東久留米 学習塾 塾長ブログ

東京都東久留米市滝山の個別指導型学習塾 塾長白井精一郎のブログ

中学生でも解ける東大大学院入試問題(27)

2014-10-31 12:59:02 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

暖かく過ごしやすいのですが、天気は下り坂で、しばらくすると雨になるようです。西から低気圧が近づいていて、明日は雨の予報です。

さて、今回は平成18年度東大大学院工学系研究科システム量子工学入試問題で、数についての易しい問題です。

問題は、
「6桁の整数があり、一の位は「9」であった。いまこの「9」を一番上の位に移し、他の数字の位をひとつずつ下げてつくった6桁の整数は、元の整数の4倍になった。元の整数を求めよ。」
です。

数学の文章題は適当に変数を使って、問題に書いてあることを式で表し、それを解けばお仕舞いです。この問題では、もとの整数をNとして、6桁の数の6桁目の数字をa、5桁目の数字をb、・・・、2桁目の数字をeとします。1桁目の数字は9なので、Nは、
N=a・10^5+b・10^4+c・10^3+d・10^2+e・10+9   (1)
と表せます。

次に、一の位(1桁目)の数字「9」を一番上の位(6桁目)に移して、他の数字の位をひとつずつ下げてつくった6桁の整数をMとすると、Mは、
M=9・10^5+a・10^4+b・10^3+c・10^2+d・10+e   (2)
となります。

最後に、NとMとの関係を立式すると、
M=4N   (3)
となり、(1)(2)(3)を使って、Nを求めればOKです。使った変数が7個あるので、3つの式では解けそうもありませんが、実は、
P=a・10^4+b・10^3+c・10^2+d・10+e
とおくと、(1)(2)は、
N=10P+9     (4)
M=900000+P  (5)
となり、変数N、M、Pの3個に対して、(3)(4)(5)の3つの式となるので解くことができます。

それでは、(4)(5)を(3)に代入して、
900000+P=4(10P+9)
39P=899964
P=23076    (6)

(4)に(6)を代入して、
N=10・23076+9
 =230769
と答えが求まりました。

次に、覆面算にして解いてみましょう。図1にそれを示します。


▲図1. 覆面算

掛け算の覆面算を解くコツは、一番大きな桁が繰り上りがあるか、ないかを調べることで、この場合、繰り上がりがなく、aに4を掛けて9となるのですから、aは2で、その下の5桁目からの繰り上がりが1ということです。

また、1桁目に注目すると、e=6になることが判ります。ここまでをまとめて、図2に示します。


▲図2.覆面算(途中経過)

ここからは上の桁から調べても下の桁から調べても、どちらでもOKなのですが、ここでは簡単そうなので下の桁からいきましょう。

普通に掛け算していけば良さそうです。まず、69×4=276なので、d=7になります。つづいて、769×4=3076なので、c=0、さらに、0769×4=3076より、b=3となり、図3のように覆面算が完成しました。元の整数は、前の答えと同じく、230769となります。


▲図3.覆面算(結果)

小学生でも簡単に解ける覆面算でした。まあ、東大大学院入試で覆面算を使って解く受験生は珍しいと思いますが。

中学生でも解ける東大大学院入試問題(26)

2014-10-30 12:44:49 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

昨夜10時頃に帰宅するときはそれほど寒くなかったのですが、今朝はたいへん冷え込みました。天気図では、高気圧が日本列島を広く覆っていますが、明日から天気は崩れ模様のようです。

今回は、平成18年東大大学院工学系研究科システム量子工学の入試問題を取り上げます。

問題は、
「3辺の長さがそれぞれ 2、√13(ルート13)、5の三角形の面積を求めよ。」
です。

三角形の合同条件の1つに、「3組の辺がそれぞれ等しい」というものがあることから判るように、3辺の長さが与えられると、三角形は決定します。つまり、その面積がひとつに定まるということです。

まず、与えられた条件で三角形ができるのかを調べみましょう。3辺の長さが与えられたとき、三角形ができるための条件は、
(1番長い辺の長さ)<(残り2辺の長さの和)  (1)
です。

問題で与えられた√13は、約3.6なので、1番長い辺の長さは5、残りの2辺の長さの和は、2+√13≒2+3.6=5.6となって、確かに(1)を満たします。

そこで、図1に与えられた三角形を示します。


▲図1.与えられた三角形

図1の三角形の面積を求める方法はいくつかありますが、それらの「根っこ」は同じなので、それほど面白いものではありませんが、(i)三平方の定理を使う方法、(ii)ヘロンの公式を使う方法、(iii)余弦定理を使う方法、の3つを紹介します。

(i)三平方の定理を使う方法
ご存知のように、三角形の面積は、(底辺)×(高さ)÷2 ですから、三角形の1つの頂点からその対辺に垂線を降ろせば、その垂線の長さが高さになるので、三角形の面積を計算することができます。

そこで、1つの頂点(A)から対辺(BC)に垂線を降ろし、その垂線の足をDとした場合を図2に示します。


▲図2.三平方の定理を使う方法

図2で、BD=xとすると、CD=5-xになります。また、AD=hとして、△ABDに三平方の定理を適用すると、
x^2+h^2=2^2
=4    (2) (x^2 はxの2乗を表します)

次に、△ACDに三平方の定理を適用すると、
(5-x)^2+h^2=(√13)^2
     =13    (3)

ここで、(2)(3)からhを求めればOKです。

(3)-(2)でh^2を消去すると、
(5-x)^2-x^2=13-4
25-10x+x^2-x^2=9
10x=16
x=8/5    (4)

(4)を(2)に代入して、
(8/5)^2+h^2=4
h^2=4-64/25
  =36/25
h=±6/5
h>0より、
h=6/5    (5)

△ABCの面積をSとすると、
S=1/2・BC・h
 =1/2・5・6/5
 =3
と面積が求まりました。

次に、(ii)ヘロンの公式を使う方法です。ヘロンの公式は、三角形の各辺の長さを a、b、cとし、s=(a+b+c)/2とすると、その三角形の面積Tは、
T=√(s(s-a)(s-b)(s-c)
となるというものです。簡単で覚えやすい公式です。(あまり使うことはありませんでしたが)

では、2、√13、5の場合を計算してみましょう。まず、
s=(2+√13+5)/2
 =(7+√13)/2

与えられた三角形の面積をSとすると、
S=√((7+√13)/2・((7+√13)/2-2)・((7+√13)/2-√13)・((7+√13)/2-5))
 =√((7+√13)/2・(3+√13)/2・(7-√13)/2・(-3+√13)/2)
 =√((7+√13)/2・(7-√13)/2・(3+√13)/2・(-3+√13)/2)
 =√((49-13)/4・(13-9)/4)
 =√(36/4・4/4)
 =√9
 =3
と先ほどの答えと同じになりました。

最後に、(iii)余弦定理を使う方法です。図3のように∠ABC=θとします。


▲図3.余弦定理を使う方法

すると、△ABCの面積Sは、
S=1/2・BC・AB・sinθ  (6)
となり、また、余弦定理から
AC^2=AB^2+BC^2-2AB・BC・cosθ  (7)
が成り立ちます。

ここで、(7)と
(sinθ)^2+(cosθ)^2=1   (8) 
を使って、sinθを求め、(6)に代入すれば、Sが計算できます。

早速、(7)にAB=2、BC=5、BC=√13を代入すると、
(√13)^2=2^2+5^2-2・2・5・cosθ
13=4+25-20cosθ
20cosθ=16
cosθ=16/20
    =4/5     (9)

(9)を(8)に代入して、
(sinθ)^2+(4/5)^2=1
(sinθ)^2=1-16/25
       =9/25
sinθ>0より、
sinθ=3/5    (10)

(10)とAB=2、BC=5を(6)に代入して、
S=1/2・5・2・3/5
 =3
となります。

この他にも、外接円の半径を使う方法(S=abc/(4R)、Rは外接円の半径)などあるので興味があれば調べてみてください。

中学生でも解ける東大大学院入試問題(25)

2014-10-29 12:04:50 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

朝方は冷え込みましたが、今は陽射しが強く20°近くと暖かくなりました。天気図を見ると、東北地方の北半分より北側以外は全国的に高気圧に覆われていて、2、3日、良い天気が続くようです。

さて、今回は平成22年度東大大学院工学系研究科システム創成学入試の数表に関する問題を取り上げます。

問題は、
「正の整数を次のように並べたとき、(I,J)=(101,50)に入る数字は何か。」

▲問題図

このような数表問題の基本は、特別なマス(例えば、1行目とか1列目など)に配置された数字の規則性を見つけることですが、この問題の場合、I が偶数のときには、下のマスに進むとマスの数字が+1となり、I が奇数のときには、下のマスに進むと-1となっているので、1行目または1列目に並んだ数の規則性を1つの式で表すことはできません。

とは言っても、I が偶数か奇数で分ければよいだけの話で、
I が奇数のとき、
(n,1)=n^2、 (n^2 はnの2乗を表します)  (1)
I が偶数のとき、
(n,1)=(n-1)^2+1
と簡単に表すことができます。

ここでは、(I,J)=(101,50)の数字を求めるので、I が奇数なので、(1)を用いて、
(101,1)=101^2
       =10201 
となります。

一方、(101,1)から下に49マス進むと、(101,50)に到達しますが、このように、I が奇数のとき、下に1マスに進むとマスの数字は-1となるので、(101,1)から(101,50)に進む場合、マスの数字は、-49となります。

つまり、
(101,50)=10201-49
        =10152 
と判ります。

同じような方法ですが、図1のように、(I,J)=(1,1)から(100,100)までの数字を並べてしまい、(101,1)または(1,101)から数える方法を示します。


▲図1.別の数え方

I=101なので、それより1だけ小さい正方形のマスの集まりを考えると、そのなかに数字が100×100=10000個あることになります。

ここで、10000は、(100,1)または(1、100)のどちらかになるのですが、I=100の場合、(100,1)から(100,100)を経由して(1,100)に到るまで数字が大きくなるので、10000は(1,100)になります。

すると、(1,101)は10001で、そこから右に100マス進むと、(101,101)に到るので、
(101,101)=10001+100
         =10101
です。

さらに、(101,101)から上に51マス進むと(101,50)に到着するので、
(101,50)=10101+51
        =10152 
と判ります。

さらに別の方法ですが、(1,1),(2,2),(3,3),・・・に並ぶ数字をピックアップすると、
1,3,7,13,・・・   (2)
となりますが、これは規則性を持っていて、(n,n)の数字は、
(n,n)=n^2-n+1
で表すことができます。((2)の階差数列が、2,4,6,・・・となり、その和が(n-1)nとなるので、(2)の数列のn番目の項は、1+(n-1)n=n^2-n+1になります)

すると、
(101、101)=101^2-101+1
         =10101
と2つ目の方法で示したものと一致し、これを使って解くこともできます。

他にもいろいろな解法があると思いますが、興味があれば考えてみてください。

中学生でも解ける東大大学院入試問題(24)

2014-10-28 12:42:12 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

西高東低の冬型の気圧配置になり北風が吹いていますが、陽射しが暖かいのでそれほど寒くはありません。しかし、これからどんどん寒くなっていきますから、特に受験生の皆さんは風邪などに気を付けてください。

しばらくの間、図形問題を取り上げたので、今回は平成22年度東大大学院工学系研究科システム創成学入試問題の数に関するものです。

問題は、
「9進法で表された3けたの数を7進法で表したところ、数字の並び方が逆の3けたの数になった。この数を8進法で表せ。」

ある数Nのn進法での表し方を知っていれば簡単な問題です。(これを知らないと解けないような気がします)

まず、ある数Nを9進法で表したとき、3桁目の数字をa、2桁目の数字をb、1桁目の数字をcとすると、
N=a・9^2+b・9+c   (1)
となります。(9^2 は9の2乗を表します)

一方、Nを7進法で表すと、3桁目の数字がc、2桁目の数字がb、1桁目の数字がaとなるのですから、
N=c・7^2+b・7+a   (2)
となります。

ここで、a、b、cの取り得る範囲を確認しておきましょう。7進法の場合、a、b、cは、0以上6以下の整数となり、また、(1)からa≠0、(2)からc≠0となります。まとめると、
1≦a,c≦6、0≦b≦6 a,b,cは整数  (3)
となります。

これで準備完了です。早速、(1)、(2)を整理して、a、b、cの関係式を導きましょう。

(1)=(2)から、
a・9^2+b・9+c=c・7^2+b・7+a
81a+9b+c=49c+7b+a
80a+2b-48c=0
40a+b-24c=0   (4)

(3)と(4)の関係からa、b、cを決定するのですが、(3)からすべてのa、b、cの組み合わせは、6×6×7=252通りなので、それらをチェックして正解に辿り着けます。

もう少し手間を省きたいのであれば、(4)を
b=24c-40a
と変形し、(3)に代入して、
0≦24c-40a≦6
0≦12c-20a≦3
を導いて、a、cの組み合わせ36通りをチェックするのも良いでしょう。

もっと簡単に解くのであれば、(4)を
8(3c-5a)=b    (5)
とすると良いでしょう。

(5)から、bは8の倍数で、さらに、(3)の条件下で8の倍数は0だけなので、b=0となります。すると、
3c-5a=0
5a=3c    (6)
となります。

(3)と(6)から、a=3、c=5となり、(1)にa=3、b=0、c=5を代入して、
N=3・81+0・9+5
 =248

248を8進法に変換すると、370となります。下図に計算方法を示します。


▲図.248の8進法変換計算方法

都立高校入試でn進法についての出題は見かけませんが、簡単な規則なので覚えておくと役に立つこともあるかもしれません。 

NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」-官兵衛の蟄居-

2014-10-27 12:56:03 | 学習塾塾長の日記
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

昨夜雨が降りましたが、朝には上がっていて、今は曇の多い空模様です。天気図も昨日とは様変わりで、寒冷前線が北海道・東北から日本海に、停滞前線が四国の南の太平洋にあって、悪天候になりそうですが、嬉しいことに、明日から晴天の日が続くようです。

さて、昨夜のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」は、官兵衛の蟄居と秀次事件前夜の話でした。

官兵衛の蟄居については、黒田家譜にその記載はなく、三成の讒言により秀吉の怒りを買った官兵衛は、剃髪し如水と号したと言う記述から、「如水は此頃石田が讒に依て太閤の御前うとくなり、只折節に殿中に出仕せられけれ共、久しく対面をばゆるし給はず。」と言うところに飛んでいます。

ところが、福岡市博物館には、官兵衛の長政に宛てた遺言状が所蔵されていて、日付は文禄2年8月9日になっています。

そして面白いことに、翌日の8月10日に秀吉が長政に宛てた朱印状のなかに、「勘解由がこと(中略)重ねて御意得るべき由にて候間、帰朝の儀、曲事に思おぼし召し、ただちに御成敗なるべく候。左様にてはその方迷惑すべく候。親に替わり候て諸事申しつく様(中略)勘解由儀は助け置かされ候。その旨を存じ、いよいよ奉公にぬきんでるべく事」と長政の武功に免じて官兵衛を助ける旨を知らせます。

黒田家譜にも、8月10日付けの秀吉から長政宛の朱印状が掲載されているのですが、「普請」についての内容で、官兵衛の助命の件はありません。長政からすれば自慢できる話なのでしょが、黒田家からすると自慢できる話でもないでしょうから、割愛したというところでしょうか。

来週は、秀次事件と慶長の役を中心にストーリーが展開されます。秀吉の死期も迫り、最後の山場、関ヶ原も近づいてきました。乞うご期待。

中学生でも解ける東大大学院入試問題(23)

2014-10-26 12:06:23 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

今は晴れていて良い天気なのですが、ラジオの天気予報では、午後から雲が出て雨が降るところもあると言っていました。天気図を見ると、大陸からの高気圧が続いているので、明日から暫く晴れそうです。

さて、今回も図形問題を取り上げます。平成18年度東大大学院工学系研究科システム量子工学の入試問題で、相似の問題です。都立高校入試にも相似問題が頻出ですが、それと同レベルの問題で、相似問題を解くために必要なテクニックを使うので良い問題だと思います。

問題は、
「長方形ABCDの各辺上に、図のように4つの点P、Q、R、SをとりPRとQSの交点をOとする。三角形PQOと三角形RSOの面積が等しく、それぞれ30cm2 であるとき、長方形ABCDの面積を求めよ。但し、AS=8cm、PB=10cm、QC=12cm、RD=8cmである。」


▲問題図

まず、問題文の条件を問題図に書き入れた図1を示します。


▲図1.問題図に条件を書き入れました

面積の等しい三角形があるときには、等積変形を思い浮かべましょう。すると、図2のようにPS、QRに補助線を引きたくなります。


▲図2.等積変形を思い出して補助線を引く

ここで、△PQRと△SQRの面積が等しいので、PS//QRになります。

すると、△APS∽△CRQで、その相似比はAS:CQ=8:12=2:3となります。ここで、AP=2a、CR=3aとすると、AB=CDより、
2a+10=3a+8
したがって、
a=2、AP=4cm、CR=6cm
とAPとCRの長さが判ったので、△APSと△CRQの面積は、それぞれ16cm2、36cm2となります。

一方、△OPS∽△ORQで、その相似比は2:3です。これから、OP:OR=2:3、OS:OQ=2:3なので、△OPSと△ORQの面積は、それぞれ20cm2、45cm2となります。(△OPSの場合、△PQSの面積は△POQ(=30cm2)と△POS(=△OPS)の面積の和に等しく、その面積比は、OQ:OS=3:2になるので、△POQの面積:△POSの面積=30:△OPS=3:2より△OPS=20cm2となります。△ORQも同様)

ここで、いままでに得られた結果を図3にまとめます。


▲図3.いままでに判ったこと

あとは、△BPQと△DSRの面積を求めるか、BQまたはDSの長さを求めればお仕舞いです。ここでは、BQの長さを求めてみましょう。

台形ASQBに着目すると、その面積Sは、
S=(8+BQ)・14・1/2
 =7(8+BQ)   (1)

一方、台形ASQBの面積は、△APS、△OPS、△PQO、△BPQの面積の和なので、
S=16+20+30+(△BPQの面積)
 =66+(△BPQの面積)   (2)

ところが、△BPQの面積は、
BQ・10・1/2=5・BQ   (3)
なので、(1)(2)(3)より、
7(8+BQ)=66+5・BQ
整理して、
2・BQ=66-56
    =10
ゆえに、
BQ=5cm
と判りました。

以上より、長方形ABCDは、縦14cm、横17cmとなり、その面積は、238cm2になります。

ここで使った等積変形や、三角形で対辺をa:bに内分する点に頂点から引いた線分でできる2つの三角形の面積比はa:bになることを図4にまとめておきます。


▲図4.覚えておきたい解法テクニック

これらは、都立高校入試に頻出する大切なテクニックなのでしっかり覚えておきましょう。

中学生でも解ける東大大学院入試問題(22)

2014-10-25 12:57:21 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

今日も良い天気になりました。絶好の行楽日和です。天気図を見ると、大陸からの高気圧が続いていて、暫く晴れの日が続くようです。

昨日に続いて図形問題です。平成21年度東大大学院工学系研究科システム創成学の入試問題ですが、都立高校入試問題レベルのように見えるものです。

問題は、
「図に示す長方形ABCD中の四角形EFBCの面積を求めよ。ただし、辺の長さは、AG=1、GH=2、HD=3、DE=4、EC=5 である。」


▲問題図

問題図に問題文中の辺の長さを書き入れたものを図1に示します。


▲図1.問題図に辺の長さを書き入れた図

一見して易しい問題で、求積する四角形EFBCを三角形や台形に分割し、それぞれ面積を求めればお仕舞いです。そのとき、相似関係を使って所望の辺の長さを求めることになります。

四角形EFBCの分割の仕方はいろいろありそうですが、ここでは図2に示すように、EからCBに平行な補助線を引きました。


▲図2.四角形EFBCの分割


まず、△BAH∽△BIJ なので、AH:IJ=BA:BI となり、AH=3、BA=9、BI=5 を代入して、IJ=5/3 と判り、さらに、EJ=EI-IJ=6-5/3=13/3 となります。

次に、FからEI に垂線を降ろしその足をKとすると、FKは△FEJで底辺をEJとしたときの高さになります。

そして、△FEJ∽△FGHを利用すると、EJ:GH=FK:(4-FK) が成り立つので、EJ=13/3、GH=2、を代入して、FK=52/19 となります。

これで四角形EFBCを分割した、△FEJと台形CBJEの面積を計算することができるようになりました。△FEJの面積S(△FEJ)は、
S(△FEJ)=1/2・EJ・FK
       =1/2・13/3・52/19=338/57

台形CBJEの面積S(台形CBJE)は、
S(台形CBJE)=1/2・(EJ+CB)・CE
         =1/2・(13/3+6)・5
         =1/2・31/3・5
         =155/6

従って、四角形EFBCの面積S(□EFBC)は、
S(□EFBC)=S(△FEJ)+S(台形CBJE)
        =338/57+155/6
        =676/114+2945/114
        =3621/114
        =1207/38
となります。

答えの数字が、あまり綺麗でないので他の解法で確かめてみましょう。

Cを原点、CBをx軸、CDをy軸とすると、四角形EFBCのE、B、Cの座標がそれぞれ、E(0,5)、B(6,0)、C(0,0)となるので、Fの座標を求めれば四角形EFBCの面積を計算することができます。

Fの座標は、直線EGと直線BHとの交点なので、それぞれの直線の式を連立させて解くことにより求めることができます。

また嬉しいことに、GとHの座標は簡単で、それぞれ、G(5,9)、H(3,9)となり、直線EGと直線BHの式は簡単に求めることができます。図3にその結果を示します。(よく判らない中3生はしっかり復習しておきましょう。都立高校入試に必ず出題されます。)


▲図3.Fの座標を求める

四角形EFBCを台形ECLFと△FLBに分割してそれぞれの面積を計算すると、
S(台形ECLF)=1/2・(5+147/19)・65/19
         =1/2・242/19・65/19
         =15730/(2・19・19)

S(△FLB)=1/2・(6-65/19)・147/19
       =1/2・49/19・147/19
       =7203/(2・19・19)
従って、
S(□EFBC)=S(台形ECLF)+S(△FLB)
        =(15730+7203)/(2・19・19)
        =22933/(2・19・19)
        =1207/38
と前記した答えと一致しました。

大抵の場合、答えがスッキリしたものになると正解だなと確信するのですが、昔の東大入試問題では、綺麗でない答えになって、受験生を疑心暗鬼にさせるものがありました。この問題もそれを踏襲しているのかも知れません。

いずれにしても、この問題は図形問題というより計算問題で、その点で都立高校入試問題より難しそうです。

中学生でも解ける東大大学院入試問題(21)

2014-10-24 13:30:19 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

昨日、一昨日とは打って変わって、とても良い天気になりました。このところ寒く感じる日が続いていましたが、今日は暖かく過ごしやすい日になりました。

今回は、平成17年度東大大学院工学系研究科システム量子工学の入試問題です。ここ暫く、合同式など数に関する問題が続いたので、今回は図形問題を選びました。

問題は、
「下図のように等間隔で規則的に並んでいる格子上に頂点が存在する多角形を考える。このような多角形の面積Sは、多角形に周上にある格子点数a(下図の場合は8)と多角形の内部にある格子点数b(下図の場合は3)とを用いて表すことができる。この関係式を求めよ。」
です。


▲問題図

これは、「ピックの定理」というもので、答えは、
S=a/2+b-1  (1)
になります。

例えば、問題図の直角三角形では、格子点間の長さを1とすると、底辺4、高さ3なので、その面積Sは、6になります。

一方、(1)を使って計算すると、a=8、b=3から、S=8/2+3-1=6 と上記のものと一致します。

これを証明する方法は、簡単な長方形から初めて、直角三角形、三角形、多角形と一般化する方法や、数学的帰納法を使う方法などありますが、1問あたりの試験時間10分間で解答を書き上げるのは難しいでしょう。もとより、この問題でも「ピックの定理」の証明を要求しているのではなく、(1)の関係式を要求しているので、それさえ知っていれば3秒で正解できる訳ですが。

今回は、多角形を面積1/2の三角形に分割して、「ピックの定理」を説明する方法を紹介します。

まず、図1に格子点を頂点とする多角形(7角形)を青線で示し、その内部を面積1/2の三角形で分割します。

(実は、格子点上に頂点を持つ多角形が面積1/2の三角形に分割できることを証明する必要があります。

そこで、多角形の各辺で斜めになっているものを1辺とする三角形または台形を作り、元の多角形に付加した図形を考えます。

ここで、新たに作った三角形と台形の面積は、整数または半整数になり、それらを元の多角形に付加した図形は、長方形に分割できるのでその面積は整数となります。つまり、元の多角形の面積は、(整数-整数または半整数)=整数または半整数となり、元の多角形は面積1/2の三角形に分割できることになります。)


▲図 多角形を面積1/2の三角形で分割する

もとに戻って、基本方針を説明すると、
・多角形内の面積1/2の三角形の個数をmとする
→多角形の面積Sは、m/2   (2)

一方、
・三角形の内角の和が180°
→m個の三角形の内角の和は、180°×m   (3)

・多角形の内部の格子点(その数はb個)を頂点とする三角形の内角の和が360°
→その合計は、360°×b   (4)

・多角形の周上の格子点(その数はa個)から多角形の頂点(その数はn個)を除いた格子点(その数は(a-n)個)を頂点とする三角形の内角の和が180°
→その合計は、180°×(a-n)   (5)

・m個の三角形の内角の和(3)から(4)、(5)を引いたものが、多角形(n角形)の内角の和、180°×(n-2)   (6)

の(2)(3)(4)(5)(6)を使って、S、a、bの関係式を導くというものです。

早速立式すると、(6)=(3)-(4)-(5)から、
180°×(n-2)=180°×m-360°×b-180°×(a-n)   (7)
となり、両辺を180°で除すると、
n-2=m-2b-a+n
m=n-2+2b+a-n
 =a+2b-2  

(2)より、
S=1/2(a+2b-2)
 =a/2+b-1
と「ピックの定理」の式を導出することができました。興味のある方は、方眼紙にいろいろな多角形を描いて調べてみてください。

中学生でも解ける東大大学院入試問題(20)

2014-10-23 12:35:05 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

雨が降ったり止んだりしていますが、これから天気は回復します。週末は気温も上がり暖かくなるようです。

昨日に続いて平成20年東大大学院工学系研究科環境海洋工学入試問題の小問(2)を取り上げます。

問題は、
「2^n-1が素数ならば、2^(n-1)・(2^n-1)のすべての正の約数の和は、2^n・(2^n-1)になることを証明せよ。ただし、『すべての正の約数』とは、1および2^(n-1)・(2^n-1)を含むものとする。」 (2^n は2のn乗を表します)
というものです。

どうでもよいことかも知れませんが、
N=2^(n-1)・(2^n-1)  (1)
とすると、Nの約数の和がNの2倍になるということですね。

それでは解答に取り掛かりましょう。昨日、656の約数の和を求める問題で、656を素因数分解し、その指数を利用しましたが、今回の問題も全く同じように解くことができます。

まず、2^n-1は素数なのでnは自然数となり、つまり、(1)の式はNを素因数分解を表しているということです。

すると、昨日説明した《 》のNの素因数分解式から約数の和Sを求める式を使えば、S=2^n・(2^n-1)となるはずです。
《 N=a^p × b^q ×・・・× c^r のとき、Nの約数の和Sは、
S=(a^(p+1)-1)/(a-1)×(b^(q+1)-1)/(b-1)×・・・×(c^(r+1)-1)/(c-1)》

では、それを確かめてみましょう。《 》のなかで、 a=2、p=n-1、b=2^n-1、q=1、r=0、cは任意 をNの式に代入すると(1)となり、そのときのSは、
S=(2^(n-1+1)-1)/(2-1)×((2^n-1)^(1+1)-1)/(2^n-1-1)
 =(2^n-1)((2^n-1)^2-1)/(2^n-2)
 =(2^n-1)((2^n-1)+1)((2^n-1)-1)/(2^n-2)
 =(2^n-1)・2^n(2^n-2)/(2^n-2)
 =2^n・(2^n-1)
と確かに証明すべき式になりました。

では次に、Nの約数を書き出して和を作ってみましょう。

Nの約数は、1、2、2^2、2^3、・・・、2^(n-1)、(2^n-1)、(2^n-1)・2、(2^n-1)・2^2、(2^n-1)・2^3、・・・、(2^n-1)・2^(n-1) で2n個あります。

これらを
S1=1+2+2^2+2^3+・・・+2^(n-1)
S2=(2^n-1)+(2^n-1)・2+(2^n-1)・2^2+(2^n-1)・2^3+・・・+(2^n-1)・2^(n-1)
 =(2^n-1)(1+2+2^2+2^3+・・・+2^(n-1))
として、S=S1+S2を計算すると、
 S=1+2+2^2+2^3+・・・+2^(n-1)+(2^n-1)(1+2+2^2+2^3+・・・+2^(n-1))
 =((2^n-1)+1)(1+2+2^2+2^3+・・・+2^(n-1))
 =2^n(1+2+2^2+2^3+・・・+2^(n-1))
となり、1+2+2^2+2^3+・・・+2^(n-1) は、公比を2とする等比数列の和なので、
1+2+2^2+2^3+・・・+2^(n-1))=2^n-1
より、
S=2^n(2^n-1)
と目的の式になりました。

この問題の小問(1)と(2)の関係が判然としないのですが、もしかすると、小問(1)は656の約数を書き下して、小問(2)は式の計算をさせるつもりだったのでしょうか。よく判りません。

中学生でも解ける東大大学院入試問題(19)

2014-10-22 12:29:41 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

予報通り雨になり、気温も14℃と寒くなっています。明日も雨が続くようですが、明後日には回復するようです。

今回は平成20年東大大学院工学系研究科環境海洋工学の入試問題です。この問題は2つの小問から成るのですが、今回取り上げるのは小問(1)です。

問題は、
「656のすべての正の約数はいくつあるか? また、すべての約数の和を求めよ。ただし、『すべての正の約数』とは、1および656を含むものとする。」

自然数Nの約数の個数とその和を求めるためには、Nを素因数分解して、
N=a^p × b^q ×・・・× c^r   (1)
と表すと、Nの約数の個数nは、
n=(p+1)(q+1)・・・(r+1)   (2)
となり、その和Sは、
S=(a^(p+1)-1)/(a-1)×(b^(q+1)-1)/(b-1)×・・・×(c^(r+1)-1)/(c-1)   (3)
となります。

これらの(2)(3)を簡単な数12で確認してみましょう。

まず、12の約数を求めると、1、2、3、4、6、12となります。つまり、個数は6個、それらの和は28となります。

次に、12を(1)のように素因数分解すると、
12=2^2×3
となり、(2)(3)を使って計算すると、
(12の約数の個数)=(2+1)(1+1)=3×2=6
(12の約数の和)=(2^3-1)/(2-1)×(3^2-1)/(3-1)
         =7/1×8/2
         =28
と約数を求めて計算した場合と一致しました。

では、どうして(2)(3)が成り立つかを簡単に説明します。

まず、(2)、つまり約数の個数ですが、(1)のNの約数は、
a^x × b^y ×・・・× c^z (0≦x≦p、0≦y≦q、0≦z≦r、x、y、zは整数)
で表され、かつ、a^x、b^y、c^z はお互いに素です。

ここで、Nの約数の種類、つまりNの約数の個数は、a、b、・・・、cをそれぞれ何回使うかで決まって、aについての使い方は(p+1)通り、bについては(q+1)通り、・・・cについては(r+1)通りなので、、約数の個数は、それらの積(p+1)(q+1)・・・(r+1)通りとなります。

次に、(3)の約数の和ですが、
(a^0+a^1+・・・+a^p)(b^0+b^1+・・・+b^q)・・・(c^0+c^1+・・・+c^r)   (4)
を展開すると、a^x×b^y×・・・×c^z (0≦x≦p、0≦y≦q、0≦z≦r)となるNの約数がすべて、かつ、重複なく現れます。言い換えると、左側の( )からa^xを選び、中央の( )からb^yを選び、右側の( )からc^zを選んで積をつくることにより、Nのすべての約数を重複なく得ることができるということです。

ところが、(4)の左側の( )は、aを公比とする等比数列の和となっているので、
a^0+a^1+・・・+a^p=(a^(p+1)-1)/(a-1)

同様に、
b^0+b^1+・・・+b^q=(b^(q+1)-1)/(b-1)
c^0+c^1+・・・+c^r=(c^(r+1)-1)/(c-1)
なので、(3)が成り立ちます。(等比数列の和は、高校で勉強するところですが、
T=a^0+a^1+・・・+a^p=1+a+・・・+a^p
aT=a+a^2・・・+a^(p+1)
から、
aT-T=a+a^2・・・+a^(p+1)-(1+a+・・・+a^p)
    =a^(p+1)-1
(a-1)T=a^(p+1)-1
T=(a^(p+1)-1)/(a-1)
と導きます)

それでは、初めの問題に戻って、656の約数の個数と約数の和を求めましょう。
656=2^4×41
なので、
(約数の個数)=(4+1)(1+1)=10個
(約数の和)=(2^5-1)/(2-1)×(41^2-1)/(41-1)
      =31×1680/40
      =31×42
      =1302
となります。

まあ、656のように約数の個数が10個程度であれば、すべての約数を書き出しても大した手間ではありません。実際にやってみると、656の約数は、1、2、4、8、16、41、82、164、328、656で個数は10個、それらの和は、1302と簡単に求めることができます。(電卓で計算しましたが)

ところが、656より小さい576(=2^6×3^2)では、約数の個数が21個になるので、いちいち書き出して計算するのも面倒になります。と言うことで、約数の個数とそれらの和の求め方を頭に入れておくと便利です。

中学生でも解ける東大大学院入試問題(18)

2014-10-21 12:15:49 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

細かい雨が降ったり止んだりしていますが、これから降水確率は下がるようです。しかし、明日も雨で、風向きが南から北に変わり寒くなるようです。風邪など引かぬよう気を付けてください。

今回は、平成23年度東大大学院工学系研究科システム創成学入試問題を取り上げます。

問題は、
「nは任意の正の整数とする。n^100を10進数で表したとき、取り得る一の位の数字をすべて求めよ。」(n^100 はnの100乗を表します)
というものです。

この問題は、一昨日紹介した平成22年度同入試問題の「n^321-1が10の整数倍となるような1000以下の正の整数の個数を求めよ。」と同類のもので、そこで記したように、累乗数の余りや下位桁の数を求める問題に対しては、累乗数の余りが循環することを利用するのが解法テクニックになります。

それでは早速取り掛かりましょう。まず、
n=10m+r (m≧0、0≦r≦9、m、rは整数)
と表します。

すると、
n^100=(10m+r)^100
となり、右辺を二項展開すると、
(10m+r)^100=100C100・(10m)^100+100C99・(10m)^99・r+100C98・(10m)^98・r^2+・・・+100C1・(10m)・r^99+100C0・r^100
となります。

ここで、aCb の記号は高校の「組み合わせ」で勉強するもので、二項展開の係数になるので二項係数とも呼ばれ、
aCb=a!/(b!(a-b)!)
を表します。

ところが、ここでは、この二項係数が重要なわけではなく、上記の二項展開式の右辺の最後の項以外は、10の因数を持つ、つまり、一の位の数字には関係ないということを示したいだけです。

例えば、
(10m+r)^100=(10m+r)(10m+r)^99
=10m(10m+r)^99+r(10m+r)^99
と変形すると、右辺の第1項は10の倍数なので、左辺を10で割った余りは、右辺の第2項を10で割った余りに等しくなり、さらに、(10m+r)^99を変形すると、
r(10m+r)^99=r(10m+r)(10m+r)^98
=r・10m(10m+r)^98+r^2(10m+r)^98
となり、右辺の第1項は10の倍数なので、左辺を10で割った余りは、右辺の第2項を10で割った余りと等しくなります。これを続けていくと、(10m+r)^100を10で割った余りは、r^100を10で割った余りと等しくなることが判ります。

以上をまとめると、「n^100の一の位の数は、n=10m+r(m≧0、0≦r≦9、m、rは整数)としたとき、r^100の一の位の数と等しい」ということです。

これで簡単になりました。ここで、前回使った表を再掲します。


▲r^kを10で割ったときの余り

表で判るように、rを10で割った余りは、r^5、r^9を10で割った余りと等しく、かつ、その性質は循環しているので、rを10で割った余りは、r^(4q+1)(q≧0、qは整数)を10で割った余りと等しくなります。

つまり、
r^100=r^(4・24+1)・r^3
なので、r^100を10で割った余りは、r・r^3=r^4を10で割った余りと等しいことになります。

そこで、上記の表のr^4を見ると、左から「0、1、6、1、6、5、6、1、6、1」となっていて、これからn^100の取り得る一の位の数字は、「0、1、5、6」となります。

以上を合同式で表すと、
n^100≡(n^5)^20
≡n^20
≡(n^5)^4
   ≡n^4(mod10)
となります。

繰り返しになりますが、累乗数の余りや下位桁の数を求める問題に対しては、累乗数の余りが循環する性質を利用することをしっかり覚えておきましょう。

NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」-文禄の役-

2014-10-20 13:35:28 | 学習塾塾長の日記
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

日本列島を覆っていた大きな高気圧も東に移動してしまい、今日から天気は下り坂です。明後日、明々後日と雨模様ですが、金曜日には回復するようです。

さて、昨夜のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」は文禄の役のでした。文禄元年(1592年)3月の朝鮮との最終交渉が決裂し、一番隊の小西行長軍が釜山を攻撃します。その後、豊臣勢は破竹の進撃で5月2日(紀州徳川家文書、鍋島家文書)に高麗の都漢城を攻略します。

さらに小西軍は進軍し、6月15日には平壌を制圧します。そして、7月15日には明軍を撃破し、明との和平交渉を進めるのですが、文禄2年の1月に明軍によって平壌を奪回され、小西軍は長政軍の陣に逃げ込みます。その後、宇喜田秀家軍が明軍を押し返すなどあり、その後本格的な和平交渉に入ります。

しかし、この和平交渉は日明両方の交渉担当者が画策したもので、秀吉は明が降伏したと思い、明は秀吉が降伏したと思っていました。それが露見するのは、文禄5年9月1日に秀吉が明の使節に謁見したときで、激怒した秀吉は再度朝鮮に出兵することになります。

黒田家譜は、この文禄の役のことについて多くの紙面を費やしていて、官兵衛が秀吉に叱責された原因について、「其後孝高は太閤へ御意を伺ふ事有とて、朝鮮より帰り給ふ所に、三奉行彼囲碁の時対面なかりし事を恨みて太閤へ様々讒しければ、太閤大に怒り給ひ、是より孝高をうとんぜらる。」

これで黒田家と三成との対立は決定的になります。しかし、三成は長政を取り込もうと、「此後如水長政と石田三成と弥中悪かりしが、石田が謀に後日乱を起さん時の助にせんとやおもひけん、長政我と和睦したまはゞ、太閤に申て、豊後の国を取て参らすべしとひそかにいひ通じける。」とあるのですが、これはちょっと嘘くさいですね。

いずれにしても、秀吉に遠ざけられた官兵衛ですが、文禄4年8月21日には、秀吉から播州揖東郡大田庄、上岡庄に1970石余りの領地を貰っているので、秀吉の勘気も早めに解けたようです。

さて、来週は官兵衛の窮地からの脱出と関白秀次の進退を中心にストーリーが展開します。乞うご期待。

中学生でも解ける東大大学院入試問題(17)

2014-10-19 10:34:50 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

毎日良い天気が続きます。天気図では大きな高気圧が日本列島をすっぽり覆っていて全国的に晴天で行楽日和です。

今回は平成22年度東大大学院工学系研究科システム創成学入試問題を取り上げます。

「n^321-1 が10の整数倍となるような1000以下の正の整数nの個数を求めよ」(n^321はnの321乗を表します)

問題文が短くて見通しの良い問題です。n^321-1が10の倍数になるということは、n^321の一の位の数が1ということで、これはn^321を10で割った余りが1になるということです。

ところが、n^321を10で割ったときの余りを調べると言っても、0<n≦1000、つまり、1000通りの場合について、かつ、それの321乗を計算するのは骨が折れるどころの話ではありません。そこで、少しでも計算量を少なくすることを考えなければなりません。

まず、1000通りのnについてですが、n^321を10で割ったときの余りを調べればよいのですから、nの一の位だけを考えればよいということで、これで1000通りの計算から10通りに減らすことができます。

さらに、ある数 a^b を p で割った余りが周期的に繰り返すことを思い出せば、n^321の指数を小さい値にすることができ、計算も現実的になりそうです。

と言うことで、n=10m+r (m≧0、0≦r≦9、m、rは整数) として、nの一の位の数 r について、 r^k  (とりあえずkの範囲を1≦k≦9、kは整数として、これで周期性が見つかると良いのですが) を10で割った余りの調べてみましょう。その結果を表に示します。


▲rのk乗を10で割った余り

この表に赤字で記した r と r^5、 r^9 は同じになっていて周期性があることが判ります。つまり、 r^(4q+1)  (q≧0、qは整数) を10で割った余りは等しくなるということです。

これで準備完了なので仕上げに取り掛かりましょう。

まず、321=4×80+1 なので、n^321を10で割った余りは、nを10で割った余りと等しくなります。したがって、n^321-1が10で割り切れるのは、r=1の場合です。

そこで、n=10m+1 (m≧0、mは整数) とすると、0<n≦1000から、
0<10m+1≦1000
-1<10m≦999
ー1/10<m≦999/10
より、
0≦m≦99
となり、nの個数は100個となります。

最後のところを合同式で表すと、
n^321-1≡0(mod10)
n^321≡1(mod10)
(n^5)^64・n≡n^64・n
≡n^65
≡(n^5)^13
≡n^13
≡(n^5)^2・n^3
≡n^2・n^3
≡n^5
≡n(mod10)
より、
n≡1(mod10)
したがって、
n=10m+1 (m≧0、mは整数)
となります。

累乗数の余りや下位桁の数を求める問題の場合、それらの解法のテクニックは、累乗数の余りが必ず循環することです。しっかり覚えておきましょう。

「世界の歴史6-隋唐帝国と古代朝鮮-」

2014-10-18 12:04:19 | 学習塾塾長の日記
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

近くのスーパーマーケットの前で野菜を100円で売っていて、天気が良いので人出も多く、とても繁盛していました。

20代の頃から同時に何冊かの本を読む習慣がついてしまって、昨夜、小説を読み終わったので、それに代わる本を探したところ、中央公論社の「世界の歴史」シリーズを見つけました。

これは全30巻のシリーズですが、本棚の奥にあったのは数冊で(他のものは家のどこかにあるのか購入していないのか判りません)、そのなかから第6巻「隋唐帝国と古代朝鮮」を選び読み始めました。

そこでいきなり驚いたのが、1871年に岩倉具視を全権大使とする岩倉使節団に津田塾大学の津田梅子など5人の女子留学生がいたこと、さらに、日本からの最初の海外留学生は588年に戒律を学ぶため朝鮮半島南西部の百済に派遣された善信尼ら5人の尼だったということです。

これらのエピソードは、遣隋使を派遣した当時の指導者たち(聖徳太子など)の憧れのモデルが隋王朝の国家体制と仏教文化だったように、明治政府のリーダーたちが憧れの目標としたのがアメリカやヨーロッパ諸国の近代文明だったことと全く軌を一にするという文脈のなかに出てくるのですが、昔から女性も積極的に海外留学していたことに驚きました。

「世界の歴史」シリーズには、いろいろ知らないことが書いてありそうなので楽しみです。面白い話を見つけたら紹介します。

少し難しい整数不定方程式(続)-易しい問題です-

2014-10-17 12:46:25 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

揚子江気団の高気圧が西日本を覆って、等圧線の間隔も広く、見るからに穏やかそうな天気図です。来週の半ばまで良い天気が続くようです。

先日、Terence Tao教授の “solving mathematical problems” からモジュラー算術の問題を紹介しましたが、今回はその問題の後にある練習問題を紹介します。

問題は、
「n^3+100 が n+10 で割り切れるような最大の正の整数nを求めよ。(ヒント:(modn+10)を使え。n≡-10(modn+10)からnを消去する)」(n^3 はnの3乗を表します)
です。

ちょっととっつきにくい問題ですが、有り難いことにヒントがついているので(答えはないのですが)、これを手掛かりに進めていきましょう。

初めに問題のなかの2つの式を合同式で表しましょう。

n^3+100≡0(modn+10)   (1)
n+10≡0(modn+10)     (2)

次にヒントにしたがって、(1)と(2)からnを消去します。そのため(2)を変形して、

n≡ー10(modn+10)      (3)

(3)の両辺を3乗して、
n^3≡-1000(modn+10)   (4)

とします。そこで、(4)を(1)に代入して、

-1000+100≡0(modn+10)
-900≡0(modn+10)
900≡0(modn+10)      (5)
とnの消去ができました。

(5)の意味を考えてみると、900を n+10 で割ると余りが0になる、つまり、n+10 は900の約数ということで、それらの約数で最大のものは、
n+10=900
なので、
n=890
となります。

検算してみると、
890^3+100=704969100
890+10=900
から、
704969100÷900=783299
と確かに、n=890のとき、n^3+100 は、n+10 で割り切れました。

次に、これを合同式を使わないで解いてみましょう。

実際に、n^3+100 を n+10で割ってみると、
n~3+100=(n^2-10n+100)(n+10)-900
となります。

ここで、右辺の第1項目は、n+10 を因数としてもつので、第2項目の-900が n+10 を因数にもてば、n^3+100 が n+10 で割り切れることになります。

つまり、
-900=(n+10)k  (kは整数)  (6)
ということで(これは(5)と同じですね)、(6)を満たす最も大きいnは、k=-1のとき、n+10=900、すなわち、n=890 となります。

合同式(モジュラー算術)を使うか、整式の除法を使うか、好みの問題ですが、両方使えるようにしておくと便利でしょう。