陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

氷上のファイナルミュージカル2010(二)

2010-12-14 | フィギュアスケート・スポーツ
シーズンを闘い抜いたアスリートたちが用意した夢のステージ、エキシビション。
後半はお楽しみの女子シングルです。


放映で最初に登場(実際の登場順とは異なる?)したのは、女子シングル四位の鈴木明子選手。
何やら思わしげな雰囲気でまとった紅いマントの下は、かなり大胆な真紅の衣装。アラビアのハーレムにいそうなエクスタシー溢れる恰好です。なんと、このエキシビションのために実際に習っていたというベリーダンスを熱演。誘うような体のうねりがなんとも扇情的ですね。でも、試合でこれをやりすぎますと刺激的すぎて、目のやり場に困っちゃうかも。明子さん、もうすっかり、はっちゃけてますね。このエネルギーには、あやかりたいものです。
鈴木選手は、その子ども時代を知る解説の荒川静香さんいわく、どんなジャンルの踊りでもこなせていたそうで。
あまり報じられていませんが、鈴木選手はGPシリーズに先駆けておこなわれたフィンランディア杯では、優勝していたのですね。今年は幸先のいいスタートを切っただけに、ファイナルは惜しい。

女子シングル二位のカロリーナ・コストナー選手は、黒一色のスポーティないでたちで、「恋のサバイバル」を。こちらはNHK杯でも見覚えがありましたね。日本人選手に比べると、あまり目立つ演出はありませんでしたが、滑らかに滑走するスケーティング能力は随一。冒険しないタイプなんですかね。

シニア初出場にして銅メダルに輝いた村上佳菜子選手。
浅田真央選手を欠いたファイナルにあっては、ひときわ話題の中心になった16歳。
NHK杯でも既出(NHK杯2010 氷上のミュージカル)ですが、子どもらしいあどけなさの残る試合のプログラムとは一変。大人びた横顔をみせるのがエキシビション。まさに銀盤で千の仮面ももつ少女というべきか、演技派の彼女。最後までセンセーショナルを巻き起こしてやまないのが、佳菜子ちゃん流。
セクシーな女性を描いたミュージカル映画「ナイン」より曲は「Be Italian」、椅子とタンバリンを操って映画のワンシーンを再現してみせます。
椅子をひきずりながらもタンバリンを太腿に気だるそうに叩き付け打ち鳴らすシーンがお気に入りなのだそうで。とちゅう、ジャンプで転倒するものの、ラストはダイナミックなスパイラルで決めてくれました。

インタビューのときはいつも人の目をみて、うんうんと大きく頷くので好印象の彼女なのですが、こういうワルい女への憧れがちょっとあったりするのでは、と感じました。インタビュアーの修造が、笑顔をしきりと強制しておりましたが、調子の悪いときはそれを顔に出したって構わないじゃないの、なーんで選手が(TV局の視聴率稼ぎのために)カメラ映りを気にしなきゃいけないのかしら、と余計なことを考えてしまいました。修造はウインブルトンのコートで追いつめられたときにも、スマイルでラケット振ってたのかよ、ええ、どうなんだい?と問いつめたくなりました(こらこら)


女子シングルのトリを飾るのは、五年目のファイナル進出にしてみごとに初優勝を成し遂げた、アリッサ・シズニー選手。
曲は「ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン」。振付けは、佐藤有香氏です。
エキシビションでも天下一品のビールマンスピンで観客を虜にします。あまり大げさなジャンプの連続技はないものの、暗闇で自在に軽やかに滑る回るそのステージは、さながら氷上を青い炎が揺らめきながら移動して行くような幻想的なムードがあります。

右足をぴんと立てて回転するスピンがかなりの高速で、数えられないほど。足を支えない方の左手を降ろして、よけいな表情をつけないために、よけいに足の高さとまっすぐさが際だつのですよね。それで回転の抵抗も最小限に抑えているような気もします。

優勝者だけに許されるアンコールは、フリー曲「Winter into Spring」
お得意のビールマンスピンが美しいのは、背中と足とがつくる輪がすばらしく正円に近いからでしょう。軸足を加えると整った9の字になっていますよね。ふつうの選手ならば、ぎりぎりでエッジを掴まえている状態になり、ひっぱられている感じがします。それで円がつぶれているのです。
ところがシズニー選手の場合、胴体がほぼ水平になっているんですよね。手足の長さのバランスがちょうどよく、それでいて体が柔らかいためなんでしょう。やはり、あのスピンやスパイラルにはため息が洩れます。

ファイナルでは五位に終わった安藤美姫選手は、腰の調子が思わしくなかったのでしょうか。惜しくも欠場でした。
そのかわり、今シンーズンフリー最高得点を叩きだしたあの劇的な五連続ジャンプの場面が、再び流されていましたね。安藤選手の14歳にして決めたという四回転ジャンプを正式な映像ではじめて見ました。たしかに、あの小さなからだであの大技は驚きです。ミキティのガッツポーズ、コーチモロゾフの旗ふり三昧で大興奮(笑)。空喜びに終わったとはいえ、それでも、あのシーンだけ切り取って大事にしたい。そんなミキティフリークへの想いを感じます。そしてべた褒めフォローするしーちゃんこと荒川さん、デキた解説者ですね。

歴代の名演技コレクションシーンでは、バンクーバー五輪のキム・ヨナ選手のボンドガールや、五輪の大舞台で転倒しながらも、猛烈な高さを誇ったトリプルアクセルを放った伊藤みどり選手も紹介されていました。苦境にあってもあきらめない、フィギュアスケーターの原点ではないでしょうか、伊藤さんは。
トリノ五輪金メダルの荒川静香さんの映像もあってもいいだろうと思われるのですが、解説ご本人ですから照れくさかったのでしょうか。次回はぜひぜひご検討を。

浅田真央選手について、某俳優(笑)直々の推薦で、2009年の国別対抗戦における「仮面舞踏会」が選ばれていました。たしかに、あのとき真央選手はよく動き、よく跳んでいましたけれど。その過去をすべて棄てて、新しい自分のスタイルをはじめようとしているわけですから、あまり本人にとっては参考にならないのですよね。ファンには辛いのですが、本人がもっと苦しいはず。


次の舞台は12月23日から開かれる全日本選手権です。
これが今年最後の見納めとなるでしょう。


【参照】
テレビ朝日フィギュアスケートGPシリーズ世界一決定戦2010公式サイト

【フィギュアスケートGPシリーズスケジュール】
【過去のフィギュアスケート記事一覧】

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