私は深田萌絵さんの動画は逐一見てるわけではないが、たまたま見た動画でまた変なことを言ってたので軽く考察した。
https://web.archive.org/web/20210613194748/https://www.youtube.com/watch?v=lV5oiSVrgrs
中国のある論文を取り上げて、これは軍事研究に違いないとして、次のように言っている。
(18分付近)「どう見ても、これ軍事研究なんですよね。750℃まで温度を上げて走るクルマとかありませんから、どう考えても宇宙航空あるいはミサイルの技術なんですよ。」
この発言の周辺を考察するが、結論を書くと「SOFC/固体酸化物形燃料電池」の動作温度「750℃」が「すごい温度だ、軍事技術に違いない!ミサイルの研究に違いない!」と一人で勝手に暴走してるように見える。
1. クルマと750℃
- 自動車エンジンの燃焼温度は2,000-2,500℃
- 日産GT-Rの排気管(エキゾーストマニホールド)の温度は1,000℃以上
2. 軍事用断熱素材(ICBM弾頭保護)
- ICBM弾頭の大気圏再突入時の温度は7千℃
- 「はやぶさ2」帰還カプセルの大気圏再突入時の温度は1万℃
- 深田さんがいう「750℃」とは1桁違う
3. SOFC/固体酸化物形燃料電池
- SOFCの動作温度は通常700~1000℃
- SOFCの研究開発は日本が先行しているが、中国も後を追っている
4. SOFCは既に実用化された民生用技術
- 「エネファーム」として販売中
話がつい脱線気味になっているが、要するにクルマのガソリンエンジンの場合、燃焼温度は2,000-2,500℃付近、高性能な日産GT-Rの場合なら排気管(エキゾーストマニホールド)で1,000℃以上の温度になる。レース用のエンジンでも同じく排気管(エキゾーストマニホールド)で1,000℃以上は普通、という話。
つまり、750℃の取り扱いなんて軍事技術でもなんでもない。その辺の駐車場にある工業製品(自動車)で対応できている。
深田萌絵さん、最新の「橋下徹参戦〜」という動画の18分付近で「750℃という温度まで上げて走るクルマはありませんから…」とか言ってるけど、750℃くらい普通だぞ。GT-Rの排気温度なんて1000℃以上だ。そのくらいまでなら金属でカバーできる。GT-R注意事項 / 日産https://t.co/LWffzUV8ZM pic.twitter.com/C1LcUDs9bh
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) June 12, 2021
では、ここで SuperGT BRZ 用エンジンをテストベンチでぶん回してる動画を見てみましょう。排気周辺が赤く発光してますね。これで1,000℃くらいかな。プラグの一部とか除いてエンジンは金属だからね。SUBARU BRZ SUPER GT ENGINE BENCH TEST FUJI【ANYTIME with STI】 https://t.co/le9583dVbi
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) June 12, 2021
Wikiからコピペ。このカラーチャートで見ると、エンジンぶん回してるときは排気温度1,000℃超えで、排気管=エキゾーストマニホールドの内部もほぼ同等、外側表面温度が800-900℃とかかなぁ。外気との接触で急激に温度下がるので。高温発光https://t.co/nb6fpobN15 pic.twitter.com/X6i0ksaShO
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) June 12, 2021
大昔はどうだったか知らんけど、今ではエンジンの燃焼温度2,000-2,500℃だというのに、それに耐えるスパークプラグも中国製がある。上部の白い部分がセラミック。中国スパークプラグ部品メーカー、スパークプラグ部品メーカーとサプライヤーにhttps://t.co/o7jc75DPq8https://t.co/b8XTmzIvem pic.twitter.com/2MBXT8KPvb
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軍事用の断熱素材というと、例えばICBM(大陸間弾道ミサイル)の弾頭保護用が思い浮かぶ。
ICBMは弾頭を一旦大気圏外まで打ち上げて、敵地に向かって大気圏内に再突入する。その際に、弾頭が大気を圧縮し、超高温になる。その高温で弾頭が破壊されてしまえば武器として役に立たない。そこで、断熱素材が必要となる。
その温度は、7千℃とも言われるし、武器ではないが「はやぶさ2」帰還カプセルの大気圏再突入時の温度は1万℃くらいではないかという。
このくらいの温度を扱うのは軍事技術と言える。深田萌絵さんがいう 750℃とは1桁違う。
弾頭保護用の断熱材なんて中国にはかなり昔からあるはずで、北朝鮮だとまだかも(?)《射程1万キロの長距離ミサイルの場合、大気圏への再突入時には速度がマッハ24に達し、弾頭部分の温度は7000度を超える。》高水準のICBM技術持つ北朝鮮 大気圏再突入が鍵https://t.co/5wS0jpIyNP
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一旦、まとめ。この箇所は盛大な誤り。その温度帯は平凡な民生技術領域。軍事用なら一桁違う。深田「どう見ても、軍事研究なんですよね。750℃まで温度まで上げて走るクルマはありませんから、どう考えても宇宙航空あるいはミサイルの技術なんですよ。」https://t.co/NcYZZFFZKg
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ICBMの弾頭保護用断熱材を中国がいつ獲得していたかというと、おそらく80年代くらいではないだろうか。
https://ja.wikipedia.org/?curid=2662268
北朝鮮の場合は、この頃にその技術を獲得しつつありながらも、まだ失敗したというところか。
https://www.afpbb.com/articles/-/3137677
そもそも、深田萌絵さんが動画で取り上げてる中国の論文は「SOFC/固体酸化物形燃料電池」の話だと自分で書いている。
つまり、深田さんが動画で言ってる「750℃」は「SOFC/固体酸化物形燃料電池」の動作温度の話である。
現在知られている燃料電池の形態では最も高温(通常700~1000℃)で稼働し、単独の発電装置としては最も発電効率が良い(45~65%)。 電極、電解質含め発電素子中に液体が存在せず、全て固体で構成される。 電極間のイオン伝導は水素イオンでなく酸化物イオン(O2-)である。 化学反応が高温で行われるため、白金などの高価な触媒が不要である。 高温で稼働し水素以外に一酸化炭素も燃料にできることから脱硫処理は必要であるが簡単な水蒸気改質処理(一酸化炭素の除去が不要で、燃料中に若干の未改質ガスを含む改質)により都市ガスや天然ガスなどを装置内で改質しながら発電に用いることも可能である。また排熱の温度が高いため、排気ガスから直接タービンなどで二次的に発電したり、コジェネーションシステムとして更に熱効率を上げることができる。
https://ja.wikipedia.org/?curid=3096568
この「SOFC/固体酸化物形燃料電池」については知財(特許)で見ると日本が先行してるようだが、中国も研究開発している。その動向は、次のツイートにあるNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)のレポートを見てもらえば良い。
それで、中国も「SOFC/固体酸化物形燃料電池」の研究開発をしているから、だからどうだというのか。
SOFCが何かも理解せずに、「750℃」という温度が「すごい温度だ、軍事技術に違いない!」と一人で勝手に暴走してるように見える。
SOFCの研究開発は、知財で見ると日本が先行して米欧が追随、中国は遅れてついてきてる気配。それで、750℃とか600℃って、このSOFCの動作温度の話でしょう。ミサイルとか関係ないんだけど。固体酸化物形燃料電池(SOFC)技術〔前編〕SOFC開発競争の動向を知財から読むhttps://t.co/4BVerqcg7E pic.twitter.com/uxGsvGkOqy
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) June 12, 2021
まとめ。深田萌絵さんは、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell/固体酸化物形燃料電池)に関する中国の論文を拾ってきて、なぜか動作温度の「750℃」にばかり注目して、「これはミサイルとかの軍事用の研究に違いない!」って勝手に暴走してるように見えるんですけど。追加説明 or 釈明希望。 pic.twitter.com/qIBMKfKv8D
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) June 12, 2021
また、識者の方から補足説明をいただきました。
「軍事用の研究」とは全く無関係。ペロブスカイト型結晶構造を持つ酸化物セラミックを電解質に使用。電解質中を移動する酸素イオンを利用するので燃えるガスなら何でもOK。但しイオンが動ける高温が必要。高温に加熱するのに時間とエネルギーが必要なので一度動作したら連続使用が基本。
— 東風吹葉~~Sea Breeze from East (@SeaBreezefromF1) June 12, 2021
「SOFC/固体酸化物形燃料電池」は「エネファーム」として既に実用化され販売されている。したがって、軍事技術ではなく民生用の技術。もう誰でも買える。
(中略)
そして、4年間に及ぶ実証研究の成果を基に、家庭用SOFCコジェネレーションシステム「エネファームtype S」を開発。2012年4月27日、販売開始に至りました。
https://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201215osakagas/index.html
https://www.osakagas.co.jp/company/efforts/rd/topic/1289546_45128.html
とはいえ、SOFCも燃料電池の一種なので、ノートPCやスマホのバッテリーとして使われている「リチウムイオン電池」が海自潜水艦に採用されたように、SOFCがいずれ軍用として採用されることもあるかもしれない。
ただし、繰り返すがSOFCは純軍事用の技術ではなく、民生用の技術である。
https://www.sankei.com/photo/story/news/210324/sty2103240008-n1.html
いずれにしても、日本ではエネファームとして既に販売中のSOFCの技術に登場する750℃という温度だけを見て「軍事研究に違いない、ミサイル研究に違いない」と決めつける深田萌絵さんの妄想力は恐ろしい。
これに煽動される信者の皆さんも、一旦立ち止まってよく調べた方がいいと思う。
2024.01.20 元動画のアーカイブを追記
2021.06.12 新規
深田事件の考察一覧
https://blog.goo.ne.jp/zf-phantom/e/94aa92677310e83bfae5d3ce982ffeff
深田萌絵事件リンク集
https://blog.goo.ne.jp/zf-phantom/e/bd2c799f63c376acf2054713fbc93cdc
良ければ記事内にリンクを入れてください。
橋下徹参戦!足立康史が擁護する背乗り解放軍スパイの軍事研究とは!? - YouTube
https://web.archive.org/web/20210613194748/https://www.youtube.com/watch?v=lV5oiSVrgrs