575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

旅人の我も数なり花ざかり    井月

2014年04月11日 | Weblog
伊那谷の桜。高遠の桜など、これからが満開です。

作者は井上井月(せいげつ)。
幕末から明治にかけて、伊那谷を放浪した俳人。
越後・長岡の出身で武士だったとも言われますが、本人は沈黙。
祝い事にある家、死者の出た家などを訪れて句を詠み、一宿一飯に。

 
 朝毎のみどりも深し春の草(子供の誕生)

  
 餅配る老の祝や冬牡丹(老いの祝い)

 けふの日や泪を包む汗拭ひ(挽歌)

当時の伊那谷は、養蚕が盛んで経済的にも余裕がありました。
人の顔さえ見れば、酒を勧める土地柄であったので、
金銭を持たず蓄えも無かった井月にとって、
酒食の相伴にあずかることの出来る魅力的な土地でした。

 咲き急ぐ花や散る日のなきやうに

 命ぞと云うては掬う清水かな

 朝顔の命は其の日其の日かな

 山までは幾度も来て雪おそし

虱だらけで、泥酔しては寝小便をたれるという井月。
女性や子供たちはからは嫌われていましたが、
俳句を趣味とする富裕層の男性たちは井月を優遇。
伊那谷での生活は30年にのぼりました。
 
                続く

コメント
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