テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

英国王のスピーチ

2022-08-16 | ドラマ
(2010/トム・フーパー監督/コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム・カーター、ガイ・ピアース、ジェニファー・イーリー、マイケル・ガンボン、クレア・ブルーム/118分)


 1920年代から30年代のイギリスが舞台。現在の女王エリザベス2世の父ジョージ6世(=ヨーク公爵王子アルバート)が主人公だ。ジョージは家族の中では「バーティ」と呼ばれていた。
 幼い頃から吃音症に悩まされていたバーティは、60歳をまじかに控えた父ジョージ5世に代わって公務をすることも増えた為、吃音症の治療にと何人もの専門医の往診を受けるのだが一向に改善されなかった。
 そんなバーティを心配する妻のエリザベスは、オーストラリア人の言語聴覚士、ライオネル・ローグの元を偽名を使って訪れる。
 自宅に出張で診療に来て欲しいというエリザベスに対して、ローグは『信頼と対等な立場が必要なのでこの場所でお願いしたい。それが不可能なら残念ですが』と言う。
 『私の主人がヨーク公でも・・?』
 驚くローグだったが診療方針は変えなかった。
 後日ローグの診療所にバーティとエリザベスがやって来る。
 
 家族間でしか使わない「バーティ」という呼び名を使ったりタバコは健康に悪いから此処では禁止ですと、王族に対して遠慮のないローグ。
 『あなたをちゃんと喋らせてみましょう』と、上手く読めないというバーティを録音機の前に立たせて「ハムレット」を音読させる。しかも両耳にヘッドフォンを付けてクラシック音楽を大音量で聴かせながら。
 馬鹿にされていると感じたバーティは怒って途中で帰ってしまうが、それから数日後、ローグがお土産にと持たせたバーティの読む「ハムレット」を録音したレコードをかけてみた。
 一緒にいたエリザベスも驚くほどに、スピーカーからはスラスラと読んでいるバーティの声が聞こえてくるのであった・・。

*

 主人公ジョージ6世を演じたのは、この演技でオスカーを獲得したコリン・ファース。
 映画の冒頭、1925年の大英帝国博覧会閉会式で、父ジョージ5世の挨拶を代読するヨーク公アルバート王子が登場し、隣に控える妻エリザベスと共に不安げな様子。不安は的中し、つっかえながらの演説に群衆も気の毒そうに顔を伏せるばかりであった、というシーンが流れる。
 その後、ビー玉を7個口内に頬張って本を読むというバカげた治療を受けるも危うくビー玉を飲み込みそうになるというシーンが続き、吃音症の為に人前でしゃべれないという主人公の抱える問題が観客にも共有される。
 コレで掴みはオッケーですな。

 ローグに扮したのは、1996年に『シャイン』で主演オスカーを獲ったジェフリー・ラッシュ。
 この映画でも助演男優賞にノミネートされたのですが、W主演といってもいい様な役でありますな。
 バーティが最初は植民地の平民の一人ぐらいにしか思っていなかったローグを段々と信頼していき、最後にはリスペクトするまでに至るお話が軸になっているからです。
 吃音症には精神的な要素もあるようなので、その辺にも切り込んでいくローグとバーティとの葛藤も出てきます。

 軸に絡むエピソードも興味深く、ジョージ5世が崩御した後の後継者問題やら、王族の婚姻に関するタブーとかで兄弟の揉め事があったり、又、当時台頭してきたナチスドイツとの戦争も浮上してきます。

 お薦め度は★4つ半。
 何度見てもラストシーンではウルウルしてしまいます。






・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】 

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