陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

氷上のファイナルミュージカル2010(一)

2010-12-13 | フィギュアスケート・スポーツ
フィギュアスケートといえば、最後のお楽しみはエキシビション。
ブログをはじめて以来、GPファイナルのエキシビションを観戦するのは三年めとなります。シーズン中、いちばん楽しみにしていた時間です。本日、午後から所用があったのですが、なんとか間に合わせて帰ってきました(笑)

ファイナルのエキシビションは、男女とも四位からの登場でした。

男子シングル、惜しくも四位に終わった高橋大輔選手。
ラストのラストで表彰台を逃したとはいえ、シリーズに勝ち星二つを並べ、やはり五輪メダリストとしての威厳を示したシリーズ戦でした。
その締めくくりのエキシビションで彼が用意したのは、勝負曲のタンゴやヒップホップではなく、うってかわって静謐なプログラム。フランス映画「アメリ」より。NHK杯のエキシビション(NHK杯2010 氷上のミュージカル)でも拝見したものです。

繊細なピアノ曲に乗って、アンニュイな出だしからじはじまります。
この映画、「地下鉄のサジ」と同様、フランスの美少女がでてくる斬新な演出があるけれど意味が分からない、おとなしめのダダイズムのような作品、という覚えしかなかったのですが。あいかわらず、高橋選手は玄人好みの選曲をするタイプなのか。

振付けのステファン・ランビエールとの解釈のずれを楽しんだといいながらも、そのランビエールに飲み込みが早いと及第点をもらった高橋選手。あまりに静かな曲。静かすぎて、観客も拍手をためらってしまうほどです。その沈黙に近い静けさに騙されてしまいますが、本人いわく、時に激しいジャンプもあり、そこにご注目あれ、と。なかなか難しいプログラムだったようですが、果敢にこなしていました。全般、氷上に吸い寄せていくような滑らかスケーティングの合間に、気負いのない軽やかなジャンプを巧みに取り入れています。選手のボトムが黒いので、重たい闇に囲まれた氷上では宙に浮いているのではないかと錯覚を覚えるほど。まさに神業のような幻想的なステージでした。

ラストはぱたりと倒れこむ儚さで終わりましたが、もちろん、次の舞台ではエキシビション以外では倒れないようにと、ファンはしたたかに願っているわけです。全日本でも高橋ワールドは健在でしょう。


銅メダルに輝いた小塚崇彦選手。
フランス杯のスコアボードを大口あんぐり開けて驚いている顔が流れて、思わず笑っちゃいましたが、ふだんはポーカーフェイスが多い優等生肌。
エキシビションの曲は「フリーフォーリング」
彼はいつもカジュアルな恰好で登場しますよね。リラックスした雰囲気が伝わってきます。今回も、穏やかなギターの音色と男のヴォーカルに乗せて、ゆったりと踊りあげます。
全体としてしっとりとしたムードに包まれていますが、欲を言えば、すこし地味目で遊びがないのですよね。でも、今シーズンは二勝をおさめるなど、大躍進の年でしたね。四年後のソチ五輪での期待もふくらみます。

銀メダルをとったというよりは、二年目の正直でも銀メダルに泣いたというべきか、織田信成選手。
チャップリンとかマリオブラザーズとか、とにかくコミカルな演技を用意してくるのが織田セオリーですが、今年の織田くんは違ってました。
さすがにパパになったので、そろそろ落ち着いた大人びたものをと考えはじめたのでしょうか。ワンランク上のオトコの表現を目指して、渋めにジャズをセレクション。曲は映画「マイ・フェア・レディ」より「踊り明かそう」。

ほんらいは自分の不得手とする分野であったクラシックにも挑んできた今季、ファイナルのSPでは四回転・三回転で観客の度肝を抜かせましたね。しかし、シリーズでは二番手に甘んじました。
ちなみにこの曲、かつて小塚選手もエキシビションに使っていたのを知らずに、本人から聞かされて驚いたようで。

さて、男子の最後はやはりファイナル覇者のカナダ、パトリック・チャン選手。
いつも目の焦点がどこにあるのか気になる選手です。
いきなりベンチの上に寝そべって登場。あら、お休みかしらと思ったけれど、これも演技のうち。プログラムは映画「Don't Worry, Be Happy」より。ガールフレンドと喧嘩別れして家を追い出された青年の物語なんだそうで。
軽妙なリズムに拍子抜けしそうになりますが、迷わず、ジャンプは次々に決めてくれます。
そして怒濤のごとくその絡みつくような足さばきからくり出される饒舌な、あまりに饒舌なステップの数々。やはりうまいですね。これで四回転も跳べちゃうのですから、日本人勢にとっては脅威の19歳です。
アンコールはSP曲の「テイク・ファイブ」
そういえば、この曲はバンクーバーの金メダリスト、米国のライサチェクの選曲で聞き覚えのある曲です。今年はこの曲が運のいい曲だったのでしょうかね。


アイスダンスでは、ファイナル銀メダルのナタリー・ペシャラ/フォアビン・ブルザ組(フランス)がジャングルの女性探検家とターザンをおどけて演じて笑いを誘います。氷上で半裸のターザンなんて、寒くないのかしらという心配をよそに。

ペアで二年連続ファイナル優勝を果たしたという実力派カップル、メリル・デイビス/チャーリー・ホワイト組は結成十四年の年季の入ったコンビネーションワークで、一縷の隙も感じさせない演技内容。スピードを落とさずによくあれだけ息が合うものだと感心しますね。


【参照】
テレビ朝日フィギュアスケートGPシリーズ世界一決定戦2010公式サイト

水谷豊を自局ドラマの映画PRで無駄に登場させたり、サッカー番組のCM(なんてまぎらわしいキス&クライ…)したりと、独占放送をいいことにやりたい放題でしたね、朝日さん…(苦笑)調子にのって、村上佳菜子ちゃんにスマイルで「このあとは、日曜洋画劇場ですっ♪」とか言わせてそう(爆)言わせてほしくないけど。

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