あらすじ
1950年台に,核戦争を経て、1984年現在、
世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの三つの超大国
によって分割統治されている。
さらに、間にある紛争地域をめぐって絶えず戦争が
繰り返されている。本作の舞台となるオセアニアでは、
思想・言語・結婚などあらゆる市民生活に統制が加えられ、
物資は欠乏し、市民は常に「テレスクリーン」と呼ばれる
双方向テレビや、さらには町なかに仕掛けられた
マイクによって屋内・屋外を問わず、ほぼすべての行動が
当局によって監視されている。
オセアニアの構成地域の市ロンドンに住む主人公ウィンストンは、
真理省の下級役人として日々歴史記録の改竄作業を行っていた。
物心ついたころに見た旧体制やオセアニア成立当時の記憶は、
記録が絶えず改竄されるため、存在したかどうかすら定かではない。
ウィンストンは、この世界に疑問を持ち、古道具屋で買っ
ノートに自分の考えを書いて整理するという、
禁止された行為に手を染める。
ある日の仕事中、抹殺されたはずの3人の人物が載った
過去の新聞記事を偶然に見つけたことで、
体制への疑いは確信へと変わる。
「憎悪週間」の時間に遭遇した同僚の若い女性、ジュリアから
手紙による告白を受け、出会いを重ねて愛し合うようになる。
古い物の残るチャリントンという老人の店を見つけ、
隠れ家としてジュリアと共に過ごした。さらに、
ウィンストンが話をしたがっていた党内局の高級官僚の1人、
オブライエンと出会い、現体制に疑問を持っていることを告白した。
エマニュエルが書いたとされる禁書を
オブライエンより渡されて読み、体制の裏側を知るようになる。
ところが、こうした行為が思想警察であったチャリントンの
密告から明るみに出て、ジュリアと一緒にウィンストンは
思想警察に捕らえられ、「愛情省」で尋問と拷問を受けることになるが。
この世界は一党独裁体制という全体主義で、歴史まで党の都合
良いように改竄されるし、文字も党に批判できないよう
自由、名誉、正義、道徳、国際協調主義、民主主義、学問
宗教、などといった語があっさり姿を消した。
自由や平等といった概念を中心に、まわりに位置していた語は
すべて「犯罪思考」といった一語におきかえられてしまった。
このことはまるで、現代のあるC国に似ているのではないのか。
それ以上に現代はデジタル社会で情報が管理されあらゆるデータ
が盗み取られていて国民を監視できる恐ろしい国になってしまっている。
あらゆるところに監視カメラがあり、顔認証で個人が特定されてしまう。
この1984年の世界にそっくりだ。 いや、それ以上だ。
小説としては翻訳は読みにくくはないが、前半ストーリーが
進まず、異常な世界の描写に費やしている。
後半展開が早くなって面白くなるが、あまりにも冗漫な小説
である。
第一部で挫折してしまう人が多いだろう。
さすが、読んだふり本、第一位の面目躍如。
★★★★