acc-j茨城 山岳会日記

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八ヶ岳・阿弥陀岳北西稜

2006年03月05日 17時22分40秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2006/3月上旬 八ヶ岳・阿弥陀岳北西稜

ラッセル

明け切らない闇に明かりを投げるのはコレで何度目になるだろうか。 
美濃戸口からの林道はいつ来ても、やっぱりいつもと同じダルダルさがある。 
とはいえ、自分はいつまでこの道を辿れるか、はたしてあなたはどうなのか。 
そんなこと考えながら闇の中。 つまりはこの林道歩きみたいなものなのかと思い当たるのだ。

北西稜へは数日前のトレ-スが急な樹林帯の途中まで付けられていた。 
露岩を過ぎ視界が開けるとラッセルも本格的となり、腰ラッセルを稜上まで。 
小ピ-クからリッジを行く。 前日の降雪で心成しかこれから先も雪が多い。 
 

リッジ

1ピッチ:リ-ド 
リッジの右斜面を行く。「あと5」になって、適当な対物が見つからない。 しかたなく斜面をいくらか下って潅木に支点を取った。

2ピッチ:フォロ- 
同じく、リッジ。か細い潅木でランナ-をとって、雪に埋もれた岩のフェ-ストラバ-スがいやらしい。

3ピッチ:リ-ド 
小岩峰は右から巻かず、正面から行く。 どうにか第一岩壁まで伸ばしたかったが、10m手前でロ-プが伸びない。 一杯なのだろうとピッチを切る。

4ピッチ:フォロ- 
リッジの残りを約10m。第一岩峰基部。しっかりした支点と安定したテラス。 
 

見せ場

5ピッチ:リ-ド 
基部からはいったん右にトラバ-ス。あとは草付フェ-スを直上らしいが、雪に埋もれ困難を予感。 ピッケルとバイルで戦闘態勢をとる。 
雪の掃除をしながら登攀。支点は極端に少なく、捜索に困難を極める。 やがてフェ-スから凹角を越え、リッジにたどり着く。 ザイルが残り数m。第二岩壁まで15mほどであったが、リッジにハ-ケンを打ちピッチを切る。 
このピッチで左手のグロ-ブは酷使され穴だらけとなる。「悪い」そんな印象が強く残った。

6ピッチ:フォロ- 
15mほどだが、雪の付いた岩のリッジはやはり掃除に時間を要した。 切れたリッジは風が強ければとても緊張する場面となろう。天候の安定は我々の強い味方であった。

7ピッチ:リ-ド 
第二岩壁の基部から左にトラバ-ス。バンドは雪に埋まっており、壁は一気に谷へと200mほど落ちている。 
雪は締りが悪く、一歩毎にサラサラと足元から奈落へ消えていく。確実にステップを安定させながらカニ歩き。 ここが行者小屋から良く見える見せ場ピッチといえよう。 

 

核心部

8ピッチ:フォロ- 
実質の最終ピッチで、核心部。残置を使ってのA0だが、支点の多くが雪に埋もれている上、 スタンスが外傾。困難さは登攀時間に比例する。

生憎の日陰で震えながらトップを見守る。最後はアブミを使いリッジの向こうに 姿が消え、まもなくビレイ解除。 
フォロ-の気軽さでA0しまくりロ-プ張り張り。最後のガバで 体を引き上げると遠く木曾駒の向こうに夕日が空を真っ赤に染めていた。

賞牌

スッカリ暗くなった頃、阿弥陀岳。あとは美濃戸口までボトボト歩き。

登攀の充実は、それを成し遂げた者のみが与えられる賞牌である。 
何にも代え難いそれは、それを知る者しか語れない。 ならば互いの信頼が報奨といえよう。 
その光栄に感謝をしながら、暗い森をヘッデンで切り裂きながら行けばボトボト歩きも悪く無い。

時は巡り、たとえ道が変わったとしてもこの日は決して変わらない。 
北西稜は記憶に残る一本となった。 

sak