『さらば愛しき女よ』

2008-07-18 11:57:24 | 文学





『さらば愛しき女よ』
レイモンド・チャンドラー (著), 清水 俊二 (訳)


チャンドラーの作品は『長いお別れ』以来2作目。

チャンドラーの描くフィリップ・マーロウはとてつもなく勇敢で信義に厚く、
その言葉は短く皮肉に富んでおり、時として相手を怒らせる。

彼の人物観は、
その人物が男か女か、ギャングか警官か、金持ちか貧乏人か、
権力者かそうでないか、犯罪者かそうでないか、
、、に関わりなく、そこに信義があるか、筋が通っているか、にその重きが置かれているようだ。

この作品にも、最初に刑務所から出てきてすぐ人を殺してしまう大男マロイが出てくるが、
マーロウは終始マロイに同情的であり、マロイが探す女を危険を顧みず捜してやろうとまでしてやる。

タイトルにある愛しき女はずいぶん身勝手な生き方をしてきた憎むべき女なのだが、
最後に彼女は己をこれまで保護してきた人に対し信義を通し、読む人の哀れを誘う。

終始一貫したマーロウの男っぽい行動はその色気と毒を含んだ言葉と相まって
長い間チャンドリアン(チャンドラー・ファン)を痺れさせてきたのであろう。

ただ、マーロウは何度もピンチに陥ったり瀕死の重傷を負ったりするが、
彼が死ななかったのは運が良かったのだとしか思えず。
勇敢というより無謀すぎるのではないか?と思ったので星ひとつ減点する事にした。




★★★★☆







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