『夜のピクニック』

2008-02-28 12:29:24 | 文学





『夜のピクニック』恩田陸 
第26回吉川英治文学新人賞受賞、第2回本屋大賞受賞、「『本の雑誌』が選ぶ2004年度ベスト10」に選出



本書は上記の受賞作であり、
著者の恩田陸は、他の作品でも数々の受賞及び候補作を著わしている実力者であるといって過言ではない。

ただ、この『夜のピクニック』は、私は不快だった。


恩田に並々ならぬ筆力があり、
その臨場感、心理描写にハッと驚かせるような着眼がある事は認める。

しかし、この題材はとても残酷な側面をはらんでいた。

物語は、ある高校での、1昼夜24時間で100キロを歩き通すというイベントを通し、
ある異母きょうだいを中心とした人間関係を描き出していく。

誰と歩くかは自由であるから、当然仲の良い者同士がつるむ。

恩田の視点は常につるんでいるグループ側にあり、
例えば、主人公の一人である融に思いを寄せ、勇敢に告白する内堀亮子を邪魔者として排斥しようとし、
融も亮子に対し激しい憎しみを覚える。

しかし、
自分に好意を寄せてプレゼントまで用意し、勇気を持って告白してきた異性に対し、
普通、「激しい憎しみ」など覚えるであろうか?

少なくとも私は覚えない。

覚えないし、そんな事を思う人間はものすごく傲慢な、、
いわゆる何様!?って感じなのではないだろうか。

そこに恩田の、繊細なふうに見えて実は鈍感で驕慢である部分が洩れ見えてきて不快だった。


私にはこの物語の登場人物の中で内堀亮子が最も魅力的であった。

私は亮子のようでありたいと思った。


★★☆☆☆






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