テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

最高の人生の見つけ方

2011-06-19 | ドラマ
(2007/ロブ・ライナー監督・共同製作/ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン、ショーン・ヘイズ、ビヴァリー・トッド、ロブ・モロー、アルフォンソ・フリーマン/97分)


anupamさんがご推薦の「最高の人生の見つけ方」を観る。近所の書店兼業のレンタル店が12日でレンタル中止になるので50円/枚でお借り上げ。ラストで星飛雄馬になると言われてましたが・・・プチ飛雄馬に・・・なりました。エンドクレジットで、ロブ・ライナー作品と分かって納得。
 [Jun 14th twitterで]

*

 「ウォルター少年と、夏の休日」、「潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ」、「アンフィニッシュ・ライフ」などなど、ここ数年でジイ様二人が主役級の映画をよく見る気がする。かつて、「真夜中のカーボーイ」や「明日に向って撃て!」などのアメリカン・ニューシネマで、二人組の男の友情が描かれたが、こんな昔の映画で育った人々が歳をとり、再び男の友情を描こうとしているのではないか、そんなことも考えてしまいますな。
 「最高の人生の見つけ方」は、そんなジイ様映画の中でも、ガンで余命数ヶ月と宣告された二人が主役なのでシリアス度は一番高いんだが、ジャスティン・ザッカムのオリジナル脚本にはウィットに富んだ台詞が溢れ、ロブ・ライナーの演出も快調、ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマンというオスカー俳優二人の名演もあって、全然ジメジメ、うつうつしていない。
 原題は【The Bucket List(=棺桶リスト)】。埋葬される時にどんな棺桶を選ぶか、という話ではなく、棺桶に入る前にやっておきたい事のリストという意味。「死ぬまでにしたい10のこと」という若い女性を主人公にした同じような映画(未見です)があるが、あちらは一人なので結構しんみりするらしいです。

 今作でもそのナレーションが味わい深いモーガン・フリーマンが扮するのは自動車整備士のカーター。歴史学の教授になることが夢だったが、大学に入ってすぐに恋人が妊娠し、休学して職に就いた。復学の希望も虚しく消えるも、三人の子供や大勢の孫に囲まれたファミリーマン。一番の楽しみはTVのクイズ番組を見ること。他人に優しく、妻を愛しているので浮気経験ゼロだ。

 ジャック・ニコルソンが扮するのは一代で数十億ドルを稼ぎ出した、自称:大統領も一目置く男、エドワード。彼曰く、4度の結婚には失敗したが、唯一上手くいったのが仕事との結婚だった。性格はあけすけで無遠慮。言い換えれば、率直で直截的。それは男性に限らず女性に対してもである。

 そんな二人が、エドワードが買収したばかりの病院で同室になる。
 病院のパンフレットの謳い文句が「一室二床」。病院はリゾートホテルではないんだと経営効率をアピールしたわけだが、いざ自分が入院してみれば『なぜ、個室じゃないんだ?』とのたまうエドワード。
 傲慢社長は、先に入院していたカーターに何かと失礼な態度をとるも、呉越同舟、いつしか言葉を交わし合い、カードゲームで時間を埋める間柄となる。

 「棺桶リスト」とは、カーターが大学一年の時の哲学の講義で出された課題を思い出して書いたモノ。
 カーターがリストアップした項目は、“見ず知らずの人に親切にする”、“泣くほど笑う”、“荘厳な風景を見る”、“マスタングの運転”など。同じ夜に余命宣告を受けたエドワードが偶然メモを目にし、更に彼のリストも追加していく。“スカイダイビング”、“世界一の美女にキスをする”、“入れ墨”・・・。
 カーターにとっては残りの人生を悔い無く生きるための例えだったが、エドワードは彼の有り余る財力を使えば、可能なのだと言う。
 『興味もない金勘定に費やす時間は無いし、あんただって家族の同情に囲まれて死を待つなんてつまらないだろ。遅過ぎることはない。二人でやってやろうじゃないか』





 明と暗という対比では「潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ」に似ているが、ジイ様の性格描写はコチラの方がより複雑で、ニュアンスに富んでいる。
 ジャック・ニコルソンって、若い頃は鼻から空気が抜けているような声だったけど、この映画ではそんな鼻声は消えていた。
 ショーン・ヘイズ扮するエドワードの秘書トーマス君が傑作。昔ならマシュー・ブロデリックが似合いそうなとぼけた若者だよね。
 オープニングとラストが繋がる構成がgoodだし、クレジットロールが最後にしかないのも洒落ている。
 ところで、タイトルは「最高の人生の終わり方」でいいんじゃね? あっ、これだと客が来んわなぁ。

*

 カーターが語る、古代エジプト人が信じているという“天国の扉の前で神様に尋ねられる二つの質問”。

 一、自分の人生に喜びを見つけたか?

 二、人生で他人に喜びを与えたか? 

 皆さんも一度答えてみませんか? 


・お薦め度【★★★★=中年以上の男性友達にも薦めて】 テアトル十瑠

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10 コメント

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楽あれば・・・ (vivajiji)
2011-06-19 19:00:32
苦あり。
わが身ふりかえれば
自分にも他者にも喜びあれど
苦しみも悲しみもあったかも。
本作、いい映画でした。
あっけらかんとしながら
切ない部分もちゃんとあって。
ロブ・ライナーは巧いですね~

それにしても、アニタ・オディ!
おいしいところ存分に披露して
ほれぼれするくらいカッコいい歌い方!
彼女にしかできない“崩しのテクニック”
ブラボー!ですわ。


TB送りましたが
念のためURLに入れさせていただきました。
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ね!ヒュウマになったよね (anupam)
2011-06-19 19:04:33
感動させちゃうぞ!っていう気負いがなくていいよね~日本のドラマだとここらで音楽流すだろうなっていう展開でも、さらっとクールにふんばっていてイカシテます。

「ショーン・ヘイズ扮するエドワードの秘書トーマス君が傑作」・・ほんとこの方、上手いです。
超先輩ふたりとの共演で、このとぼけ方、将来楽しみ!

タイトル(邦題)がもう少しパンチがあれば、もっと集客できただろな・・そんな気もしたかな。
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vivajijiさん、こんばんは (十瑠)
2011-06-19 20:47:43
ロブ・ライナー、巧いです。
ジャック・ニコルソンがヤムヤムと美味しい料理をパクついた後に、サッと化学療法の結果を示すシーンに切り替える辺り、シリアスなのに笑わせてくれるしネ。

アニタ・オディ。
50年代のOLのようなスタイルで唄うスマートさ。かっこいいです
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観る度に (十瑠)
2011-06-19 21:00:29
ヒュウマになったね。終盤で。

そんで、結局トーマス君は儲け役だよね。
ラストシーンも持ってっちゃうし。
なかなか最近は若い俳優の名前、覚えないんだけど、ショーン・ヘイズ、覚えられるかなぁ。
ショーン君って多いような・・・。
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ウェル・メイドな作品 (オカピー)
2011-06-20 10:06:24
双葉師匠が「邦画にはウェル・メイドな作品が少ない」と仰っていたけど、正にこういうのをウェル・メイドの作品というのでしょうね。
作り物めいて秀作とか傑作としては扱いたくないけど、作りものとして良く出来ている作品、とでも言うのかな。

しかし、ジャック・ニコルスンは基本的に苦手。上手いんだけどね。

天国で問われる二つの質問。
三月以前なら答えられた気がしますが、今は答えられません。全く解らなくなりました。
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ジャック・ニコルソン (十瑠)
2011-06-20 10:49:21
「イージー・ライダー」以来色々と観てはいますが、未だに「ファイブ・イージー・ピーセス」の彼が一番印象的。
昨日もやっていた「バットマン」とか、その他のドラマでもアクが強くて、僕も避けてきた感がありますが、この映画は役柄が似合っていて、じっくりと観ました。
モーガン・フリーマンの実子が、そのまま長男の役で出ていて、父親を見舞った後に病室を出ていく際、その友人の息子を見送るニコルソンが、画面には映っていない彼に手を振る演技をしていたのが残像になっています。
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こんばんは~☆ (kira)
2011-07-15 22:48:32
初めまして。
レッドフォード関連作品にTB,有難うございました。
私も好きな作品でした!

コメントが遅れましたが、過去記事、かなり読ませていただきました。
その中から今回は未だに印象が薄れないこの作品に。
天国の門をくぐれるひとは、きっとみんな「イエス」なのかも知れない、と思っています。
たとえ本人が気づいていなくても(^^*)
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いらっしゃいませ~☆kiraさん (十瑠)
2011-07-15 23:11:46
>天国の門をくぐれるひとは、きっとみんな「イエス」なのかも知れない、と思っています。

そうですね。きっと、そうでしょう。
でも僕は、自信を持って「イエ~ス!」と言いたいので
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Unknown (宵乃)
2013-04-29 11:29:14
日本では閻魔大王の前で罪を告白させられるところですが、エジプトではこんな深い質問をされるなんて…。
”人生を無駄にした罪”に怯えていた(?)パピヨンならどう答えるでしょう?

色々と考えさせられる作品ですが、ウィットに富んだセリフのやり取りが楽しくて、後味も爽やかでしたね。
邦題さえなんとかしてくれれば!
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宵乃さん (十瑠)
2013-04-29 11:52:37
そうですか。パピヨンにはそういう台詞があるんですか。
生前に原作本はベストセラーになったし、幾分はホッとしたのかも知れないですね。

最近の邦題を付ける人はつまらんです。コピーライターなのか、宣伝部なのかは分からんですが、発想が貧困としか言えないですね。
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