『わたしを離さないで』

2008-07-07 12:18:27 | 文学




『わたしを離さないで』  
カズオ イシグロ (著)



私はここに『わたしを離さないで』の紹介文を書こうとしているのだが、
何というのか、、その、、非常な困難を感じている。

つまり、この小説は、何か具体的なことを挙げて紹介すれば
これから読む読者の楽しみ、、んー少し違うな、
、、、恐怖や感動や衝撃を、削いでしまう事になり、
それだけは何とか避けたいと思っているからだ。

「感動」とか「衝撃的」だとか「素晴らしい」とかの使い古された陳腐なフレーズが
皆さんを眠たく退屈にさせることは私も知っている。

しかしこの小説は、一言で言えば
【これまで読んだことのない衝撃的な小説】
という以外に表現のしようが無い。

あなたは読み始めてすぐ、
この小説がキャシーという女性の心温まるヒューマニティ・ノベルだと思うだろう。

その感想は間違ってはいない。

しかしあなたは、イシグロの言葉を借りるなら「知らされているようで知らされていない」。

その事はキャシー自身もそうであり、
彼女や彼女と同じ境遇の『生徒』達には「知らされているようで知らされていない」状態が続き、

、、次第に、あなたは、キャシーたちと共に、

イシグロの非常に抑制された静かで平易な文章によって、

、、全身が総毛立つような、、、

不安や恐怖や嫌悪や憐憫や理不尽や無力感、

、、を、、一度にではなく、、少しずつ、

、、全編にわたって、感じ続けるだろう。


、、、全編にわたってである。



これ以上は書けない。



、、、、、、冷静で穏やかな、

、、、しかし、凄まじい、、、小説だった。




★★★★★




カズオ・イシグロは『日の名残り』でブッカー賞を獲得しており、
この『わたしを離さないで』もブッカー最終候補に選ばれた。
しかし、文学界では『わたしを離さないで』が
イシグロの現時点での最高傑作であるという声も多い。
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bさん、、、ありがとう。




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