『あかね空』 山本一力
ふーむ、、、この小説は読む人によって評価が分かれるだろう。
物語は、幕府が実質的に重商主義的政策を採った俗にいう田沼時代(江戸中期)の頃、
上方(京都)で修行を重ねた豆腐職人、
貧農の倅、永吉が単身江戸の下町に新天地を求め、
木綿豆腐に慣れた江戸の人々を相手に、
上方の柔らかな絹ごし豆腐で、裏町長屋の小店から悪戦苦闘を重ね、
次第に根付き、やがて表通りに店を構えていく過程、
長屋の人々の人情、
商売敵のいやがらせ、
夫婦になった女房や子供たちとのとの愛情と確執、
読み物として息をつかせぬ展開は『面白い!』の一言に尽きる。
心の素直な人が読むならば、素晴らしい小説だといって過言ではない。
ただ私のようなひねくれ者がが読むと、少し違う。
というのは、
まず長屋の人々が人が良過ぎ、
直接の商いガタキも好意的に過ぎ、
永吉が出店することになる表通りの店の老夫婦(ここも豆腐屋だった)も驚くほどの好人物で
、、、、、、『そりゃぁなかろう、、』と思ってしまうことだ。
現実の商売というのはこんなキレイゴトばかりではなく、
そこに私はちょっと引いてしまった感が残った。
とはいえ、それを差し引いても、
痛快にしてほろ苦く、、
、、、、皆さんに一読をお勧めしてもお叱りは受けまいと思う一冊。
読んでみます。
このところ時代物を読んでいるのは、
実はあっこちゃんの影響です。
少し前ですがあるブログで宮部みゆきの話題になった折、
食わず嫌いの私が『時代物は読まない』と口走った時、
あっこちゃんが『時代物も良いよ』と言ったのが印象的でした。
私たちが数日で読み散らかす小説も、
作家は命を削って時には一年もかけて書くんですものね、、
小説を読むというのは贅沢なものですね。