acc-j茨城 山岳会日記

acc-j茨城
山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

八ヶ岳西面・横岳石尊稜

2004年03月16日 15時15分58秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2004/3中旬 八ヶ岳西面・横岳石尊稜

チムニ-

雪はサラサラと頭上を霞め飛ぶ 
新鮮な光はここまで届かない 
薄ボンヤリとなんとなく明るくなっているような天候だ

三叉峰ルンゼを少し登ると取り付きのチムニ-が右上している 
アイゼンの前歯とバイルを利かせていく

昨日の好天に比べるとこんな日に登攀などとはよほどの物好きが、と思う 
思うけれでも、やっぱりねぇ 
なぜだかかえってワクワクするのだからもはやビョ-キの部類なのかと 
例えるなら、水槽で飼われているネオンテトラ、いやグッピ-、いやメダカが 小川から大河へ、また海へと旅立つワクワク加減といったところか 
 

下部岩壁

目に映る世界は実に広かった 
幼少の視点では自分の住む街が全てであり実に広く感じた 
しかし、それはいつの間にか変わってしまった

広いと思っていた道路はもはや落胆するほど狭く 
街ですら今や色褪せ、チッポケな存在へと変わってしまった 
まるで水槽だ

下部岩壁は岩と草付に雪がつく 
ここぞという時に上からチリ雪が落ちてきて目も開けられないのに苦労させられながらも 水槽を抜け出したようで口元にうれしさを隠せなかった

雪稜 

ほんとはきれいな雪稜なのでしょう 
実に見事な 
ただ視界のない今はただの雪尾根になってしまった気がしないでもない 
息を切らしてラッシュするもこのころから風が渦を巻きうねりとなって舞い続けた

見えない枠を感じ始めたのはいつの頃だったか 
まあ、今となってはどうでもいいこと 
もともと山を目指すようになったことだって一種の枠を抜け出したかったからだとも思う 
「小川から大河へ、また海へ・・・」そういう事なのだろう


上部岩壁

山をはじめて世界は変わった 
あれは飛騨山脈山中へ初めて踏み入った時だった

そこは今までとまるでスケ-ルが違った 
正確に言うとモノサシの基準がまったく違っていた 
衝撃であった

上部岩壁は岩を抱えて右に回りこむところが少し緊張する 
とはいえ重心を意識しながら足元を置いていけば問題ない

風はなお強く、高さに比例して風速を増す 
エビノシッポが10cmほどに成長しちょうど一口サイズで口を潤してくれる 

 
今この瞬間 

風雪にヤッケも白くなりつつあり、ビレイをしているとさすがに寒い 
そのはずなんだけど、まぁそれはさておいてなんだか楽しくて仕方がない

ワクワク感にニマニマしながら 「寒いと人間若返るらしいよ」と根拠のないミニ知識を披露してみたり、 「ハラ減ったねぇ」などと判りきったことを訴えてみたくなる 
もちろん仲間が居てこそのジョ-クに他ならない

あの衝撃が、あの感動が、あの覚醒がなければ今のさかぼうはない 
あの悔しさが、あの喜びが、今この瞬間がすべて愛しい 

クライマックス

風雪が極限に感じられた頃、登攀はクライマックスを迎えた 
ようやく念願かなってアンパンを齧る

下山は地蔵尾根。強烈な横風を受けながら縦走路を南へと進む 
もはや暗闇を意識しなければならない時間となっていた

今思えば志向は自然に流れていった 
亀足ながらどうにかこうにかではあったが 
幾重にもガラスに囲まれた水槽から小川くらいまでは来ただろうか 
まだまだ先はある。涙が出るくらい嬉しいことだ  

一歩先の未来 

夜な夜な宴に酔いしれる 
今日は飲みたかった 
またひとつ感動を知ってしまったから

一歩前へ、また一歩前へ 
一歩進んだ自分を想像しながら自分の選んだ未知を行く 
目の前の広いフィ-ルドに、何を求めて、何処を行くのか 
そこにどんな偶然が待っているのか 
未来はそうして決まっていく

一歩先の未来がそこに

sak


八ヶ岳西面・赤岳主稜

2004年03月15日 15時12分51秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2004/3中旬 八ヶ岳西面・赤岳主稜

晴れ男

見上げるとそこには青空が広がっていた 
またもこの好機をヒットした 
なんということか!俺って晴れ男かも 
と、調子に乗るとなんだか後が怖いので今日は今日もでひとまず感謝。 
「全国の晴れ男、晴れ女の皆さん、ありがとう」

さらに見上げると目指す主稜も「ここまでおいで」と言っている 
まあ、まあ。焦りなさんな

まずは今宵の宿を建ててから。そして秘蔵のつまみと「プシュ」っていうやつを天然冷蔵庫に入れてから 
疲れた体に鞭打って、少し重い荷物ぐらい頑張ってしまうわなぁ。 
アット-的に楽しいんだもの。どうしたってうれしいんだもの 

 

取付き

主稜の取り付きはイヤというほど予習してきた 
その甲斐あってかというか、これほど顕著なというか・・・。 
ここはひとまず視界があることに感謝 
1ピッチ目、チョックスト-ン 
ぎこちなくラインを引かせていただく

普段寡黙な、いや寡黙だと思っているさかぼうが饒舌になるには、山と一献あれば充分すぎる 
座を囲み、聞き、笑い、語る 
こんな時間はこの上ないシアワセ 
無心に登攀をしながら今宵の至高に想いを馳せる 
 

しばらくは雪面をガシガシ登る 
上の展望、下の展望、ともに開けて絶好の撮影ポイントだ

ひと仕事こなせばもうすでにビ-ルの旨い頃合い 
あの一口が喉を鳴らして沁みるあたりがなんともいえない 
くわえて、誰も言い出しやしないけど酒の肴はきっと豪華な筈 
少なくともさかぼうはそれを期待しているのですよ

幕場に帰るなり「フフフ」と不敵な笑みを浮かべながらブツを取り出せば一様に「ほほぅ」と唸る 
そんな一幕を期待して後半の登攀にも気合が入るのです


後半は形状を失いつつある尾根から左の尾根へと乗り移る 
おおむねホ-ルドは安定しており快適なピッチである

一緒に山に登るということ 
寝食共にするということ 
訥々と語り合うこと 
ザイルを共にするということ 
それがどうなどと口にすればたちまち陳腐になってしまう

この瞬間、きっと忘れない 
トップはただ寡黙にラインを引いていつの間にか岩陰に隠れる 
綱はまるで生き物のように微妙な動きでたちまち「あと十」となる 
綱の動きは彼の意思 
不思議と彼の姿が見えてくる 
 

肴と綱と喜びと

晴天の下、歓喜の瞬間を迎えた 
さかぼうにとってそれはただの登攀では無くなっていた 
巧く言えないんだけど不思議とそんな気がした 
またしても新しい発見に目からウロコな思いでイッパイだ。 しかしそんな発見がまたうれしい

下山は文三郎を行く 
肴と綱と喜びと 
胸いっぱいに膨らませて


sak