前人未踏の2215試合連続出場を果たした「国民栄誉賞」のヒーローは
4月23日夜、上行結腸がんのため死去。71歳だった。
フルスイングとあの優しそうな笑顔が印象的だった。
みんなを先に考えるタイプだったという。
1979年の日本シリーズ、伝説の『江夏の21球』の名場面がまさにそうだ。
3勝3敗で迎えた第7戦、9回裏、4対3でリードした広島のマウンドには守護神・江夏豊。
しかし土壇場で近鉄が無死1、3塁と攻め立てる。
このとき、広島・古葉竹識がブルペンに北別府学を向かわせた。
見れば池谷公二郎も投球練習をしている。抑えの切り札・江夏はプライドを傷つけられる。
ここまで来てまだ信頼されてないのか。
我を失っている間に無死満塁になった。絶体絶命。
そのとき、ファーストを守っていた衣笠さんがマウンドに歩み寄り、言葉をかける。
「俺も同じ気持ちだ。ベンチやブルペンのことなんか気にするな」、「打たれたら俺が責任をとる」
江夏豊氏が、このときの気持ちを語った。
「絶対絶命のピンチだけど一人じゃないんだ、嬉しかった、救われたと思いました。」
伝説の投手はそう語った。そのひと言から快刀乱麻のピッチングが始まったのだ。
それで、初めて広島カープが優勝を勝ち取った。
ご冥福をお祈りいたします。
週刊文春デジタルを参考