きのう書いた「センセイの鞄」と同じ川上弘美さんの作品。
「センセイの鞄」のサイドストーリー。ということで、続編、というわけではなさそうだけど。
いきなり冒頭は
「昔の話をしてください」とセンセイが言った。
から始まる。
これはいつの頃にあてはまるのだろう。
センセイのお宅で、2人でお昼にそうめんを作っている場面。
2人で台所に立っているのだから、最初のデートからはかなり親密になった頃かしら。
ついついこの間のお芝居を思い浮かべながら読んでみた。
センセイがそうめんの薬味を切っていく場面。
たまご、みょうが、紫蘇、わけぎ、きゅうりの千切り、たたきゴマ、梅干しの裏ごし、煮茄子。
これらを次から次へと切って、一種類ずつ小皿に盛るセンセイ。
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なんて、豪華版の薬味かしら。
几帳面なセンセイの性格が見えるみたい。
ツキコさんは相変わらずだ。大鉢にドサッとそうめんを開けて、センセイにたしなめられてる。
「ツキコさん、それじゃだめですよ」
センセイはそうめんを戻して、一束ずつくるりと丸めながら置き直す。
「ツキコさんもやってごらんなさい」
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あ~、センセイそのものだね~
ツキコさんによれば、この2週間くらい前にも、センセイのお宅で、2人はお昼を食べている。そのときは蕎麦で、センセイに「座っててください」と言われてホントに座ってたら、「お膳の用意くらいしてくださいよ」と怒られ、モタモタ用意をしていたら、「あなたが動くと邪魔になりますから、やっぱり座っててください」と言われちゃったらしい。
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目に見えるような光景だわ
そうめんの場面に戻る。大鉢のそうめんがなくなって、センセイが残りのそうめんを鉢に開けてくるのだが、なぜかこのときはドサッと置いたまま
ツキコさんがそれを指摘すると、センセイは「世の中そんなもんですよ」と澄まし顔
いっぱい食べて、センセイは眠くなってきたらしい。「腹がくちくなると、眠くなりますね」と言って、センセイはお昼寝を始めた。知らないうちに、ツキコさんも
この「腹がくちくなる」という表現をわたしは初めて聞きました。
「くちい」という形容詞で、“いっぱいになる”という意味らしいです。方言ではないそうですが、ちっちゃな辞書には載っていませんでした。
センセイはさすがに国語の先生だものね。
いろんな言葉を知ってらっしゃるのね。
なんだか、センセイがジュリーそのものに見えてしまった。