万葉集を読んでいると、万葉の頃の別れの仕草は袖(そで)振りというようです。
「白波の
寄そる浜辺に
別れなば
いともすべなみ
八度(やたび)袖振る」
(大舎人部祢麻呂・おおとねりべのねまろ)
白い波が寄せる浜辺で別れてしまったら、もうどうしようもない。
だから、何度も、何度も、何度も、何度も袖を振るのです。
栃木県足利市の大舎人という人が、防人(さきもり)として九州に派遣されて旅に出る途中に詠んだ歌。
きっと恋しい人と、いつ会えるか分からない
別れの歌なのでしょう。
万葉の頃の袖は、手よりも長い筒袖でした。
「袖を振る」とは、人の魂を鎮(しず)めたり、親しい人に自分の気持ちを伝えることができると信じられていたようです。
袖振り合う仲というのでしょうか。
愛してるよ!
の気持ちが込められて
いたのでしょうね。
古代の袖振り、現代の手を振る。
どちらにも気持ちが込められているのです。