陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

アニメ「神無月の巫女」ブックレットについて(十)

2019-11-04 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女

十月神無月が終わりましたが、拙ブログでの企画はまだまだ続きます。
時期を外しても、神無月愛は年中無休!! おはようからおやすみまで、神無月フィーバーでどっぷり楽しむのがはぐれ者ファンの心意気ってものです。

今年はめでたくも原作連載&アニメ放映開始から15周年でした。
10周年の2014年といえば、たしかウェブノベルの「姫神の巫女」が完結した年ではなかったでしょうかね。さらにさかのぼっての5周年時は2009年で大規模な日蝕が見られた年。この年に、続編と目される『絶対少女聖域アムネシアン』が連載スタートしていたりします。今年はとくに目立った動きはないのですが。令和元年で即位の礼で天叢雲剣がSNSでトレンド入りにつられて、神無月の巫女の話題を出す人も多かった模様。

(追記:原作者先生のツイッターで、大正編のお話がリメイク公開されておりました(大歓喜)。しかし、ものすごく不健全(笑)なので、リンクのみにとどめます→コチラ。 その昔、公式ホムペで紹介されていたんですが、当時は「準備号」と題されての鉛筆ラフ絵でしたね。なお、前世の姫子まがいと千歌音もどきは漫画『円盤皇女ワるきゅーレ』第7巻にも登場します。「温泉巫女」および「続・温泉巫女」 をご参照あれ)

さてブックレットも四巻目。
表紙、愉快な幼女と野獣ペア(のちに「京四郎と永遠の空」でキャラリメイクされる)ですが、今回の千歌音ちゃんポエムはなんとも重いですね──「それは闇の底の底。荒ぶる夜の物語」からはじまって、ちょっと艶っぽい表現もあって、どきりとさせられます。衝撃のあのエピソードを含むこの巻、事態は急展開します。

が、しかし。
「大神神社にて」のコーナー。語り部は大神神社師弟コンビ、大神カズキとユキヒト。
明かしてくれるのは、巫女二人が搭乗すべきはずの剣神アメノムラクモのひみつ。戦闘形態は人型で、封印形態は剣型…というかハサミに近いですね。このブックレットでは女神と書かれてありますが、設定資料集かどこかで、ソウマが搭乗したので雄型になっていて、最終回の陽月の巫女がそろって雌型になったと書かれてあったような。二人の巫女の愛がその力の源泉である、ということは。ソウマにも巫女の因子があるとしたら、ソウマがある程度、姫子への想いが強くなかったら動かせなかったということで。千歌音ちゃんがソウマと姫子をわざと引き離そうとしなかったのは、無意識にせよ、正解だったわけですね。自分がアメノムラクモを動かせないのはわかってしまったので。

神無月世界の神話~オロチ退治篇。
陽と月の巫女になるのは、強き絆と深い愛をもつ高貴な魂を持つ者。神に選ばれた世直しのヒーロー・ヒロインという響きは清々しいですが、それには悲しい儀式が…。

さらに、大神神社の縁起やアニメ本編中の山登りについても言及が。
ファイト、一発う!なロッククライミングをしていた謎の大神師弟。いったい、何をしていたのか。いまだに、ファンにも理解されていないようです(哀)。洞窟のなかに壁画のようなものが見えましたよね。ほんらい、大神神社の当主のみ、巫女とオロチにまつわる秘伝が継承されるはずだったところ、ある事件のせいで、その一部が失われたとほのめかされます。そして、それはいずれ別の物語として語られるだろうとも。

おそらく、このブックレット執筆時点では、アニメ本編でちらっとカットがあった、前世の巫女のお話が構想されていたのでしょうね。2009年あたりに書かれたという、大正時代編のアニメ原案ラフが、原作者先生のつぶやきで公開されていましたが、神無月の巫女にくわえ、京四郎と永遠の空の制作後の資金面やスタッフのスケジュールなどの調整で難しかったのかもしれないですね。大正編なので、すでにアニメ化された「鋼鉄天使くるみ」の設定を活かす予定だったのかもしれませんが、この作品の設定って「京四郎と永遠の空」にかなり流用されていますよね、たぶん。なお「鋼鉄天使くるみ」も今年は20周年です。

それはともかく、このコーナー、さらりと重要なネタばらしをしつつ、ユキヒトさんの物まね芸で笑わせるという、とてもおいしいシチュエーションです。ここ、何度読んでもお腹よじれるぐらい笑えますから。

次ページは、なんと、スタッフコメント。
キャラデザ・総作画監督の藤井まきさん。千歌音とツバサの表情にはとくに苦心したようです。顔で語らせるが、表情でわかりすぎてもいけない。藤井さんは、今年のアニメ雑誌の色紙プレゼントでも、数ある画業のなかで千歌音を描いてくれましたが、それだけ描きやすくて楽しかったキャラのようです。2005年のアニメ雑誌の年賀状プレゼント企画で、柳沢テツヤ監督も千歌音ちゃんなど描いていましたしね。

メカニックデザインの村田護郎さん。
合体オロチロボとアメノムラクモがお気に入りとのこと。もともと合体オロチを先に作って(!)、それを分解して組み立てたのが八体のオロチロボらしいです。アメノムラクモは最後にデザインが決まったらしいですが、とにかく線が多いロボで形が複雑。この記事執筆2018年12月に惜しくも永眠されました。ご冥福をお祈りいたします。

これを動かしたのが、総メカ作画監督の塩川貴史さん。
メカものはあまり経験がなかったけれど、スーパーロボットものを手掛けるのが夢だったとのこと。アイキャッチのAは藤井さんですが、B(ソウマが出る)は塩川さん。お三方、いずれも、得難い仕事であったと感慨深げな文面です。

さて、恒例の「各話解説」。
第七話「恋獄に降る雨」──ソウマと姫子にとっては晴れ上がる夜空がいとまぶしいエピソード。しかし、千歌音にとっては一気に闇沼に突き落とされてしまうできごとが生じる回ですね。いまから思えば、大神くんの絶好調はここがピークだったのかもしれませんが…。千歌音にも禁断の恋に苦しむ弱みがあるように、ソウマとて無傷で無心の強者ではない。最終回からもわかるように、ソウマは終始、千歌音の秘めたる想いには気づいていなかったのでしょうか。お前は女だから女に懸想してはいけないという台詞をソウマが吐いていたら、随分、この作品の印象も、いやそもそも結末も変わっていたかもしれませんね。ウェブノベル「姫神の巫女」では、いけしゃあしゃあと厭味たらしくしてくるのですが。

第八話「銀月の嵐」、いよいよこの回です。正念場の話。
この展開、かなり議論があったようで。制作者が迷ったすえに選びぬき、戸惑ったうえで描ききった、あの千歌音のとった最悪の選択。それは皮肉にも、いまだファンの間で語り継がれる最高(というか最凶、最恐もとい最強)の場面になりましたね。良かったのか、悪かったのかわかりかねますが。この解説でも明らかにされていますが、千歌音は姫子とソウマへの仕返しのために、自分の恋心をくみ取ろうとしない腹いせに、やりたい放題やったわけではないんですね。姫子に嫌われるために敢えてその行為に及んだのであって。けれども、見かたによっては、これまでたまりにたまった欲望をぶつけたようにも見えなくありません。ちなみに、原作ではこのあたりがかなりハードに描かれていますので、ご注意ください。

たとえば。
千歌音が別の選択を、姫子を怒らせるために誰かを傷つける、死なせる。
そういう道もあったでしょう。ソウマとか、真琴とか。でも、それはできない。巫女を憎悪に駆らせていては、怨念の塊であるオロチ神に対抗できないからであろうと。

この場面、千歌音がそうしたのは、「姫子がそれを気持ち悪いと思うだろう」という当てがあったはずです。その予測がどこからきたかといえば、あの髪を触ったときに姫子に嫌がられたときだったのかもしれないですね。でも、そのいっぽうで、わずかな光明として姫子の好意にも縋っていたに違いない。次の回で姫子があんがいその気になっていることに気付いたに違いない千歌音。しかし、月の巫女として覚醒し、巫女の真実を知りえてしまった彼女には、残された選択肢はひとつしかありません。巫女同士の愛情を最大限に深めて、最後に降り切らなければならない。姫子の涙を知りながら、痛みを感じながら、もう後戻りできない道を歩み続ける。千歌音が姫子から隠した髪留め、ソウマから奪ったロボットとともに。

「手折られた花は、二度と咲かない。哀しい夜の物語」としめくくられたポエム──千歌音が折ってしまったのは、自分の輝かしい未来、姫子とともに夢見た花園の時間でした。そして、夜が明け、また眩しい朝がやってきます。


アニメ「神無月の巫女」ブックレットについて(まとめ)
月には誰も知らない朽ち果てた社があるの。全ては其処からはじまりました──。感動の全十二話を堪能したあと、再観賞用に、保存用にオススメのDVD。今回はその旧版DVD付録のオールカラーブックレットで、作品をふりかえります。

★★神無月の巫女&京四郎と永遠の空レビュー記事一覧★★
「神無月の巫女」と「京四郎と永遠の空」に関するレビュー記事の入口です。媒体ごとにジャンル分けしています。妄言多し。



この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ★★神無月の巫女二次創作小説... | TOP | HSP(ハイリー・センシティブ... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女