『パリの詐欺師たち』

2008-07-11 12:14:37 | 文学






『パリの詐欺師たち』 奥本 大三郎


著者は仏文学者で埼玉大教授、昆虫に造詣が深く
『ファーブル昆虫記』などの翻訳を手がけた人でもある。

本書は『パリの詐欺師たち』と『蛙恐怖症(ラノファビア)』が収められている。

前者はパリの、後者は台湾の、滞在記、または旅行記のようなもので、
著者本人と思われる『奥山先生』が徒然に、食べ物や虫や文学について、
思うままに、行きつ戻りつ吐露していくのだが、
前者と後者では、幾分著者のテーマが違うように思った。


『パリの詐欺師たち』では、
ミシュランの覆面調査員で、食通にして仏文学、生物などに精通しているという【平田】との出会いを通し、
パリに巣食っている似非インテリ(達)の生態やいやらしさ、虚実を交えた詐欺師ぶりに対する怒りを、
ユーモアを交えながらもかなり本気で書き綴る。

ちなみに、何故『パリの詐欺師たち』と複数になっているのか?と考えるに、
奥本は、彼自身もまた“詐欺師まがい”なのであると告白し、
密かに恥じ入る気持ちをタイトルに込めたのではないか、、、
と、私には感じられた。


『蛙恐怖症』は、
台湾の高砂族と日本人の間における“ある事件”に重きが置かれており、
台湾人の中の『抗日』と『親日』、『漢族』と『高砂族』という、
両極の根が混ざり合わざるを得ない台湾の地において、
現代の台湾人から視たであろう日本人像、また日本人から視た台湾人像を、
幾分保守的な思想を持った著者が語る。

パリにしろ台湾にしろ、虫の事は余り関心が湧かなかったが、
食べ物に関してはとても興味深く、
特に蛙に関しては、
昔、私が家族で渡仏した時、家族に黙って蛙を食わせ、
女房殿からこっぴどく叱られた事を思い出した。 




★★★★☆


HAさん、ありがとう。






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