goo blog サービス終了のお知らせ 

ZF

メインはtwitterで、ここは書庫。
twitter ID : @ZF_phantom

新コロ・日本とスペインの比較

2020年08月16日 | 震災・災害
新規投稿 2020.08.16



新型コロナウイルス感染症の、春の第1波分について、日本とスペインを比較考察してみた。




(クリックで拡大)


《グラフの簡単な説明》
・起点を揃えるために両国の累積確定陽性者数が約270人のところで時間軸を合わせた。
・左軸は陽性者数または死者数の人数。右軸はスペイン/日本での倍率。ただし、右軸の倍率には両国の人口比(2.69倍)も加味してある。



《わかったこと》

(1) 陽性者数でいうと、感染爆発の立ち上がりで両国に70倍の差がついた。その後、日本の方がダラダラと長く増え続けたので、40倍差で落ち着いた。

(2) 死者数でいうと、立ち上がりで170倍差、その後80倍差で落ち着いた。ちなみに、両国の致死率は5月末時点でちょうど2倍差。

(3) 日本の日別確定陽性者数のピークから15日遡ると、3/31。感染者数急増を受けて、政府と有識者がバタバタし始めた頃。(=結果論で「4/7の緊急事態宣言は不要だった」と主張する一派の論拠にされた)

(4) スペインの日別確定陽性者数のピークから15日遡ると、3/6。この時点では3/14ロックダウン発令前で、日別陽性者が7日平均で750人に近くなっていたが、累積死者数はまだ数人。従って、スペインで感染拡大を止めたのは、ロックダウンでもなければ死者数急増でもない。「新規陽性者数1,500人/日」(←7日平均でなく、記録ベース)という報道ではなかっただろうか。(ただし、ピーク越え後の感染再拡大を阻止したのはロックダウンであろう。それは日本も同じ。)

(5) 陽性者増加率で比較すると、変動が大きいので確定的には言えないが、1以上の区間の平均を取ると日本が2.3倍/10日(38日間継続)、スペイン6.6倍/10日(31日間継続)となる。ここは印象よりも差が少なかった。ちなみに、(Sp 6.6^3.1)/(日 2.3^3.8)=14.65。つまり、人口比を無視して立ち上がりだけ比較すればスペインは日本の14.65倍。

(6) 前項の14.65倍に人口比2.69倍を加味すると、39倍。(1)項の70倍との違いは、感染拡大阻止の初動の差。市民が行動自粛に移ったのは、日本が新規陽性200人弱/日くらい、スペインは新規陽性1,500人/日くらい。



《まとめ》

(A) 感染拡大阻止の初動はロックダウン(または緊急事態宣言)ではなく、報道を通じた市民の行動変容であったと思われる。(詳細を省くが、これはイタリアも同じ)

(B) 初動での感染拡大阻止に重要なのは早期の行動変容。日本とスペインの比較で言えば、心配性の日本人の気質が有利に作用した可能性。

(C) 前記(5)項の、日本2.3倍/10日(38日間継続)、スペイン6.6倍/10日(31日間継続)の差が両国民の生活習慣または人種の差に起因する差分。漠然とした印象よりは小さい。

(D) 5月末時点での両国の致死率は、日本が5.29%、スペインが10.60%。ちょうど2倍。その理由については医療関係者に任せる。



《感想》

…というわけで、日本とスペインを死亡率(死者数/人口)で見ると70倍も違うのだけど、その要因を分解していくと、妙な珍説をひねり出さなくても勝利の方程式が見えてくるのである。

だけど、今回の7月の波については、経済的事情もあるのはわかるのだが、勝利の要因のひとつである前記(B)項を自ら放棄したのはちと残念。



以上。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新コロシミュレーションと対策案

2020年07月31日 | 震災・災害
最終更新 2020.08.02



現在(2020.08.02)までの国内における新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況と非常によく整合する数値モデルができたので、これを用いてシミュレーションし、対策案を考える。


数値モデルによるシミュレーション


現在までの実績推移と、数値モデルによるシミュレーションを重ね合わせたのが次のグラフである。クリックで拡大表示する。


(クリックで拡大)


大枠の考え方としては、次のとおりである。

1)経済のon/offという捉え方で、offが緊急事態宣言相当、onが解除または通常状態とする。この時の実効再生産数Rtは、4月の波における感染拡大期の平均的な値Rt=1.42および収束期のRt=0.73を適用する。

2)厚労省等の「確定陽性者数」は用いず、架空の「真の感染者数」を用いる。その理由は、「確定陽性者数」は検査の網羅性に依存するからである。つまり、無症状者をどれだけ積極的に捕捉しにいくかで「真の感染者数」は同じでも「確定陽性者数」は変化してしまう。
ちなみに、4月の波における厚労省発表での「PCR検査陽性者」に占める「入院治療を要する者」の割合は、8割以上あるいはほとんど、といったところだが、7月の波においては25〜50%程度といったところである。

3)前項までの考え方に基づき、まずは適当に「真の新規感染者数」をおいて(結果的にそれは3/1時点で580人となった)、そこに適当に入院率、重症化率、致死率を当てはめて試行錯誤し、実績推移と整合するパラメータの組み合わせを探り出した。ただし、「真の感染者数」そのものはグラフ上には表示していない。なお、細かい条件は図の下部に書いた。

4)以下の記事に合わせて、致死率を0.6%とする。(ここは8/2改版)

新型コロナの致死率、解明に近づく研究者たち
https://jp.wsj.com/articles/SB10636974917111804565304586520872455773108
- 大半の研究では致死率0.5~1.0%
- ロンドン大学ティモシー・ラッセル氏らはDP号と中国のデータを研究し、致死率を約0.6%と算出
- インペリアル・カレッジ・ロンドンのルーシー・オケル氏ら、中国の感染致死率は0.66%と推定



そこでわかったのは次のような点である。

① 4月の波の感染拡大期には増加率は変動していたが、上図のようにマクロに見ればRt=1.42で安定的に感染拡大していたように見える。そして、今回の7月の波においてもそれは同じである。

② 6月を境に、重症化率と致死率が大きく変化している。具体的には、重症化率が1/4、致死率が1/10に低下したとすると、実績推移とよく整合する。これが巷で言われている「弱毒化」の正体であろうと思われる。その理由については専門家に委ねることとし、ここでは触れない。(上記4項の致死率0.6%は、6月以前の値とする)


なお、上図のグラフにおいては「8月3日から末日まで自粛期間」=off、とおいた。東京都の方針を全国に拡大した、という想定での作図である。



シミュレーションに基づく対策案


まず最初は、なんの対策もしないとすれば(政府も自治体も市民も)どうなるか。


(クリックで拡大)

現状では、重症者数と死者数は抑えられているように見えるが、タイムラグの後に急増することが見込まれる。実際には前項の対数グラフでわかるようにRt=1.42(=増加率 2倍/10日)での指数関数的増加が既に始まっている。

また、図中に示してあるが、入院者数の数倍いるであろう「無症状+軽い軽症者」(=自発的に病院に来ない感染者)の爆発的増加を放置していては、感染拡大は止められないと思われる。ここを減らす対策が必要。



次は対策としてのA案である。3週間のoff(緊急事態宣言相当)と2週間のon(解除相当)を反復していくと、感染者数や入院者数等を漸減し、収束できる。


(クリックで拡大)

私のオススメはこのA案である。図中にも書いたように、最初から決まったスケジュールで実施されるならば、経済活動とも親和性が高い。いつ始まるかわからず、どこまで延長されるかも読みづらい「自粛要請」では事業の計画が立てられない。それは事業者にとっても客にとっても同じであろう。

また、入院者数の数倍いるはずの「無症状+軽い軽症者」の大半がoffの間に感染力を失うことが期待できる。

対策を打つなら、病床逼迫など追い詰められてからでは遅すぎる。相手は指数関数的爆発をする感染症であり、また対処してから反応するまで(入院者数なら感染から3〜4週間程度)のタイムラグがあり、指標を見ながらの逐次対処よりも定常的反復対処の方が適している。

このA案のような反復対処であれば、指標は微増あるいは漸減に抑えられ、追加で別の処置を必要とするとしても実施までの時間的余裕を得られる。



次のB案は、長めのoff(緊急事態宣言相当)一発で収めようとする場合である。


(クリックで拡大)

水際対策、クラスター対策、接触アプリの活用等、併用する手段は他にもあるとは思うが、少なくとも数値モデル上では長めのoff一発では制圧できない。10週間にもわたる(現実的には不可能であろう)長いoffの後ですら、再び感染拡大するというのがこのシミュレーション結果である。したがって、一発で収めようという発想は捨てた方が良い。



次のC案は少し変則的で、まず4週間のoff(東京都が8月いっぱいを自粛期間にする方針と整合)を実施した後に、2週間毎のonとoffを反復するパターンである。


(クリックで拡大)

見てわかるように、4週off→2週毎on/offでは収束できない。しかし、入院者数その他の指標を見ながら適宜4週offを挟んで行けば、長期にわたって安定的制御が可能である。いずれはワクチン等の医学的大成果を期待できるとすれば、このC案もありだと考える。



補足事項


(1) グラフの下部に入院率/重症化率/致死率等の数字を挙げてあるが、これは実績推移と整合する値を求めたものであって医学的に判明した(あるいは、する)数字とは必ずしも一致しない。例えば、一般には、致死率=死者数/確定陽性者総数であるが、この考察での致死率とは架空の「真の感染者数」を分母にしたものである。「真の感染者数」は確定陽性者総数よりずっと多い。

(2) 重症者は30日で退院、としてあるが、医学的実績でいえば「人工呼吸器装着から離脱まで9日、死亡までは10日」(EARL先生)だそうである。なのになぜ30日にしているかというと、実績推移に合致させるためである。恐らくは、実際の重症者は重症化までの期間にもばらつきがあるはずだが、私のシミュレーションでは一律のタイムラグにしてあるため。したがって、ばらつきも考慮するなら、重症者の入院期間(重症者扱いの期間)を実績と同じく10日にした上で、重症化率を3倍にするともっと実態に近くなるのだろうと今は勝手に想像している。

(3) 8/2の更新で、6/1以前の致死率を0.6%(WSJ)とした。その関係で、「真の感染者数」に対する入院率は9%とした。したがって、未捕捉の感染者は入院者数の約10倍いるということになる。ちなみに、6月末での統計上の致死率は5.2%(国内)であった。これはつまり、致死率0.6%(WSJ)との比率で考えると、6月以前は「真の感染者数」の約11.5%しか捕捉できていなかったことになる。なお、4月の感染拡大期において、厚労省発表での「PCR検査陽性者」に占める「入院治療を要する者」の割合は、8割以上あるいはほとんど、といったところなので、「真の感染者数の11.5%を捕捉し、9%が入院」であれば、話は整合的である。

(4) 「真の感染者数」に対する入院率/重症化率/致死率等の数字に関する妥当性については、異論もあるとは思うが、この考察においてはそこは本質ではない。実績推移と整合するパラメータの組み合わせが見つかり、その結果、ある程度未来予測できるようになったことが本質である。必要だったパラメータは極めてシンプルである。「感染拡大期:Rt=1.42」「感染収束期:Rt=0.73」「入院率/重症化率/致死率の比率」「6/1以降は重症化率が1/4、致死率が1/10に低下」「on/off」、これだけである。
ちなみに、「入院率/重症化率/致死率」は比率を保ったまま上下する分には同じシミュレーション結果が得られる。その場合、「無症状+軽い軽症者」が反比例して上下することになる。ただし、「致死率0.6%(WSJ)」が事実であれば、もはやパラメータを動かす余地はあまりないかもしれない。


何か気付いたら、またあとで書き足す。





以上。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新型コロナ関連データ

2020年03月22日 | 震災・災害
最終更新 2020.04.17



私は医療関係者ではないので余計なことは言わないようにしつつ、新型コロナウイルス感染症について数値分析した結果などを淡々と貼る。
(逐次アップデート予定)


1. 数値分析レポート
2. イランの数字はウソ
3. グラフから感染者数を推測する方法
4. 残存推測感染者数の算出方法
5. 満床予想・簡易シミュレーション
6. 致死率は 1.4% くらい?
7. リアルタイムデータ
8. 公式情報




1. 数値分析レポート


数値分析の結果を、以下のようなツイートでほぼ毎日レポートしている。(下記リンクは逐次更新予定)








上記のツイートは、主に次のような狙いに基づいている。


1)死者数と致死率に着目した数値分析

PCR検査等に基づく感染者数統計値は各国の検査実施の網羅性などに依存するので、『死者数』および『DP号致死率』に基づいて感染者数の推測を行なっている。DP号(ダイヤモンドプリンセス号)の致死率に着目する理由は、関係者が全員検査されていて、無症状感染者の取りこぼしなどがなさそうに見えるからである。また、乗客2,666名は比較的高齢だが乗員1,045名は比較的若いという話もあり、一般社会との年齢構成とも極端には違わないと思われる。


2)国内状況の数値的把握

当初の武漢、あるいはイタリア等欧州の惨状を踏まえ、国内の「医療崩壊」が懸念されている。そこで、安倍首相が記者会見で述べた病床数5,000を母数として、『国内病床使用率』を日々算出することで、医療崩壊危機にどれほど近いのか否かの参考にしたいと考えた。


3)各国の死者数推移(デスカーブ)

「惨状」の度合いは、各国の死者数とその伸びを定量化して見るのが良いと思われる。また、そのグラフ上で延長した近似線を見れば、数日後くらいのレンジでの死者数予測や真の感染者数の大まかな推測もつけられる。




2. イランの数字はウソ


以前からイランの数字の推移は整いすぎていて怪しいと感じていたが、分析したところやはりウソであると判明した。



上図のように死者数100〜1,000人越えの区間で、比較のためにイランとイタリアの推移を抜き出し、三次方程式でそれぞれの近似曲線を作り(画像左)、これとの差分を比較した(画像右)。

見てわかるように、イタリアは近似曲線と日々のブレがあるが、イランにはない。イランにあるのは私が作った近似曲線との微妙なズレのみである。これは現場から上がってきた実数ではなく数式などによって創作された数字としか思えない。従って、イランの本当の数字は混乱の極みで当局にも把握できないか、もしくは政治的理由などから偽造されているものと考えられる。




3. グラフから感染者数を推測する方法


冒頭で『PCR検査等に基づく感染者数統計値は各国の検査実施の網羅性などに依存する』と書いた。そのために、DP号致死率を「本当の致死率」と仮定して、「本当の感染者数」をツイートの表で算出している。

ところが、この試算方法には問題がある。それは、感染してから致死までにタイムラグがあることである。イタリアからは、発症してから致死まで8日間程度という情報も伝えられている。潜伏期間が5日間とも言われているから、感染から致死まで2週間程度というのが、典型的な推移にも思われる。

但し、EARL先生によれば国内においては『…判明してる範囲での発症から死亡まで平均日数は19日、中央値で18日でした』とのこと。ここは、各国の医療技術や混乱状況によって差が出るものと思われる。


問題というのは、現時点で見えている死亡者数は、実は2週間くらい前の感染者数に依拠しているということである。

感染拡大が穏やかであれば、それほど問題にはならないはずだが、爆発的感染期にはこの誤差は大きい。そこでスペインを例にして、以下の「デスカーブ」を用いて上記問題を回避しつつ、「本当の感染者数」を推測する方法を示す。




上図では、この時のスペインの死亡者数は1,381人である。そして、これまでの推移から、この先の推移が近似曲線で予測できる。これを用いる。

感染から致死まで2週間程度というのが典型的な推移かもしれないが、ここでは少し控えめに10日間のモノサシ(赤い線)を用いることとする。スペインの10日後の予測死亡者数は約1万人である。

DP号致死率は現時点では1.19%だが、中国の数字等も参照すると致死率1.4%という数字(次項に示す)も見えてきている。また、DP号関係者もまだ今後も亡くなる可能性もあるので、ここでは致死率1.5%と仮置きする。

但し、3/24時点でDP号致死率は1.49%に上昇した。


致死率1.5%で1万人が死亡する母数とは、計算上は67万人である。つまり、今この時点での(誰にも全容を把握できない)スペインの「本当の感染者数」は67万人程度ではないのか、という推測が成り立つ。

これが、上記のデスカーブを用いた推測方法である。


(この項の以下は3月29日に改版)

詳細は次項に記したが、3月26日版より『残存推測感染者数』というのを設けた。これは、死者数の推移から、現時点での感染者数を数式モデルで算出するものである。これを用いて3月22日時点のデータに戻してみると74万人と出た。

上述のように、デスカーブのグラフ上で線を引く方法では感染者数67万人と算出したわけだが、いずれの方法でもだいたい同じ数字が得られるようになった。



なお、厳密には、上述のデスカーブのグラフ上で線を引いて感染者数を算出する方法は累積であり、『残存推測感染者数』は次項で詳述するが、累積ではなく直近20日間以内の新しい感染者を試算するものである。ただし、スペインの場合は3月22日の20日前の2日時点ではまだ死者数ゼロであり、そこに誤差はない。




4. 残存推測感染者数の算出方法


ツイートでレポートしている表の『残存推測感染者数』の算出方法について示す。

基本的な考え方は次の通り。

1)公式データの「感染者数」は、各国のPCR検査等の網羅性に依存するから、参考にはなるものの「真の感染者数」を示しているわけではない。
2)新型コロナウイルス感染症の「真の致死率」がわかれば、「死者数」から「真の感染者数」がわかる。
3)「真の致死率」の代用として、関係者が全員検査されているはずの「DP号致死率」を用いる。

ここまでが、当初の「推測感染者数」の算出方法。

ここに、新たに次の考え方を追加適用する。

4)感染者は未来永劫感染者でいるわけではない。統計的には20日もすれば感染者ではなくなる。そこで、『残存推測感染者数』としては、20日前以前の数値は排除するものとする。これにより、例えば20日前以前に感染したが、本人も気づかずに無症状のまま自然治癒した場合なども対応できるようになる。(3月26日版より適用)



5)これまでの「推測感染者数」は、感染から致死までのタイムラグの問題を解決できていなかった。即ち、2週間くらい前の数字を見ていたことになり、その後の指数関数的増加を計算していなかった。今回はそのタイムラグ間の増加をなるべくカバーする。(3月28日版より適用)


具体的な計算方法は、下図を用いて説明する。



(目的)

・現在の「真の感染者数」C が知りたい。
・あるいは、上述の20日前以前数値排除ルールに基づき、20日前以後の感染者数増分D が知りたい。


(前提)

・各国政府が現時点で把握しているのは、確定陽性者数S、死者数Yなどである。Cは知る由もない。
・「真の致死率」が機能するのであれば、現在の死者数Yにより少し前の感染者数Bがわかる。「少し前」というのは各国で異なる。本記事3項冒頭で触れたが、イタリアだと13日前程度、国内では23日前程度。


(計算方法)

・「真の致死率」の代用にDP号致死率を用いて、死者数Yから少し前の真の感染者数Bを算出。同様にXからAを算出。「少し前」がいつなのかは問わない。
・「残存推測感染者数」=「20日前以後の感染者数増分D」だが、それは把握不可能である。そこで、感染者数A-Bの増分Eと、死者数X-Yの増加率Vを用いて、D=E×Vとする。
・確定陽性者数R-Sの増分Qが、残存している確定陽性者数である。
・「未捕捉感染者数」=D-Q であるが、便宜的に E×V-Q とする。(より正確には、死者数の増分も抜いて E×V-Q-(Y-X) である)
・「感染者捕捉率」=Q/D % であるが、便宜的に Q/E×V % とする。(より正確には、死者数の増分も加えて (Q+(Y-X))/E×V % である)

(補足1)本来はY-Bの時間差も吟味すべきだが、わからないので10日に固定する。即ち、「残存推測感染者数」は実際より控えめな数字(=数日前の数字)になる。

(補足2)増加率Vについては直近の変化率(加速方向か、減速方向か)を加味して計算している。



その結果、何がわかるのかを下のイメージ図を用いて説明する。



・今日までの死者数Yはわかっている。
・死者数Yから、「真の致死率」を用いて、少し前の「真の感染者数」Bがわかる。
・少し前の「真の感染者数」Bから、増加率Vを用いて、今日現在の「真の感染者数」Cがわかる。
・今日現在の「真の感染者数」Cから、「真の致死率」を用いれば、少し先の死者数Zがわかる。
・少し先の死者数Zは、デスカーブのグラフ上で近似曲線を引いて導き出したものと同じである。(=検算の関係)




5. 満床予想・簡易シミュレーション


(本項は4月1日に全面改訂)

下図の『満床予想・簡易シミュレーション』についての計算方法を説明する。



これは次の2つの情報から計算している。

1)死者増加率=前項の『増加率V』とほぼ同じである。但し、直近の変化率(加速方向か、減速方向か)は加味していない。
2)下図の厚労省発表値。



具体的な計算は以下の通り。

(a)『入院』=厚労省発表「入院治療を要する者」−「症状有無確認中」(上図では1,473-226=1,247)
  →「症状有無確認中」とは施設か在宅での経過観察中であり、まだ入院はしていないと解釈した。

(b)『重症』=「入院」の20%(上図では1,247×20%=249)
  →これは、有症状の20%が重症との臨床報告に基づく。(次項参照)

上記a,bの2項目を初期値とし、死者増加率を加算してグラフ化している。




6. 致死率は 1.4% くらい?


複数の話を総合すると、この感染症の致死率は1.4%付近にあるのではないかという推測が成り立つ。






理由は以下である。

1)全員検査したDP号感染者の半数は無症状。

2)忽那賢志先生解説による有症状者の臨床症状内訳(中国での有症状44,672人)

a) 81%が軽症(肺炎がない、もしくは軽度)
b) 14%が重症(呼吸困難、低酸素血症、24~48時間以内に肺炎像が肺面積の50%以上を占める)
c) 5%が最重症(呼吸不全、ショック、多臓器不全)、最重症のうち半分強の2.8%が死亡

総説 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) (中外医学社Online)
https://note.com/chugaiigaku/n/n8583a93b5a80



そして、ここにも死亡数として「1.4%」という数字があった。

また,PCR法による1099人の確定患者を米国胸部学会の市中肺炎のガイドラインに準じて重症,非重症に定義した論文によると,前者は173人,後者は926人で,死亡は15人(1.4%)だった。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察|日本医事新報社
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14278


「半数は無症状」の報告がアイスランドからも。

居住者に対する新型コロナ検査比率が世界で最も高いとするアイスランドでは、陽性反応が出た人の約半数は症状がないことが分かったという。

無症状の新型コロナ感染者、従来想定より多い可能性-封じ込め難しく
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-23/Q7MLE1T0AFB901





7. リアルタイムデータ


冒頭のツイートの数値分析で参照している主なサイトのリンクを並べる。


厚生労働省 報道発表資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/index.html


Coronavirus COVID-19 Global Cases by the Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at Johns Hopkins University (JHU)
https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6


COVID-19 CORONAVIRUS PANDEMIC / Worldometer
https://www.worldometers.info/coronavirus/


丁香医(中国)
https://ncov.dxy.cn/ncovh5/view/pneumonia


WHO Coronavirus disease (COVID-2019) situation reports
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/situation-reports/





8. 公式情報


本件では不安を煽るような情報が氾濫しているが、公式情報に基づいて冷静に行動したいものである。

新型コロナウイルス感染症に関連する関係省庁のお役立ち情報 | 首相官邸ホームページ
https://www.kantei.go.jp/jp/pages/coronavirus_info.html

新型コロナウイルス感染症について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html









備考


新しい知見が出てきたら本記事は随時修正するかもしれない。




以上。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

津波被災地の今

2020年01月11日 | 震災・災害


東日本大震災で津波被害に遭った女川町〜南三陸町を見てきたので写真を載せておきます。
復興工事の進捗状況を感じていただければ幸いです。



女川町


女川町では、津波から逃れるべく多くの人が病院があった高台に避難しましたが、この写真はその付近から撮りました。




次の写真は、その場所で震災から間もない時期に撮ったものです。津波で押し寄せた海水に浮いたのであろう自動車が3階建ての建物の屋上に取り残されているのが見えます。



震災前のこの地区には湾に近いところには漁業関係その他の商業施設などが、またそのすぐ近くまで民家が立ち並んでいました。今は、漁業関係の多くの施設が湾に面した別の場所に移り、住宅は1枚目の写真の右斜め後ろ方向の高台などに移転しました。


女川駅と役場はすっかり新しくなりました。1枚目の写真でいうと、左後方の位置になります。写真右側が女川駅、左奥が役場です。



新しくなった女川駅には温泉も同居してます。

女川温泉ゆぽっぽ
http://onagawa-yupoppo.com/



たまたま電車が来ていたので撮り鉄のように撮ってみました。



正確には電車ではありません。気動車と言ったらいいのでしょうか。ディーゼルエンジンで動くやつです。上に架線はありません。2両編成のワンマン車両でした。
冬に乗車する場合は、ドアの横のボタンを押してドアを開けてくださいね。寒いので開きっぱなしにはしておかないのです。


女川駅から出ると正面に新しい商店街=『シーパルピア女川』があります。その奥には海が見えています。



ここに飲食店、土産物屋、魚屋、それから工芸品などを扱う店や工房が並んでいます。

シーパルピア女川
http://onagawa-mirai.jp/


中央には写真に見えるように広いレンガ道がありますが、これは再び津波が来るような事態を想定し、女川駅などがある高台の方向に向かう避難路を示しているそうです。そういう意味では、この女川町は後述する南三陸町とは異なり、巨大な防潮堤などは作らずに海辺と共存する街づくりを選んだわけです。
ただし、前述のように住宅地は後背地の高台に移転しました。



漁港


これはとある小さな漁港の防潮堤工事を上から撮ったものです。



この場所の住所としては、宮城県石巻市雄勝町です。観光客が来るような場所ではないですね。震災直後は漁港復興は大規模な漁港に集中して、小さい漁港は優先度を下げるか捨てる、というような議論もちらっと見た気がしますが、近年の復興工事状況を見ると、小さな漁港も捨て置かず徹底的に防潮堤を造るつもりのようです。防潮堤の高さは…素人の目算で10mくらいとかでしょうか?

このような小規模の漁港の防潮堤工事は、あちこちで見られます。ほぼ完成したと思われる場所もあれば、まだまだ工事が続きそうな場所もあります。

ちなみに、雄勝町は私が幹線道路をクルマで走って見てる限りは、他と違って復興がちっとも始まらない地域でしたが、今年になってやっと名産品の硯(すずり)を扱う『雄勝硯伝統工芸館』(←通りすがりにちらっと見たので施設名は正確でないかも)の新築工事が始まっていたのを発見しました。(写真なし)



北上川河口付近


次の写真は、北上川の河口付近の堤防工事の様子です。



位置関係としては、写真の右側が太平洋。北上川が右後ろから太平洋に流れます。多数の小学生らが亡くなった大川小学校は、写真の右後ろ方向の対岸にあります。

左側の道路は下っています。もっとも低い位置は、おそらく海面とそれほど差がないと思いますが、そういう低い場所の堤防を今もあちこちで鋭意工事中です。
震災後、何年も定点観測のように同じようなコースを巡っていますが、その印象としては、人が住む街の復興工事はぼちぼち完成形が見えてきて、最近はこういう人口過疎エリアの堤防や、小さな漁港などが復興土木建設工事のメインになってきた感じがします。



南三陸町


南三陸町戸倉地区(役場などがある街の中心部からは南側)の防潮堤の工事の様子です。



高さは素人目算で12mくらいもあるのでしょうか。かなり高く感じました。南三陸町は湾の奥ということもあり、津波発生時には津波もかなり高くなるでしょうから、高さと強度が要求されるのでしょう。

写真の奥の方では重機が並び、工事はまだまだ続く気配でした。


次の写真は、南三陸町の元の中心部であった防災対策庁舎があった付近です。



写真の左側、地面に円形の何かが築かれようとしているその向こうに津波にのみこまれた防災対策庁舎の鉄骨が見えます。佐藤仁町長らは、津波の襲来時にこの防災対策庁舎の屋上のアンテナ支柱にしがみついて助かったとのことです。
写真右側が海側、左が内陸部の方向という位置関係です。

南三陸町防災対策庁舎
https://ja.wikipedia.org/?curid=2856251



上の写真の右側に見えているのは『南三陸さんさん商店街』です。震災直後の仮設商店街としては、もっと内陸部にあったのですが、盛り土の工事がひと段落した2017年にこの場所に移ったようです。

南三陸さんさん商店街
https://www.sansan-minamisanriku.com/



それで、私がこの写真で示したかったのは復興工事の盛り土の高さです。今、『南三陸さんさん商店街』が建っている場所は、防災対策庁舎の屋上とほぼ同じ高さです。つまり、南三陸町では元の街の中心部を埋め尽くした広大な盛り土の上に新たな街の中心部を作り、それ自体を内陸部に対する巨大な防潮堤にしようとしているわけです。


次の写真は、同じ場所を別の角度で撮ったものです。写真右側に防災対策庁舎が見えます。



写真左奥にあるのは、津波被害に遭った海岸各地に築かれている避難用の人工の丘です。高さは、防災対策庁舎より高いですね。丘の中腹にオレンジ色の柵があるのですが、それが防災対策庁舎の屋上の高さに相当するように見えました。防災対策庁舎は3階建でしたが、この丘は4階建の高さがありそうです。

そして、この付近はどうやら『南三陸町震災復興祈念公園』という名称で開発が進められているようです。下記ホームページによると、今年2020年秋にオープンとのことです。

南三陸町震災復興祈念公園の一部開園について | 南三陸町観光協会公式HP
https://www.m-kankou.jp/archives/232807/




おまけ


女川で食べた『女川丼』(¥1,300)を載せておきます。

ヒラメの縁側?だと思うのですが、こんなに大きいのは初めて食べましたよ。わさびの左隣にあるやつです。これは…ここだけの話ですが、南三陸町で食べるよりも安くて内容も豪快な感じがします。





さらにおまけに例のあれ=『ダンボルギーニ』も載せておきます。全部、段ボールで作られているそうですよ。女川の街のどこかにありますから、探してくださいね。






以上です。




(津波で流された女川町の住宅に掲げてあった日章旗)






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

個人支援の影響度

2016年06月27日 | 震災・災害


「被災地の商業復興を阻害するから、遠方から物資を送る個人支援はすべきではない」という指摘がある。
(どの震災でも出てくる指摘)

商業復興という視点からは定性的には正しい指摘だが、定量的にはどうなのか以下に検証する。



1)評価モデル=益城町

熊本県全域で定量評価すると現地の肌感覚とあまりにかけ離れると思うので、事例として被害が大きかった益城町を取り上げる。


①益城町の統計資料

http://www.town.mashiki.lg.jp/kihon/pub/default.aspx?c_id=27

上のページの「商業」を参照。

平成23年の数字として、商店数=251、年間商品販売額=5,536,392万円、とある。

若干古い数字ではあるが、これを震災前の数値とする。


②益城町の避難所の避難者数

熊本県、熊本市、益城町の避難者数の推移(神戸協同病院)
http://kobekyodo-hp.jp/images/material/20160512_kumamoto_mashiki.pdf

上記資料から、ある時期(5月中旬)の数字として避難者数4千人とする。



2)個人支援規模

個人支援の全容は捕捉できないが、ここでは被災者個人からの「Amazon欲しいものリスト」を取り上げる。

私が把握している限りでは、「Amazon欲しいものリスト」を提示している被災者個人は10人足らずで、食品と生活雑貨を中心にひとり当たり総額10万円未満と思われる。
(実際は個人差が大きい。避難所の他の人にも配るために多い人もいる。)

ここでは、月当たり100万円(=10人×10万円)と仮定する。



3)試算の条件

①前項の個人支援を求めている被災者が全員益城町にいると仮定する。本当はそうではないし、極めて乱暴な仮定だが、とりあえずそう置く。

②前項の欲しいものリストにある品物は、支援がない場合は被災者個人が全て自費で購入するものと仮定する。本当はそうではなく、大半は無ければ我慢すると思われるが、とりあえずそう置く。



4)商業規模に対する支援額の率

1項から、益城町の月間商品販売額は、461,366万円。

2項から、Amazon経由での個人支援規模は最大で、月に100万円。

従って、Amazon個人支援の影響は最大で 0.022% 程度。

店舗あたり平均では、3,980円/月の売り上げ減。(=100万円/商店数251)

これは3項のように乱暴な仮定をおいているから、現実にはもっともっとゼロに近くなる。

参考までに、避難所で配給される食事で試算すると、1,050円/日・人とのことなので、4千人であれば、12,600万円/月。
よって、益城町の月間商品販売額に対する比率は、2.73% となる。



5)結論

現実的にありえないほどの仮定を置いても、Amazon経由での個人支援が被災地の商業に与える影響は 0.022%程度。
実際には、もう1〜2桁以上低いと思う。

従って、「被災地の商業復興を阻害するから、遠方から物資を送る個人支援はすべきではない」という指摘は、定性的には正しいように見えても、定量評価すると現状では影響度が低すぎてどうでもいいレベルになる。

(他に、県外などから直接物資を運び込む支援もあるが、そちらは定量捕捉できないのでここでは評価しない。)


だから、マクロで見て商業復興を阻害するという心配よりは、むしろ苦境にある被災者個人に対して全国から支援の手が差し伸べられることにより、苦難が多少でも緩和されること、及びそれに付随した心の交流が図られることの価値の方が評価に値すると考える。

逆に、被災者からの支援を求める声を完全無視したとしたら、それによる見捨てられ感は被災者の苦難を現実以上に難しいものにしてしまうだろう。(東北の被災地でそういう話を聞いている)



以上。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

被災地支援の問題と提案

2016年06月24日 | 震災・災害


被災地から聞こえてくる多くの声や意見、被災者が登録したAmazon欲しいものリストの品目などを俯瞰しながら、問題がどこにあるのかを推察した。



1)行政と避難者の認識のズレ

下図のように行政と避難者の間で、「必要な物資」の品目で認識のズレが大きくなっている。

例を挙げれば、行政は「飲料水は2Lのペットボトルで十分に確保している」と認識し、避難者は「子供や高齢者は2Lは運べないし、季節柄、開封後の劣化による健康被害リスクを考えると500mlが欲しい」と要望している。



行政と避難者の間でズレが生じるのはやむをえないが、問題はこれを埋める工夫がなされているかどうか。

あるいは、行政が認識している水準が妥当であるのかどうか。



2)必要な物資は時間が経つほどに変化

避難者(または被災者)が求める物資(≒生活水準)は時間とともに変化するのが当然。

①食生活や生活環境から生じた問題に対処するために必要物資の品目は増加する
 例:栄養補助食品、副菜、汗対策の日用品、殺虫剤その他

②元の生活水準に戻りたいとする欲求

それにもかかわらず、提供する物資を行政が一方的に“生存確保水準”に固定しておくならば、避難者の問題や不満はますます増大していく。



現状で聞こえてくる範囲では、「増えていく必要物資の品目」に対処する工夫や努力の様子が見られない。

なお、自宅や家財、場合によっては収入源まで失った被災者には「足りたいモノがあったら自分で買いなさい」は酷である。



3)行政には対応できない

避難者が何を求めているかをきめ細かに把握し、それを手配する能力はそもそも行政にはないと考えた方が良い。

にもかかわらず、行政が避難所を完全支配下に置いていることが問題。

次の記事で用いた図を再掲するが、支援物資の手配や配送の体制にNPOを入れることでこの問題には対処できる。東北の被災地ではそのようにやった。一例を挙げれば、漁村が多かったので「ゴム長靴が欲しい」という要望にも対応したし、寒さ対策のために使い捨てカイロも配布した。

物資支給体制
http://blog.goo.ne.jp/zf-phantom/e/7420757f800d800c0a85676c9d577218





4)民間企業への協力要請が必須

避難者が求める細々した品目に行政がいちいち対応できないのは当然だが、民間企業は世間のあらゆるニーズに応えるためにあらゆる商品を用意している。

例えば衣類ならば、企業は売れ残り商品などを格安あるいはほぼ無料で提供できる。衣類の原価は3割前後だし、売れ残り廃棄予定商品ならば本来は処理費用がかかるところを無償提供によりタダで処分できる。

食品ならば、これも原価は売価よりはるかに安いし、被災者をもファンにしたいという企業側の意図がある場合などは一種のマーケティングも兼ねて無償提供できる。

また、被災地への物資支援は企業にとっても「社会貢献」の一環としてアピールできるので、企業にとっても物資提供は必ずしも損にはならない。

いずれにしても物資品目の拡充は、企業からの協力があれば比較的容易に可能だが、これを個人ボランティアが店頭小売価格で自腹で購入し、避難者に配布するというやり方は持続不可能。

また、現状のように行政が公式に支援物資の受け入れを停止している状況では企業は支援ができない。なぜならば、企業は個人ボランティアと違って、行政の方針に反してまで支援を強行するようなことはしない(できない)から。



5)支援物資業務にNPOを参加させるべき

何度考えても結局同じ結論にしかならないが、次の記事で紹介したように、支援物資配布の業務をNPOに業務委託するのがベストと考える。行政は大枠だけ用意してくれれば、細々した品目はNPOが避難者からヒアリングして企業との間をコーディネートできる。

物資支給体制
http://blog.goo.ne.jp/zf-phantom/e/7420757f800d800c0a85676c9d577218



6)現実解は行政とNPOの住み分け連携

ただ、理想論を述べてもラチがあかないので、次のように現実解を提案する。

すなわち、行政が提供している生存確保水準の物資提供は維持したまま、健全に生きるための物資提供の体制としてNPO+企業の支援体制を追加する。



これを実現するには次の2条件が必須。

 ①行政からNPOへの業務委託
 ②行政からの支援物資受け入れの告知


これさえ揃えばあとはなんとでもなる。

実行上の課題は、このような提案を誰がどうやって行政に提案し、説き伏せるか。また、その提案の時点で、業務委託を受けるNPOが立候補していることが望ましい。

細かいことを言えば、NPOが倉庫代わりに使う体育館のような施設の確保に便宜を計らってもらいたい。なお、この施設は必ずしも被災地内でなくても構わない。


また、あえて言及するが、いくつか懸念される事例はあったにせよNPOやボランティアへの過剰な批判や排除が結果的に今の状況を生み出した側面もあったのではないかと考える。




参考)避難者がAmazon欲しいものリストで提供を呼びかけている品目の例

★食品類

インスタントスープ
クッキー
煮魚のパック
牛乳
500mlの水
栄養補助食品(ビタミン、カルシウム、亜鉛、DHC、鉄その他)
スポーツ飲料
缶詰(魚、果物)
麦茶など
青汁
菓子またはつまみ類(鉄とカルシウム補給など)
レトルト食品(丼物、カレー)
味噌汁
ゼリー(エネルギー補給)
ドライフルーツ
長期保存非常食
芋チップなど(食物繊維補給)
アルファ米


★生活雑貨

無添加の洗濯用液体石鹸
シャンプー
乾電池
蚊やダニ対策スプレー
使い捨てのスプーンと紙コップ、紙皿
汗の拭き取りペーパー
消臭と除菌のスプレー
ハンドソープ
ローション、クリーム
スマホ充電ケーブル
殺虫剤
ウェットティッシュ
胃腸薬


★衣類

下着、靴下




以上。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大震災という名称

2016年06月22日 | 震災・災害


「政府が熊本地震を大震災と呼ばないのはなぜか?」という指摘が主に政府批判の論調で出てくるのを見かけるので書いておく。


1)地震を命名するのは気象庁である

顕著な災害を起こした自然現象の命名についての考え方(気象庁)
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/meimei/meimei.html

ただし、気象庁が命名する対象は自然現象つまり地震そのものである。だから、主に震源地をもとに命名される。決して、災害に命名しているわけではない。


2)気象庁命名の名称に「〜大震災」はない

例:

①阪神淡路大震災の正式名称=「平成7年(1995年)兵庫県南部地震」

②東日本大震災の正式名称=「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」


3)「〜大震災」と呼ぶのはマスコミ

地震発生直後にマスコミに登場した呼称の例:

①「阪神大震災」、「関西大震災」、「関西大地震」など。

②「東日本大震災」、「東北関東大震災」、「3.11大震災」、「東北沖大地震」、「東北・関東大地震」、「宮城・茨城沖大地震」、「東日本巨大地震」、「東日本大地震」、「東北大震災」など。


4)乱立した呼称を統一するのは政府

阪神淡路大震災でも東日本大震災でも、マスコミで呼称が乱立したので、政府がこれを統一すべく閣議で決定した。


結論)

従って、熊本地震が「〜大震災」と呼ばれないのは、マスコミがそう呼ばないから。

マスコミが「熊本大震災」とか「熊本・大分大震災」などと呼称を乱立させれば、他の震災と同様に政府が呼称統一に乗り出すと思われる。現状では、誰もが気象庁命名のままの「熊本地震」としか呼ばないから、呼称統一の必要性がない。

よって、熊本地震を大震災と呼ばないのは、政府が震災を軽く見てるからとかそういう話ではないし、逆に大震災と呼ばれるようになったとしても救済措置のグレードが変わるわけでもない。それは「激甚災害」と「災害救助法」の指定であり、震災の名称とは関係ない。



参考)

激甚災害制度(内閣府)
http://www.bousai.go.jp/taisaku/gekijinhukko/index.html

災害救助法(内閣府)
http://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/kyuujo.html



以上。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

熊本県・住家被害率

2016年06月18日 | 震災・災害


熊本県発表の資料をベースにラフな試算をすると、住家の被害状況は以下の通り。

住家:663,800戸 *1(居住世帯のある住宅)

全壊    : 7,724棟(1.2%)
半壊    : 23,124棟(3.5%)
一部破損  : 110,530棟(16.7%)
未確定   : 2,726棟(0.4%)
被害住家総数: 144,104棟(21.7%)

(ただし、住家の統計がやや古いことや、震災被害の母数の定義ときっちり整合しているか不明のため精密な計算ではない)


熊本県災害対策本部発表の被害情報 6/17 16:30
http://www.pref.kumamoto.jp/common/UploadFileOutput.ashx?c_id=9&id=123&set_doc=1


*1:平成20年住宅・土地統計調査(熊本県)
https://www.pref.kumamoto.jp/kiji_8906.html



以上。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自力仮設スキーム案

2016年06月12日 | 震災・災害


問題の構造を正確に把握していないが、どうやら被災者が自宅敷地内にプレハブ等の一時避難生活用の仮設住宅を建設すると、行政手続き上は「新築」と見なされ、被災者向けの公的支援が受けられなくなるような問題が発生しているらしい。

そのために、ある程度の資金余力があっても自力仮設住宅の建設ができず、結果的にテントやビニールハウスでの避難生活を余儀なくされている被災者がいる。

その場合、もしかすると下図のように、まず支援団体が被災者の敷地の一部を借り上げてしまい、そこに支援団体がプレハブ等を建設し、居住する権利を被災者に貸与するようなスキームを取れば、上述の問題を回避できるように思える。



プレハブのレンタル料は、リース会社によれば3坪で初月2万5千円、翌月以降1万5千円程度。

被災者自身がその程度を負担できるなら、全体の収支で被災者実費負担になるようにしてもいいし、支援団体に集金力があるなら被災者には無償提供にしてもいい。

私にはそこまでの実行力はないので、アイディア提供だけ。


注:問題の構造を正確に把握していないので、いろいろ間違っている可能性はある。



以上。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

避難と支援のヒアリング

2016年06月03日 | 震災・災害


今後の被災者支援のためにも、被災者やボランティアなどが直面した困難や問題点等を取りまとめ、今後の検討用の材料に供したいと思います。

ご協力いただける方は、以下の項目について、私(twitter)宛か、またはこの記事のコメント欄(デフォルトで非公開設定にしてあります)に情報をお寄せください。対象は、被災者(職業等不問)または現地入りしたボランティア等の関係者の方です。

いただいた情報は、「証言集」として適宜このブログにて公開します。

なお、これは特定の組織、団体、個人を批難することが目的ではないことを申し添えます。
(罵倒や誹謗中傷などが含まれる場合は記事にしません)

また、もう少しやんわりとした「熊本の声」を届けたい場合は やまとゆうさん(twitterblog)の方が良いかも知れませんのでご案内します。



0)名前
ネットに公開して良いあなたの名前(twitter等のアカウント、または匿名希望ならペンネームなど)を教えてください。

1)場所
あなたが関わった避難所等の名称や施設名などを教えてください。在宅や車中泊の場合は、地区名等を教えてください。またその場合は、以降の質問の「避難所」を、その地区や駐車スペースなどに置き換えてください。事情がある場合は、適当にぼかしてください。

2)立場
あなたはその避難所にどのような立場で関わりましたか。避難者、入所はしていない被災者、ボランティア、等々。また、ボランティアの場合は、その活動内容も教えてください。

3)期間
あなたがその避難所に滞在した、または関わった期間を教えてください。可能な限り、入所と退所の日付も教えてください。

4)概況
あなたが直接見聞したその避難所の状況を概況で教えてください。避難者数、運営体制、食糧等の配布状況など。極力、私見を排し、事実のみをお願いします。

5)問題点
その避難所での避難生活において、あなたが直面した困難や問題点について、またそれがいつの出来事であるかを教えてください。ただし、それはあなたが直接体験したこと、または避難者や運営スタッフから直接聞き取りした範囲に限定してください。

6)要望
前項5)の問題点について、あなたや他の避難者またはボランティアはその時、具体的に誰にどうして欲しかったのかを教えてください。また、その件に関する意見やクレームの有無、さらにそれに対する対応や結果なども教えてください。

7)提言
今、振り返ってみて、全般的な提言や意見などがあれば教えてください。

8)コメント
今回の震災全般について、感想、体験談、教訓、コメントなどあれば何でもお願いします。



お忙しいところ、貴重な情報提供をいただき、ありがとうございました。



(参考)

政府に意見を届けたい場合は、こちらにどうぞ。

内閣府防災担当へのご意見・ご感想
https://form.cao.go.jp/bousai/opinion-0001.html



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

罹災証明を加速する方策

2016年05月29日 | 震災・災害

(一連のツイートに反響があったので加筆修正し、まとめておきます)


罹災証明書の発行遅延、あるいは査定不服による再査定が長引いて、被災者個人の生活再建の予定が立たない。また、罹災証明書の発行が遅れているために義援金の給付も受けられない状況が続いている。

こういう定型業務はどんどん他自治体からの応援職員を使って加速すればいい。なぜそれをしないのか。


罹災証明書遅れで義援金、被災者に届かず(佐賀新聞)
http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/315431

熊本地震の義援金のうち、熊本県が25市町村に1次配分した計約7億5千万円のほとんどが、配分から2週間以上たっても被災者に届いていない。24日時点で支給したのは1世帯10万円のみ。地震による熊本、大分両県の建物被害は10万棟を超え、住宅の被害調査が進まず、罹災(りさい)証明書の発行が追い付いていないのが主な要因だ。(中略)

被災者に支給できていない事情について熊本市の担当者は「罹災証明書の申請が6万件以上あり全体像がつかめない。職員は避難所対応などに追われ、支給の態勢が整わない」と説明。



罹災証明書発行は定型業務なのだから、他の自治体からの応援で加速できるはず。建物被害認定調査などの業務は応援職員に丸投げすればいい。

行政職員も被災者であり、がんばってるんです、という指摘もあるが、それは現場レベルではそうなのだが、マネージメントレベルから見ればいくらでも工夫の余地がある。そういう采配をするのが幹部の仕事。避難所運営も被災経験のある他自治体からの応援職員に任せても構わない。事実、当初はそうだった。

罹災証明書の発行が滞って被災者の生活再建がままならず、義援金も受け取れない事態になってるのだから、地元の行政職員は全員それに充てて加速するのが妥当。現場はがんばってるなんていうのは組織としては言い訳にならない。非常時なのだから外部リソースをもっと使え。

具体的には、発災当初に他自治体からの応援職員を要請した時のように、熊本県知事が全国知事会に対して「罹災証明書の発行が追いつかないので、引き続き応援の増援を頼む。」と言えば良い。それだけのこと。


★行政リソース配分の一例(案)

1)罹災証明書の申請受理および事務手続き
  →被災地行政担当者

2)罹災証明書発行のための建物被害認定調査業務
  →他自治体の応援職員

3)避難所運営業務
  →他自治体の応援職員

罹災証明書の発行が完了するまで、上記の体制でやればいい。




(被災者のツイートから)

熊本の避難所で何が起きてるのかが垣間見れる。
https://twitter.com/ZF_phantom/status/735652535579512832
→避難所運営に来ていた他県からの応援職員が帰ってしまった。


(他自治体からの応援の状況例)

埼玉県狭山市
https://www.city.sayama.saitama.jp/kurashi/topics/kumamotohaken.html
5月1日(日曜日)から5月7日(土曜日)まで、御船町にり災証明の前提となる建物被害認定調査業務の補助員を派遣していたが既に帰還した。


宮城県名取市
http://www.city.natori.miyagi.jp/news/node_39957
5月18日(水)~5月27日(金)の予定で、り災調査支援の要員を派遣しているが、もう帰還した頃だろう。


千葉県
http://www.pref.chiba.lg.jp/soumu/jinji/kumamotohaken280506.html
下記のように、いずれも応援期間は終了した。

1.熊本県南阿蘇村への派遣
・派遣期間
平成28年4月29日(金曜日)~5月4日(水曜日)6名 派遣終了
平成28年5月4日(水曜日)~5月9日(月曜日)6名 派遣中
平成28年5月9日(月曜日)~5月14日(土曜日)4名 派遣予定

・従事業務
災害対策本部支援、村役場業務支援、避難所運営等

2.熊本県益城町への派遣(新規)
・派遣期間
平成28年5月7日(土曜日)~5月11日(水曜日)3名 派遣予定
平成28年5月11日(水曜日)~5月15日(日曜日)3名 派遣予定

・従事業務
避難所運営等




(参考記事)

「出直せ」罹災証明書めぐり益城町民から怒り(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20160529/k00/00e/040/150000c

罹災証明、交付遅れ 申請の半数(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20160529/ddm/041/040/140000c

罹災証明書の交付進まず 被災者不満高まる(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20160529/k00/00m/040/062000c

罹災証明書の交付巡り不服申し立て6000件 家屋被害判定に(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20160528/dde/041/040/028000c

被災者への義援金、支給わずか1世帯の10万円のみ 約7億5千万円が自治体に滞留(産経新聞)
http://www.sankei.com/west/news/160524/wst1605240092-n1.html

「心が爆発寸前」 自治体職員、心身擦り減らす(熊本日日新聞)
http://this.kiji.is/109111704797857271?c=92619697908483575

地震対応の50代の阿蘇市職員が自殺(毎日新聞)
http://mainichi.jp/articles/20160604/k00/00e/040/262000c



以上。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

神戸の経験から

2016年05月26日 | 震災・災害


連続ツイートに反響をいただいたので、自分のツイートだけまとめました。

元tw https://twitter.com/ZF_phantom/status/734685310034968576



(被災1ヶ月後の熊本の状況は、他の震災と比べてどうか、との投げかけに対して)

ツイッター上で見える今の熊本の悪い部分と、私がいた当時の神戸の某避難所で比べると、熊本の方が悪いですね。
炊き出しに涙とか、着替えなしで洗濯もできず、なんて事例は神戸では聞いてません。まぁ、当時はSNSなんてなかったですけど。

あと、今、避難所生活の方が何人か、毎日の食事をアップしてくれてますが、あれを見ると、私がいた神戸の某避難所の方が食事は豊かでしたね。

熊本/神戸
朝:パン1個/パン欲しいだけ
昼:なし/朝と同じパンの残り
夕:粗食/炊き出しで温かい食事(カレーとか豚汁とか)


(避難所の運営)

熊本避難所の問題の要因としては、行政主導の運営体制にあるのではないかと疑っている。

私がいた神戸の避難所は、校長が責任者だったが、実働としてはボランティア+避難者の代表と有志で運営されてた。行政からは連絡要員が1名張り付いてたのみ。避難生活上の不都合はこの連絡要員を通じて要求。

避難者の代表が避難所運営に参加してることは非常に重要。同じ空間にいても、ボランティアや行政職員には、避難生活上の不都合がわからないことが多い。避難者の代表は、避難所内の避難者に広く声を掛けて、生活上の不都合を夜の運営会議に伝えるだけでいい。大半は翌日に改善できる。一種の改善活動。

私は神戸の避難所に入ってすぐに、これはある種のサービス業だと悟った。だから、日帰りのボランティアや、被災者の中高生らを使って、生活環境の改善や学校再開への準備をどんどん進めた。支援物資もじゃんじゃん配った。(=神戸市が仕分けもせずに一方的に送りつけてくるから)市への要求もやった。

避難所運営のボランティアではあったが、周辺被災者への支援もやった。部隊を派遣して、周辺被災者への飲料水の運搬や、倒壊家屋からの私物の発掘までやった。(今なら問題視されそうだ)外部からの炊き出しの時は、周辺被災者への声かけもやった。防災計画なんぞ知らないが、当然と思って実行した。

今の熊本避難所の運営職員がどういう意識でやってるのか知らないが、毎日同じように運営することを目的にしているならそれは違うと思う。被災から日数が経てば被災者は元の生活に戻るべく生活品質の向上を求める。だから、運営する側も毎日生活環境の向上を達成せねばならない。前日と同じではダメ。

着替えの下着がないというなら何がなんでも手配するのが仕事。当時はSNSはなかったから、市の連絡要員を通じて嫌というほど請求した。誰かのツイートで「上から何も言ってこないのでわかりません」と言ったという職員がいたらしいが、「だったら100回でも問い合わせろ!」と怒鳴りつけたい。

私は今、多くの被災者からのつぶやきを俯瞰してみて、この運営スタッフの意識の差を非常に強く疑っている。現場からガンガン要求なり問い合わせなりをしなかったら行政の幹部に問題点が伝わるはずがない。いや、それ以前に住人である避難者からの生活上の不都合を十分に汲み取っているのか?

避難所の避難者代表を運営に参加させた方がいいと何度もお伝えしているのも、そういった生活環境の継続的改善に絶対的に必要だから。避難所内で工夫できることなら翌日には改善できるし、行政に要求すべきことは執拗に要求すればいい。それでなんとかなる。今の熊本にそういう改善活動があるのか。


(食事)

ついでに朝食についても触れる。神戸ではパンだけは潤沢に届いた。だから、朝食の時間はテーブルをずらりと並べてパンをトレーごと陳列し、中高生や小学生までもが売り子になってどんどんやってくる避難者に好きなだけ渡した。小学生が「クリームパンありまーす!」とか声を張り上げていたのだ。

余所者がこう言ってはなんだが、この朝のパン配給の時間は楽しいのですよ。小中高生が一生懸命声を張り上げて、自分の担当のパンを避難者にオススメしてるわけ。活気があって、避難生活の中でもみんな笑顔になる。こういうのは重要。今の熊本にそういうシーンはあるのだろうか。

ついでに夕食も。私は深くタッチしてなかったので記憶が薄いが、いつの間にか避難者自身で炊き出しが始まっていた。主婦が主体だと思ったが、女性たちが10人以上でワイワイやってた。もしかしたら、周辺の被災者もいたかも。夕方になると女性たちが「味噌がなーい!どこぉ~??」とかやってた。


(イベント)

あと衣類の配布。当時は、市が一方的に箱ごと送りつけてきたから、何が入ってるかわからない。衣類は良品からゴミまでさまざま。だから、晴天の日に校庭にブルーシートを敷いてバザーみたいなことをやった。「欲しいものあったら全部持ってってー」と。もう百貨店の大セールみたいに商品の取り合い?w

避難所生活なんて基本的に辛く苦しいことのはずなので、そういったイベント的な活動で声をあげて騒いで、時には大笑いすることが実は大事なことだと思う。すべて意図的にやったわけではないが、試行錯誤の結果としてそうなった。今の熊本でそういう努力や配慮はなされていますか?



(参考)

熊本の避難所で何が起きてるのかが垣間見れる。
https://twitter.com/ZF_phantom/status/735652535579512832



(おまけ)

被災地であっても、衣類などの配布会は楽しい。これは東日本大震災の津波被災地でも何度も配布した経験。

こういう雰囲気で盛り上がる。

被災女性A「ちょっと、これあんたに似合うんじゃない?w」
被災女性B「えー、派手すぎない??w」
被災女性A「ねぇ、これ似合うわよね?」(配ってる私に対して)
私「大丈夫ですよ。それにサイズもぴったりだしw」

被災妻C「あんた、これ着なさいよ」
被災夫D「これは俺はいらねーよ、ヤクザみてぇだろw」
被災妻C「いいじゃないよ、他に着るもんないんだからw」

苦しい避難生活にあっても、こういう笑顔が出るイベントを仕掛けた方がいいと思います。芸能人に頼らなくても自分たちでできることもあるのですよ。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

避難所撤収モード?

2016年05月24日 | 震災・災害

熊本地震の避難所での食事がひどい。
被災から1ヶ月以上も過ぎてこの貧相さは、他の大震災に比べてどこかおかしい。


(以下、被災者の方に許可を得て写真をお借りしました)


 
5月24日の朝食例



5月23日の夕食例



5月22日の夕食例
(左上のピルクルは被災者自費購入品)



熊本地震は「災害救助法の指定」を受けているので避難所、応急仮設住宅の設置、食品、飲料水の提供、医療、被災者の救出などにかかる費用については市町村の負担がない。(=県と主に国の負担)
その意味で、市町村の予算の都合から避難所支給食料がケチられてることはないはず。

ほとんどが国の予算だから食事はケチらずにじゃんじゃん提供しなさい、とはならないだろうが、震災1カ月以上たってもこの量と内容の避難所の食事はあまりにも貧相。おそらく、予算上の問題ではなく、行政のどこかの階層から、意図があって支給食料の絞り込みを指示してるのではないかと疑う。

考えられるのは行政判断が、熊本県の避難所運営ガイドラインにある《避難所の統廃合・撤収》モードに入っている可能性。このモードに移行すると《避難所の統廃合・撤収の方針を前もって周知し、避難者の自立を促す。》ことになる。当然、避難所の被災者には追い出し圧力が感じられるはず。
→被災者からも追い出し圧力を感じるとの声が出ている。

ガイドラインには《「ライフラインの復旧、流通の回復、住まいの確保」が できる段階》で撤収モードに入るとある。ただ、括弧書きで《阪神・淡路大震災級の災害であれば2~3ヶ月程度》ともある。熊本被災地の状況を聞く限りは、被災1カ月後の現時点で撤収モードに入るにはあまりにも早すぎないか、と感じる。

義援金の第1次配分から見ると、熊本県庁のある熊本市の被害は実はそれほどひどくない。(県内他市町村比)
被災地の被害度数

その県庁から見える視野で避難所撤収モード移行を決定し、収容している被災者への食料等の絞り込みを開始したとしたら、これは大きな判断ミスではないかと思う。断言はしないが、そういう疑念がある。
→一部の被災者からはパンの個数が減らされたとの報告もある。

今でも避難所に残っている被災者は、帰れる自宅がないから避難所にいるのであって、今後の生活再建を考えれば外食などをする金銭的余裕がない人も多い。被災者自身がそう言っている。

状況的には《避難所の統廃合》は良いとしても、残っている避難所については食事の質も含めて生活の質の向上を図るべきではないかと考える。

現状で提供されている食事の内容は、以下の熊本県・避難所運営ガイドラインの趣旨にも合致していないと考える。



(参考)

避難所運営ガイドライン(熊本県) P.38
http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_236.html

第3章 応急対策

6 水・食料・生活物資の提供

(3)在宅被災者への提供
水・食料・生活物資は、避難所にいる・いないに関わらず、必要とする被災者に区別なく提供する。

(4)食事への配慮
可能な限り適温食の提供や栄養状態に配慮する。なお、栄養管理については、県が作成した「熊本県災害時の栄養管理ガイドライン(市町村における避難所栄養管理のための手引き)」を参考にすること。 また、難病患者・人工透析患者等、食事制限のある避難者に配慮した食事の提供を行う。

・大規模災害の発生直後は、多数の避難者に対応するため、おにぎり、パンを提供することも考えられるが、可能な限り早期に弁当等に切り替える。この場合、近隣の給食工場等は被災している可能性があり、必要な場合は県等に あっせんを要請する。

・避難の長期化に伴い、避難者のし好に応じて食事メニューを多様化することも求められるが、行政がきめ細かく対応することには限界がある。そこで、避難所において避難者自ら調理することができるよう、必要な炊事設備や食材を配備・提供するなどの対応も求められる。(ただし、避難所の衛生環境が安定的に確保できるようになった段階で。)




(参考記事)

熊本市・避難所ようやく弁当に 栄養バランス確保へ (5月27日/熊本日日新聞)
http://this.kiji.is/108739063177920514?c=92619697908483575




以上

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

被災地の片付け支援

2016年05月11日 | 震災・災害


被災地のボランティアセンターから伝わる様子によると、いろいろと非効率な点があるとのこと。

そのひとつは、被災者からの手続きは済んでいるのに、当日朝に最終確認をすると被災者が電話に出ない(出られない)ケースがあり、そのために確保したチームが出動できず、結果的にボランティアを長時間待たせたり、結局仕事がないままに終わったりしているとのこと。



役所の業務スタイルとしてはやむをえない点もあるだろうが、もっと効率良くやろうと思えば方法はある。

在宅被災者がいる地区に支援物資を配布するのと同様に、片付け支援も地区ごとにまとめて一括でやってしまった方が効率が良い。



もちろん、1日の作業で地区内全域の作業が完了することはないだろうが、それは日を改めて何度かやれば良い。

「現地での飛び込み依頼」というのは実際にあった事例で、片付け作業中のボランティアに別の被災者が「うちのも頼みたい」と申し出たところ、手続きを踏んでいない依頼には対応できない、と断ったことがレポートされていた。

役所手続き的にはそれが正解だとしても、被災者支援とボランティアの効率的活用の点からは正解とは思えない。

民間的な発想で言えば、現地派遣チームリーダーの裁量で臨機応変に対応できる。



以上。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

物資支給体制

2016年05月10日 | 震災・災害

被災地では、震災から時間を経ると必要な支援物資の種類が増える。

 当初:水と食料、毛布など
 以降:日用品、衣類、雑貨、衛生用品、など


従って、支援物資の支給を継続する場合、御用聞きあるいは注文リストでの発注が必要になる。被災者側のニーズを聞き取りもせずに一方的に送ると必ず迷惑になる。

また、熊本地震の被災地では、車中泊避難者などが支援物資支給の対象から漏れている問題も指摘されている。


そこで、東日本大震災のある自治体ではどうしていたかの実例を紹介する。

・仮設住宅、在宅被災地域に限らず、被災地区の代表者を決定
・地区代表者は、被災者の代表者の場合もあるが、その地区を継続的に支援してるNPO団体の場合もある
・地区代表者は、行政に登録(建前)
・行政は、支援物資の在庫管理と搬出入管理をNPOに委託
・実務的には、地区代表者は地区内の被災者から要望を取りまとめて必要物資の注文リストを作成
・注文リストを元に、物資管理NPOと折衝(在庫との調整)
・日時を調整のうえ、配送または引き取り
・以上の作業を、数日~10日程度のルーティーン作業で繰り返す


熊本地震被災地においても、今後も物資支給を継続するなら似たような体制を組む必要があると考える。
在宅であれ車中泊であれ、被災者個人がバラバラでは支援の手は届かないだろうと思われる。






(追記)

Q1:被災者個人が取りに行ったらどう?

A1:私がお手伝いした東北のある自治体では、支援物資倉庫(集積所)へ被災者個人が自分の分の物資を取りに行くことは禁止(拒否)しました。

なぜなら被災者個人の身元までいちいち判別していられませんし、個人が倉庫内で欲しいものを好き勝手に物色されても対応できません。多くの地区に限られた物資を公平に配分する意味でも、調整が必要です。また、大型トラックでの搬入日に個人が来られても危険です。

そういった理由から、あくまで事前登録した地区代表に限定しました。


Q2:行政は、なぜ支援物資の在庫管理と搬出入管理をNPOに委託するの?

A2:行政職員は復旧や各種事務手続き業務に忙殺されています。行政職員が支援物資の在庫管理や配送計画、さらには物資の積み下ろしや集配作業をすることは実務的に不可能です。こういった業務は経験のあるNPOに丸投げした方が効率的です。





以上。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする