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『わたしを離さないで』
カズオ イシグロ (著)
私はここに『わたしを離さないで』の紹介文を書こうとしているのだが、
何というのか、、その、、非常な困難を感じている。
つまり、この小説は、何か具体的なことを挙げて紹介すれば
これから読む読者の楽しみ、、んー少し違うな、
、、、恐怖や感動や衝撃を、削いでしまう事になり、
それだけは何とか避けたいと思っているからだ。
「感動」とか「衝撃的」だとか「素晴らしい」とかの使い古された陳腐なフレーズが
皆さんを眠たく退屈にさせることは私も知っている。
しかしこの小説は、一言で言えば
【これまで読んだことのない衝撃的な小説】
という以外に表現のしようが無い。
あなたは読み始めてすぐ、
この小説がキャシーという女性の心温まるヒューマニティ・ノベルだと思うだろう。
その感想は間違ってはいない。
しかしあなたは、イシグロの言葉を借りるなら「知らされているようで知らされていない」。
その事はキャシー自身もそうであり、
彼女や彼女と同じ境遇の『生徒』達には「知らされているようで知らされていない」状態が続き、
、、次第に、あなたは、キャシーたちと共に、
イシグロの非常に抑制された静かで平易な文章によって、
、、全身が総毛立つような、、、
不安や恐怖や嫌悪や憐憫や理不尽や無力感、
、、を、、一度にではなく、、少しずつ、
、、全編にわたって、感じ続けるだろう。
、、、全編にわたってである。
これ以上は書けない。
、、、、、、冷静で穏やかな、
、、、しかし、凄まじい、、、小説だった。
★★★★★
カズオ・イシグロは『日の名残り』でブッカー賞を獲得しており、
この『わたしを離さないで』もブッカー最終候補に選ばれた。
しかし、文学界では『わたしを離さないで』が
イシグロの現時点での最高傑作であるという声も多い。
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bさん、、、ありがとう。