acc-j茨城 山岳会日記

acc-j茨城
山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

足尾・庚申川笹ミキ沢

2022年05月26日 09時35分54秒 | 山行速報(沢)

2022/5/15 足尾・庚申川笹ミキ沢

 

  * * * * * * * *

山を旅するボクの荷物はいつもリュックサックひとつ。
なんとなく使い続ける靴と着古した服を身にまとい、あちこちの山を旅してまわります。
木々に囲まれ深い呼吸をすれば心は穏やかになります。

流れの冷たさにはしゃいだり、無心に歩を進めたり。

その先の景色に思いを馳せてワクワクするときもあります。

冬が来ると雪を求めて北へと旅立ちます。
そして春になるとこうして沢に戻ってくるのです。

  * * * * * * * *

前夜、仕事を片付けたら一路、足尾へ。
道の駅で前泊。
時折、通り過ぎるバイクの爆音をもろともせず、眠りに落ちる。
体とメンタルの健康向上にとって睡眠は不可欠。
本能の生存戦略がいつでも私を眠らせる。
気が付けば静寂の朝だ。

朝食をとりながら車を走らせ、庚申山へと続く林道のゲート手前の駐車場へ。
ほどなく到着したisiさん。

その後僅かで、渓さん、たなさん、ポムチムさんが到着。
サイト主さんたちとのコラボ。
渓さんにお声掛けいただき、同行させていただくことになりました。

挨拶しながら身支度を整え出発。
最近の山行エピソードの話をしながら林道を行く。
そうこうしていると笹美木橋。
沢名は「笹見木澤」とあった。

橋の袂から沢床へ。
しばらくはゴーロ。
7ケ月ぶりの沢靴に足元を確かめながら歩く。

ふと前を見ると、ポムチムさんが河原に落ちていたゴミを拾い上げ、ザックにしまう姿が目に映る。
自然な所作。
いつも実践しているから、そういうふうに見えるのだろう。

渓への知識と情熱。そして、慈愛の精神。
見習わねば。

最初の滝場は深い釜の2m。
右岸巻き、水流右、左岸ヘツリ。
思い思いに取り付く。

しんがりを行くsakは、渓さんの選んだ水流右を行く。
左岸ヘツリが体も濡らさず定石かとも思ったが、程高いバランシーなヘツリを嫌ったルート選択。
水流への取付きに足場がないので腰上まで浸かり、飛沫を浴びながらの奮闘的なクライムになったが、
sakは沢初め、まず「沢の精霊」にご挨拶といったところだ。

2段大滝は右岸を巻き、落ち口に縦縞の岩模様がオモシロい。
いくつかの滝場は難なく越え、直瀑15mは右岸巻き。

沢は開けてしばらくゴーロ帯を行く。
標高1200mを超え左岸に大滝を見ると、再び滝場が現れる。

たなさんは絶妙なバランスで難場を越えていく。
探求心と自然を慈しむ感受性、滝を越えた時の笑顔(たまに変顔?)で周りを和ませてくれる姿。
そのコントラストが印象的だ。

ナメ滝6mは釜を泳ぐも良し、回り込んでも良し。水流左を行く。
取付きは腰まで。最初のハイステップが滑りやすいので要注意。


トイ状多段8m。
躊躇いなく渓さんが取り付く。
釜を右から回り込んで、滝を浴びながら左へトラバース。
激シャワーだ。

渓さん、漢だ。
漢気が溢れ過ぎるよ。

それをみて、「あららら、、、」と笑いながら盛り上がる、ポムチムさんとたなさん。
もちろん、信頼で紡がれた仲あってのことだ。

「いいチームだ」
三人合わせても、我々二人の年齢に満たない萌える息吹はどこから見ても眩しすぎた。


さて、sakとisiさんの我がチーム。
もちろん、チーム仲あってこそのアイコンタクトで右岸巻きとした。

いくつかの滝を越えると沢は開け、渓相は平凡となるが笹原と木立が美しい林となる。


  * * * * * * * *


羽化後のハルゼミに夏を予感。
ハルゼミは身体を乾燥させて、夜明けとともに旅立つのです。

左岸に湧き水を見つけました。
溢れる湧水はいつだって冷たくて、美味。

今しか存在しない場面があちこちに散らばっていて、それを拾い集める喜び。
そうして山を旅するボクらのリュックサックに、発見と喜びが溢れます。
沢には生命と季節の源があるような気がしてなりません。
だから、ボクは沢に戻ってくるのです。


  * * * * * * * *


生命と季節の実感。
湧き出る泉。
笹原の丘に美しい木々を見る。

ルーツは源にあり。
新緑が、そして萌える息吹がひときわ眩しかった。


◆THANKS!◆ (ご一緒させていただきました!)

・谷川渓さん  >>「けいちゃんねる!」へ  
・たなさん   >>「源流徘徊たなか」へ    
・ポムチムさん >>「ポムチムダイアリー」へ 

 


sak


↓庚申川・笹ミキ沢の様子を動画で!「山岳劇場」


↓谷川渓さんの「けいちゃんねる! 庚申川笹ミキ沢下山ライブ」

 


後立山連峰・五竜岳

2022年05月25日 00時17分08秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2022/5/2~4 後立山連峰・五竜岳


「快挙」と言ってもいいのではないだろうか。
それは山頂のことでなく、困難なルートのことでもなく、日常での出来事。
このゴールデンな日々に3連休。
平日休を生業とする身としては、本心では社会をドロップアウトするくらいの覚悟だが、
そんな様子は一切見せずに「休みますが、何か?」と努めて冷静を装った結果だ。

案の定、幾許かのチクリと来る一言は頂戴したが、
かの”一休さん”のように「気にしない気にしない、一休み一休み(三連休三連休)」。
と唱えるのだった、が。。。


【登山あるある①】

山行計画時は強気でイケイケだったにもかかわらず、直前に少しだけいろんなことが不安になったりもする。

...「あるある」は続く


2022/5/2

五竜テレキャビン・とおみ駅の駐車場でisiさんと合流。
始発は8:15なので、のんびり準備。
今日は西遠見あたりまでの行程。
ゴンドラとリフトを乗り継いで、あっという間に標高は1640m。

滑走屋に交じって山屋は数名。
みなここで準備をして、やおら登り始める。

雲はあるものの、概ね晴れ。
昨日5cmくらいの積雪があったようだが、歩行に困難はないのでツボ足で。
最初の急登で体温は上昇しヤッケは脱ぐ。
時に夏道を歩く。

非常に距離の長いイメージのあった遠見尾根だが、淡々と脳内BGMをリフレインして進めば意外と距離は感じない。

【登山あるある②】

淡々と歩いていると、いずこからか脳内にBGMが降り注ぎリフレインする。
それは名曲よりもCMなどの覚えやすいメロディーラインであることが多く、まんまと企業戦略にハマっている自分を時に呪う。

(今日の脳内BGM:「釣り具のキャス〇ィング」のテーマ

...「あるある」は続く

西遠見に着くころ、次第に雪が舞う。
五竜や鹿島槍、唐松もガスに巻かれて、稜線は暴風の予感。
展望よりも「耐風」を考慮した場所にブロックを積み上げ、幕を張る。
あとは、水を作りながらの入山祝い。(祝杯)

さて、懸念は明日のルートだ。
計画ではGⅡとG0を2泊3日で予定していたが、直前にフェイスブックのACMLで少雪の情報。
GⅡのABCルンゼの雪は繋がっていないとのこと。
藪ルンゼ登攀が予想され、加えて今日の降雪。
すでに雪は本降りで10cmほど積もっているだろうか。

「藪のスカ雪登攀かぁ」
加えて取付きまでの雪崩も気になるところ。
いずれにしろ、明日朝(4時)の天気で判断することにした。

早めの飯を平らげたら、やることもないので昨夜の寝不足を解消するべく寝袋に潜る。
幸い、頭上を轟々と唸る強風にもテントを揺らされることはなかった。


2022/5/3

4時に起床。
雪はまだ降り続いている。

棒ラーメンの朝食をとりながら、天気予報を確認。
どうやら降雪は朝まで続き、強風は昼まで残るらしい。
今日のGⅡは諦め、一般道で五竜岳へ昼頃到着の予定とし、7時まで二度寝。

再度目覚めると、風は強いものの概ね青空が覗いている。
身支度を整え、歩き出す。
昨日から30㎝ほどの積雪があったようだが、すでにトレースがある。
よく見れば、白岳の上部に単独行者。

白岳の登りの前にアイゼンを装着。有難くトレースを追う。
またも、脳内BGMはあの曲だった。

白岳を踏んで、五竜山荘。
昨夜ここで幕営したパーティーが待機しており、軽くあいさつを交わす。

流石に稜線は風が強く、休憩も体温を下げるだけなのでそのままゆっくりと歩を進める。
夏道の鎖場あたりで単独行者に追いつく。
トレースの御礼とともに、先行を申し出る。

このあたりは、岩雪ミックスでちょっと悪い。
雪に埋もれた岩をまさぐりながら急場を登る。
雪が安定してきたところで、雪面に手を突き刺してホールドを得ていたら雪中に岩が隠れていて右手中指を痛打してしまった。
その後は悪場もなく雪稜を進む。

「あそこが山頂か?」と思っていた頂の向こうにさらなる高みが見えたりして、さながら「登山あるある」だ。


【登山あるある③】

目前に見える頂は、大抵「山頂の手前」。
それは山頂を踏むために試されているかのよう。まさに試練である。

...「あるある」は続く


山頂。
ほぼ予定通りの11:57。
いつしか風は弱まり、展望も開ける。
それにしても初めての頂というのは、やはりいいものだ。

往路を戻る途中、G0の確認。
やはり、藪パインは必至。
五竜山荘を風よけにして休憩。

モチベーションというのは何事においても事の成否を左右する。
山頂を後に、満足感を得てしまったのもあったのだと思う。
状態の良くないバリエーションに取り組む意欲がみるみる下がっていったのは、自分でもわかった。
それは音を立てて急降下していくかのようだった。

【登山あるある④】

「早く下山したい病」
下界には様々な欲望を満たす誘惑と仕事の不安を払拭できる安心感がある。
私はそれに屈したのだ、そう思う。

...「あるある」は続く

幕場に戻ったのは、14時半。
ここまでの道中で、G0を諦め登山日程の終了を決めていた。
ゴンドラの最終は16時半。急げばなんとかなるか・・・。

その様子を見かねてか、isiさんは「今日はここで一杯やれたら最高ですよね」と私を諫めた。
何故に事を急いていたのか、憑き物が落ちた思いだった。

西遠見の平坦地には本日入山のテントがいくつも張られていた。
皆、幕場の整地作業と宴の準備で大わらわ。
楽しげな会話がそこここから聞こえる。
昨夜の雪で湿っていた我がテントもすでに乾燥し快適な一夜を過ごせるだろう。

今「なぜ山に~」と問われたら、語る言葉が見つからない。


【登山あるある⑤】~今宵は”登山あるある”がいっぱい~

・山屋は「なぜ山に」と問われた時のことを考え準備している
 ⇒いつ誰に聞かれてもいいように。少しカッコイイ事言いたくなるよね。

・パートナーとの道具談議で物欲にスイッチが入る
 ⇒isiさんと道具談議。いつも物欲に駆られます。間違いなくアレはポチるわ。

・テント内で足が攣る
 ⇒疲労もあってか手狭なテント内で体育座りしてると、足攣りはよく起きます。
  「漢方68番」が特効薬。

・携帯の電池残量を気にしすぎて、山アプリ(GPSログ)のリスタートを入れ忘れる
 ⇒帰幕後に気づいたりして、徒労感に苛まれる。

・「昨夜は熟睡してましたね・・・」といわれて自覚がない
 ⇒昨夜は「うつらうつら」して、あんまり寝た気がしないな、と思っていたのですが。


...「あるある」はまだ続く

 

2022/5/4

好天。
昨日入山のパーティーはすでに五竜に向けて出立。
静かなテント村。
G0を取りやめた我々は下山するのみだ。

備忘録のため、取付きへの下降路確認にしばし出かける。
あれがABCルンゼ、あれがG0。
Bルンゼ取付きに1パーティ-。

それを眺めて二人、しばらく立ち尽くした。
トライしなかった理由はいくつかあった。
冷静なる判断と言えば聞こえはいいが、言葉にすれば安っぽさだけが残った。

沈黙で呼応するパートナー。
その気遣いが沁みる。

今、私にできるのはGⅡ取付の彼らにエールを送ることだけだった。

 


幕場を後に遠見尾根をゴンドラ・アルプス平駅へと向かう。
滑走屋でにぎわうゲレンデを歩く。
「鯉のぼり」を掲げて滑走する姿もある。
皆、心から楽しんでいた。


【登山あるある⑥】

帰りのザックは、なぜか少し重く感じる。
食料を消費した分、軽いはずなんだけどなぁ。
 ※個人的なその時の心持ちと思い込みです


「登山あるある」はあなたの傍にも。
それは「登山でよくあること」かもしれませんが、その場・その時の想いは唯一無二のものとなるでしょう。

 

追伸

【sakの”山行記あるある”】

1.山行への想いが強すぎて、前置きが長くなってしまう(笑)
2.未来志向の教訓や格言が大好きなので、「ポジティブ説教」が色濃い(汗)
3.執筆中は脳内BGMがここでもリフレインする


sak


↓五竜岳の様子を動画で

 

 

 

 

 


越後・池ノ塔~郡界尾根~越後駒ケ岳

2022年05月12日 22時50分25秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2022/4/28 池ノ塔~郡界尾根~越後駒ケ岳

 

普段は手の出ない奥深い山巓でも残雪を利すれば、山旅の自由度は広がる。
これぞ春山の醍醐味といってもいい。

地形図を眺めれば創造の山並みが手招きをする。
マイナーな場所ほど行ってみたくなるのは、もはや病か。
否、そこは探求心だと言っておこう。

点と点を繋げばそれはもう、私にとっては壮大な計画
いつかきっとの想いに栞を挟み、生業に縛られながらも等高線の連なりに思いを馳せるのだ。

池ノ塔は越後駒ケ岳から北西に連なる郡界尾根の中ほどに位置する尖塔。
佐梨川雪山沢を詰めた頂がそれである。
アオリとの間には、地元称「ブラック台地」といわれる平坦地がポッカリと開ける。
ここで一泊も楽しそうだと大湯から駒の湯、池ノ塔尾根を辿っての計画を立ててみたものの、初日は生憎の雨で彼の地での夜はお預け。
しからばと水無川側から残雪に埋まるセンノ沢を遡り、池ノ塔~越後駒ケ岳を日帰りで目指す。

荒山集落の先を歩き始めたのは夜明け前。
雪の残る水無川添いの道をしばらく歩く。
途中、森林公園を見送り小規模なデブリを越える。
前方にカグラ滝が轟音をたてながら落ちるのを望むとセンノ沢はもうすぐだ。

センノ沢は出合でこそ雪は割れているが、下部は概ね雪に埋まっていた。
中流で右岸側に白沫の流れを見る。
本流は谷を埋める雪渓と考えてそれを詰めるが、どうやらこちらは池ノ塔へ直接詰めあがることに途中で気付く。

これからの針路補正は相当の労力を費やさねばならぬという思いから、そのまま雪を繋いで標高1200m。
ここからは池ノ塔まで藪を漕ぐ。

久しぶりのヤブコギに少しばかり興奮しながらの登行。
とはいっても、石楠花などのヤブコギ天敵が現れ始めるとウンザリしてくる。
そして、池ノ塔西峰。
真っ白なブラック台地を見下ろして次こそはと、彼の地での一夜を想う。

西峰から池ノ塔本峰まではわずかに踏まれているようで藪は濃くない。
次の無名ピークまでは何とか歩けるが、そこから先の郡界尾根は屈強な藪と闘うことになる。
時に空中戦を強いられながらも、左には佐梨川に切れ落ちる断崖が待っている。
これは、自分との闘いといえよう。

それでも郡界尾根と越後駒に挟まれた雪のオツルミズの景観に癒され、
断崖の基に昨年歩いた鉱山道の姿を見ると感慨深いものがある。

最低鞍部の少し手前でいよいよ藪は頑強となり、もはやどうしたらいいのか途方に暮れるレベル。
このままでは今日の下山もままならなくなるので、オツルミズへと下降する。
雪渓は概ね安定しており、踏み抜きもないが越後駒側からの雪崩を警戒し常に郡界尾根寄りを歩く。

途中、雪崩の危険のない緩やかな斜面から流れる支沢で水補給。
担いだ水分はすでに底をついていたので、これは生き返った。

フキギを過ぎると越後駒へと突き上げる雄大な谷を右に見送る
この先、雪が途切れて流れが顔を出す。
右岸を少々ヤブコギしてこれをやり過ごすとオツルミズ源頭。

 

雨流線が谷を求めて、雪面に艶めかしい曲線を描く。


雲は流れ、世界中に羽ばたいていく。


空と白銀の狭間に、陽は小さな陰を落とす。

そして歩く。
この星の片隅を歩く。

下山はグシガハナ経由の極楽尾根。
急下降に加えて雪と夏道のミックス。
登山道とはいえ、気は抜けない。

十二平に着く頃、闇に捕まる。
闇に包まれた大デブリ帯はまるで迷路。
突然進路が激流に削られ、断崖となっていたりする。
落ちれば、雪融水に流され10分とは保たないだろう。
ここは慎重に。
白息の向こうに、星が瞬いていた。

果たせなかった場所での一夜を想う。
傍らに花陽浴の吟醸。
そうしてまた等高線の連なりに思いを馳せるのだ。


sak

 

 

↓ 山行の様子を動画で