低いのか、狐につままれたみたいよね」

Y本保健師さんが力を込めて「そうなんです。どうしてもボケてるように思えなかったんですが」
京料理(デザート)P1000009

それが側頭葉性健忘なのです。
普通のボケは、まず前頭葉機能の低下から始まります。
それから、MMSで測る脳の後半領域にも機能低下が起きてきます。その時最初に低下するのが記憶力。
前頭葉機能に着目しないと、最初に低下する機能は記憶力ということになってしまいます。
だから「物忘れはボケの始まり」といわれるのです。

このケースのA4版用紙 見事ですね!Img_2

普通にボケている人は、前頭葉機能がすでに低下してしまっていますから、表情もないし、動作もモタモタしてるし、話の焦点は合わないし、創意工夫もありません。

そもそも、前頭葉機能が正常なボケってないんですよ。

付録:質問②の回答は「参加できます。ただしお世話役の方にでも事情をよく説明してあげる必要はあります」といいかけたら
「丁度いい方が居るんです。同じ側頭葉性健忘の方。しっかりされてますから」
今度は私がびっくりする番でした。
「もしかしてN沢さんのケース?そうだとしたら。もう3年も前の方でしょ。よくもっていらっしゃるわね。N沢さんが側頭葉性健忘に気づいてあげて、生活指導したから今があるのよ」
「N沢さんによろしく」といいながら、あの時のN沢さんとのやり取りを思い出して、二段階方式を継続することの意義をしっかり感じた私でした。

 


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