テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

42 ~世界を変えた男~

2021-12-24 | ドラマ
(2013/ブライアン・ヘルゲランド監督・脚本/チャドウィック・ボーズマン(=ジャッキー・ロビンソン)、ハリソン・フォード(=ブランチ・リッキー)、ニコール・ベハーリー(=レイチェル・ロビンソン)、クリストファー・メローニ、アンドレ・ホランド、ルーカス・ブラック、ハミッシュ・リンクレイター、ライアン・メリマン、ブラッド・バイアー、ジェシー・ルケン、アラン・テュディック/128分)


 前回記事に続いて今作もアメリカを舞台にした実話が元ネタの人種差別を批判した映画です。
 原題はただの【42】。
 MLB(メジャーリーグベースボール)ファンならどなたもご存じでしょうが、毎年4月15日には選手全員が背番号42を付けたユニフォームでゲームに出場します。それは近代MLBにおいて史上初の黒人メジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンを称える日だからです。
 当時MLBに在籍した選手は400人。全員が白人だったそうです。そして黒人はニグロリーグという別組織でプレーをしていました。
 時代は太平洋戦争が終わった1945年から47年の頃。
 主人公は無論ジャッキー・ロビンソンですが、かと言って彼の伝記という感じはなく、むしろ周囲の反対を押し切って彼をメジャーリーガーとして登用したドジャースのGMブランチ・リッキーの方が印象深い作品ですね。

 ドジャースといえば1995年に野茂英雄がメジャーデビューを果たした球団ですが、その時はロサンゼルス・ドジャース。1957年まではNYのブルックリンに本拠地を置いていたのでブルックリン・ドジャースといっていました。
 ブランチ・リッキーは大学時代から黒人プレーヤーと一緒に野球をした経験があり、彼らの能力を認めていました。また当時施行されていた人種隔離政策にも反対していたし、なにしろ観客には黒人もいるわけだから、もっと観客が増えるはずだと読んだわけですね。終盤になってジャッキーが黒人をメジャーに入れようとした本当の理由をリッキーに聞きますが、その答えが彼の人間性を表して良いシーンでした。

*

<リッキーがロビンソンに最も求めたことは差別を受けた時に「やり返さない勇気を持つ」ことだったという。1945年8月23日に契約金3,500ドル、月給600ドルの契約でドジャースの傘下のAAA級モントリオール・ロイヤルズへ入団。その時にリッキーは「君はこれまで誰もやっていなかった困難な戦いを始めなければならない。その戦いに勝つには、君は偉大なプレーヤーであるばかりか、立派な紳士でなければならない。仕返しをしない勇気を持つんだ」とロビンソンに言い、右の頬を殴った。ロビンソンは「頬はもう一つあります。ご存じですか」と答えたという。10月23日、ロビンソンがモントリオール・ロイヤルズへ入団したことを発表した>(ウィキペディアより)

 同じチームメイトにもジャッキーを採用しないようにと「嘆願書」を出す輩がいるし、南部の州のホテルにはチーム毎宿泊を断られたりする。グラウンドに於いても明らかなセーフをアウトと判定されたりワザと頭にデッドボールを投げられたりする。更には「二ガー、ニガー」と黒人を侮蔑するヤジを飛ばす観客や敵チームの監督もいる。
 そんなトラブルの連続だが、リッキーとの約束を守って我慢しているジャッキーの態度にやがて応援に回るチームメイトが一人二人と増えていくわけです。

 お薦め度は★三つ。
 ヘルゲランドの脚本は俯瞰の視点が少ないように思うんですよね。ジャッキーとリッキーを中心にMLB関連の周囲の人々を描いてますが、例えば新聞記事のショットとか世論の状況が感じられるようなシーンがもっとあったらスケール感も出てきたと思うんですけどねぇ。





・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠

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