5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

脳の縮んだチェルノブイリの鳥

2011-02-09 23:45:34 | 環境
「脳の縮んだチェルノブイリの鳥」というのは、BBCの「地球」欄、2月5日付けの記事である。

ウクライナ・チェルノブイリにある原子炉事故サイト近くに住む鳥たちの脳は、残留放射能の影響を受けて、通常より5%方小さくなっているという研究が、科学雑誌の《PLoS One》に発表されているというもの。アメリカ・南カロライナ大、フランス・南パリ大の研究者たちが、48種550羽の鳥を調べた結果に基づいた結論だ。成鳥に比べ生後1年の幼鳥に、よりはっきりとした症例が見つかるという。脳が小さい鳥たちは認知能力が劣るのだという。

チェルノブイリの原子力発電所事故が起きたのは1986年の4月。メルトダウン爆発による「死の灰」が欧州全域に降り、クレムリンの対応の悪さもあって被害は拡大した。WIKIによれば、広島の500倍の放射性物質が拡散したという、最悪の原子炉事故だったのだが、もう25年も前のこと、ひとびとの記憶からも薄れ始めた今になっても、放射能の影響が続き、鳥類の脳の奇形になって発現しているというのは、ショッキングな事実である。

事故後、発電所を中心とした区域には一般の立ち入りが禁止されているが、残留放射能が周辺環境与える影響を調査する研究者に限っては入域が許され、南カロライナ大、南パリ大の研究者たちも、昨年、大規模な野生生物調査を実施している。その結果、哺乳動物の減少、昆虫の種類の縮小が観察された。

今回の調査では、発電所跡地周辺8箇所の林地に網を張って鳥を捕獲、個体の計測をした結果が、平均5%の脳量減少という事実だったわけだ。幼鳥の脳量減が目立つのは、脳の発達が無ければ胎児の成長チャンスも無いということである。

厳しい環境に置かれた鳥は、内臓の大きさを変化させて環境ストレスに対処すると考えられている。たとえば、長距離を飛ぶ渡り鳥は内臓を縮めてエネルギーの無駄を省くことができる。だが、脳を縮小させることはほとんど無いから、チェルノブイリの鳥には眼には見えない放射能の強い影響が考えられるという。

現在までのところ、どうした作用で脳が縮小するのかは判ってはいないが、高い放射能を浴びることで酸化力ストレスが働き、それと闘うため、大量の抗酸化物質を生み出す。この抗酸化物質の過剰消費によって脳の縮小が起こるのではないかといい、さらに、強い放射能の影響を受けて脳の発達も阻害されるのだろうというのが、研究者たちの仮説だそうだ。

だが、この抗酸化物質原因説だと、脳だけでなく鳥の他の部位にも影響が現れなくてはいけない理屈だが、この点は実証されてはいないようだし、餌となる無脊椎動物が周辺に少ないことで鳥の発達が遅れるのではという仮説にしても、餌が減って野生動物の脳が小さくなったという事実も発見されていないという。

今後、この研究者たちの調査研究はどの方向に進むのか、記事には書かれていないが、棲息数減少中の哺乳動物が受けている放射能の影響や、昆虫など無脊椎動物のDNA変化など、さまざまな生物学的な発見が見られるのではないだろうか。

ところで、全国18箇所で稼動中の日本の原子力発電所。安全性の確保は、自然環境の保全という意味からも常に優先されてしかるべきだろう。

ここでも気になるのは、隣国たちの原子力に対する対応の仕方だ。原子爆弾を保有する中国、開発に必死の北朝鮮、原子力発電に力を入れ始めた韓国と、「今そこにある危険」が知らぬ間に増大して来ているのではないか。

若し一旦事あれば、チェルノブイリ以上の放射性物質拡散を日本列島は覚悟せねばなるまい。そんなとき、鳥のように脳を縮小しながら放射能ストレスに対応して世代を繋ぐことなど、やわな現代人たちにはとても出来はしないだろう。心配である。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿