575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

竹中皆二歌集『自然は最高にして』を読んで     遅足

2014年11月10日 | Weblog
竹中皆二さんは、以前、このブログで紹介させていただいた
「若狭の海幸山幸物語」の著者・竹中敬一さんのお父さん。
その皆二さんの最後の歌集を読ませて頂きました。

皆二さんは明治35年生まれ、旧制八高を中退、波乱万丈の青春を過ごします。
そして若山牧水の弟子となり、一筋に歌の道を歩まれました。
昭和7年小浜の阿納尻に居を構えます。
そして今で言うコンビニのような「いるかや」を始めました。

  久須夜岳向ひに聳え入江にはさざ波湧けり満ち潮にして

  水面(みのも)にはかすかに水皺(みじわ)光りつつ入江次第に暗くなりゆく

住まいは入江に近く、海豚が姿を見せることから付けた屋号だそうです。

  有用材杉檜(ひのき)より雑木を好むはけだもの而うしてわれ

  この舗道割れ目に生ふる艾(よもぎ)草むらむら茂りすでに実を持つ

自然を見る目も鋭いものがあります。
そして、この目は歌壇にも向けられて。

  店頭には草花の新種歌壇には短歌の新種われは好まず

90年を生き抜いた方ならではの歌も。

  九十年生き来てわれは思ふなり世論と言ふもの当にはならず

  われ生きて九十二年の間には共産国興りまた消滅す

亡くなるまで牧水を師として尊敬されていました。
牧水忌・九月十七日という前書きのある一首。

  午前七時五十八分香をたく我忘れざりき六十六年

私の好きな歌です。

  しづかにも季(とき)の移るは吹く風に日の光にもあはれあれども







コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする