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『マリみて』最新刊を読んでレヴューしようと思ったのですが、その前に確かめたいことがあって、読み直したのがこれ。
余談ですが、私、マリみてシリーズは全巻買いそろえていますが、刊行順ではなくてお気に入りの話を本棚の前にもってきてます。で、この『いとしき歳月』前後巻はですね、いちばん奥にありました(汗)一読した当時としては記憶に残らなかったのかもしれませんね。
というのも、この先代薔薇様がたの卒業をあつかったこのエピソード、アニメで先に観ていたんですよね。で、アニメと原作であまり内容に遜色なかったように思われたので、とくに印象深くなかったのでしょう。しかし、いま読み返してみますとね、けっこういろんなことに気がつかされます。
この前編は、あのデコ様こと鳥居江利子さまの不純異性交遊(なんですか、この死語みたいなモンク(笑))疑惑と、三年生を送る会のエピソードとの二本立て。表紙をおひとりで登場なさった江利子さまが主役回といえて、頁もそちらに多く割かれているのですが、ぶっちゃけ、この部分があんまりおもしろくないです(どキッパリ)だって百合の乙女の花園に、ムサい殿方が複数人乗り込んでくるんザマスよ?あ、でもこの黄薔薇エピソードのなかに、けっこう聖さまと祐巳の重要な対話が合ったりするので,要注意だったりもします。
ちなみに言っちゃわるいのですが、私、江利子さまって『マリみて』キャラのなかであまり好きではありませんでした。百合絡みがあまりないのと男に走ったせいもありますが、優等生って言われてるわりにはどこかアンニュイだったり、由乃へのバラエティギフトでも難問つけたりで、なにかトラブルメーカーみたいな扱いされてますよね。容子さまや聖さまみたいに、先輩として助け舟を出すこともないし。
でも、彼女の好感度がアップしたのは、内藤克美とのエピソード(『フレーム・オブ・マインド』収録)ですね。ああ、これこそ、「マリみて」のキャラの本領発揮だと思いました。でも、あまり彼女視点の話がなかったので、感情移入しにくいキャラではありますね。ていいますか、甲斐性のないコブつき三〇代とくっつけようとしている点でもういいよ、と思ってしまう。
さて、この巻、注目なのは卒業まえのエピソード。
祐巳が三年生を送る会の準備ではりきりすぎて倒れてしまう。最新刊と読み比べていただくとわかるのですが、この頃の祐巳ってほんとに頼りない新人さんだったんですね。別人かと思うくらい成長したと。にしても、その彼女の成長の裏には、数えきれないくらいの、それこそあわや姉妹の縁切りかというほどの事件が積み重なって、けれど卒業前の先輩方からあらかじめ薫陶をうけていたからのですね。その点では、いまの由乃の迷妄っぷりは何か可哀想に思えますね。山百合会所属歴は祐巳より長いのに出し抜かれてますし。あと先読みしすぎかもしれないですが、二年も下で妹にむかえようとする菜々ちゃん、もし由乃の妹になったとして由乃が卒業したら二年間も姉不在で山百合会背負っていくってキツいですよね。もちろん、このシリーズがそこまで続けるのかはわかりませんが。にしても、変わり種を妹にしたがるというのは、隔世遺伝で黄薔薇姉妹にうけつがれているらしいですね。
この巻読みどころは、容子さま視点の場面。自分が妹にしただけでは変えられなかった祥子の頑な部分をときほぐしてくれた祐巳ほか一年生組に対する優しい視線がなんとも微笑ましい。あと志摩子のことを「遺言」しておく聖さまとか。「リリアンで傷ついたけれど、救われたのもリリアンだった。やさしくて傷つきやすい子たちが集まるこの場所が、卒業を前にして愛おしく感じられる」という白薔薇の気持ち、自分のハイスクールライフに照合させてみると、頷くところ大きいですね。
あと、この巻で登場した美術部のコンビは『卒業前小景』でも再登場。ネーミングに笑いましたけど、今野先生は印象派がお好きなんでしょうかね?(笑)