永訣の朝

2008-01-07 13:27:17 | 文学


『うまれで くるたて
  こんどは こたに わりやの ごとばかりで
   くるしまなあよに うまれてくる』



宮沢賢治「永訣の朝」に詠まれた、賢治の最愛の妹、とし子の言葉。



とし子は大正11年11月、結核により25歳でこの世を去る。

彼女は最後の日のみぞれが降る朝、喉の渇きを覚え、
外のみぞれをお椀にとって来てくれないか、と、兄に頼む。

賢治は永年妹と使ってきたお揃いの椀を持って庭に飛び出す。



そして、苦しい息の下で妹が兄に言葉をかける。



『うまれで くるたて
  こんどは こたに わりやの ごとばかりで
   くるしまなあよに うまれてくる』

《今度生まれてくるときは、
 こんなに自分の事ばかりで苦しまないように
 (もっとお兄さんの事を気にかけてあげられるように)
 生まれてきます》






「永訣の朝」
http://uraaozora.jpn.org/pomiya2.html









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2 コメント

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原油 (アプリ)
2008-01-09 03:16:30
現在とそっくりですね。原油価格が100$を超えて、日本の製造業は異常事態です。「あめゆじとてちて」まさに死に逝く彼女の言葉と似たりであります(涙)。
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フランダースの犬 (P@RAGAZZO)
2008-01-09 12:14:50
なるほど、、、そこまでは思いつきませんでした。

自分自身の逆境を恨まず、誰の所為にもせず、
他を慮る心情というのは日本人の美点であり欠点でもあります。

ですから、他を恨むでも責めるでもなく、
微笑をもって己の逆境を受け入れ、哀しい死を遂げた「フランダースの犬」のような物語は、
ベルギーやイギリスでも“負け犬の死”という捉え方をされ、ほとんど評価されていません。

奇妙な国際社会の日本(大江健三郎ふうに言えばですが、笑)そのものと言えますね
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