『あかね空』

2007-07-15 14:06:38 | 文学




『あかね空』   山本一力



ふーむ、、、この小説は読む人によって評価が分かれるだろう。



物語は、幕府が実質的に重商主義的政策を採った俗にいう田沼時代(江戸中期)の頃、

上方(京都)で修行を重ねた豆腐職人、

貧農の倅、永吉が単身江戸の下町に新天地を求め、

木綿豆腐に慣れた江戸の人々を相手に、

上方の柔らかな絹ごし豆腐で、裏町長屋の小店から悪戦苦闘を重ね、

次第に根付き、やがて表通りに店を構えていく過程、

長屋の人々の人情、

商売敵のいやがらせ、

夫婦になった女房や子供たちとのとの愛情と確執、

読み物として息をつかせぬ展開は『面白い!』の一言に尽きる。




心の素直な人が読むならば、素晴らしい小説だといって過言ではない。



ただ私のようなひねくれ者がが読むと、少し違う。



というのは、

まず長屋の人々が人が良過ぎ、

直接の商いガタキも好意的に過ぎ、

永吉が出店することになる表通りの店の老夫婦(ここも豆腐屋だった)も驚くほどの好人物で

、、、、、、『そりゃぁなかろう、、』と思ってしまうことだ。




現実の商売というのはこんなキレイゴトばかりではなく、

そこに私はちょっと引いてしまった感が残った。




とはいえ、それを差し引いても、

痛快にしてほろ苦く、、


、、、、皆さんに一読をお勧めしてもお叱りは受けまいと思う一冊。





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2 コメント

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さざなみ情話 (秘密のあっこちゃん)
2007-07-15 14:53:12
このやるせないストーリーを読んでみて下さい。Pさんに刺激されて、自選短編集の市井篇(時雨の岡)と武家篇(男の縁)を図書館から借りてきました。
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読むという贅沢 (P@RAGAZZO)
2007-07-15 16:51:10
『さざなみ情話』、、乙川優三郎ですね、、

読んでみます。

このところ時代物を読んでいるのは、
実はあっこちゃんの影響です。
少し前ですがあるブログで宮部みゆきの話題になった折、
食わず嫌いの私が『時代物は読まない』と口走った時、
あっこちゃんが『時代物も良いよ』と言ったのが印象的でした。

私たちが数日で読み散らかす小説も、
作家は命を削って時には一年もかけて書くんですものね、、

小説を読むというのは贅沢なものですね。
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