陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

『京四郎と永遠の空』第二・五話「逢瀬」 その1

2007-06-16 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女


拝啓、私の同志様。
逢瀬です!密会です!ふたりのらんでぶーなんです!

『京四郎と永遠の空』DVD二巻特典「逢瀬」の感想お届けいたします。
いわずもがな、この話は第三話にある再調整前のカオンちゃんとヒミコとの、ひたすら甘く切ないひとときを描いたものであります。この「逢瀬」を観てから、再度『京四郎』全編のかおひみシーンを観なおすと、ほんと泣けてきます。

ところでこのエピソード、川澄さんの証言から察するに、三話以降よりも前に制作、アフレコされたもののようですね。もしや本編に含める予定だったのかもしれませんが、私はこれ、DVDの特典でよかったなぁと思っています(TVオンエア視聴時には、さんざん二人のラヴラヴが観たいとかほざいてくせに(苦笑))
これがあったら、五話、六話あたりの緊迫感はおそらく生じなかったでしょう。四話ラスト調律を終えたカオンの瞳に宿したヒミコの姿。そして五話では一転、まるで空気でもみるようにヒミコのことなどもはや意に介さないカオンちゃん。なのに六話では、無意識のうちにヒミコを想っての…あの行動。このあたりのコインの表裏を軽やかにひっくりかえすように、視聴者の期待なんぞ弾き飛ばして、素人はだしな憶測を潔く裏切ってゆく展開は、いまみても瞠目に値します。もし、あらかじめカオンちゃんのあの固い決意を、ヒミコの揺るぎなき想いを、知り得ていたならば、視聴者はもうすっかり安心してしまって二人の行く末にあれほど心惑わせられることはなかったのだと。不謹慎なのですが、二人の平穏無事で幸せな寄り添いを願いつつも、やはり刺激的なプロットを求めてしまうもの。こんなアンヴィヴァレントな望みを、スタッフはよく叶えてくださいました。脱帽です!ま、一応敵方でしたから、そんなに見せ場をつくってもというのもあるでしょうが。

さて、では「逢瀬」内容について詳しく切り込んでまいりたいと思います。

五月の夕光が黄金いろにあたためるアトリエで、創作の準備を整える少女。
笑顔で出迎える戸口には、うるわしき待ち人が現れました。

その第一声、「ごきげんよう」

うわ…っ!懐かしいッ!川澄さんも仰ってましたけれど、このひとこと、千歌音ちゃんまんまですよね。カオンちゃんて人間離れしてるといいますか、千歌音ちゃんみたいに感情を抑えているクールビューティってわけでなくて、本当に最初から何ものにも心を動かされなかった無機質な存在として描かれているわけで、そのあたりが外見似ていても物足りなかったわけですが…。この言葉、お嬢様お嬢様な千歌音ちゃんを思い起こします。

さて挨拶もそこそこに、ヒミコの痛々しい姿に顔を曇らせるカオンちゃんです。
第二話でほのめかされていたように、ミカ様のお仕置き部屋で心ない折檻をされてしまったヒミコの頬には絆創膏、そして右手(正確には手首ですが)には包帯が。
こんな傷ついた右手で、絵筆を握っているのかと思いますともう泣けてきますね。
カオンちゃんはたまらずこんな自戒の言葉を口にします。

「私のせいね…ごめんなさい」

もうどうみても『神無月の巫女』第十話ですよ!
あの包帯外したら紋章が手の甲に!とか、
制作後に疲れた二人がお布団ひとつに身を休めて枕ふたつに顔を埋めて見つめ合ってしまう!とか

…もちろん、そんな展開はこのあとありえないですけど。

でも、このあと一時的に心の別離と凄絶なる修羅場を迎えてしまう二人を想いますと、このエピソードをあの剣の舞踏会前夜の逢瀬になぞらえたのは、なんとも粋な計らいといえましょう。
そういえば第十話、姫宮邸前庭にあるオシップ・ザッキンの抽象彫刻みたいな人体像といい、今回のヒミコのアトリエにある石膏彫刻といい、背景美術スタッフの趣味が伺われる回でしたね。

「それよりはじめよう、時間ないし」
で、手ずからカオンちゃんを脱がしにかかるヒミコ(爆)!!
ヒミコ、君は何を
焦っているんだッ?!


いやはや、ナイスですっ!視聴者はこの瞬間を待ってましたッ(殴)


しかし、ここの構図どうみても新婚カップルですね(笑)「アナタ、お風呂にするぅ~?それとも…」と背広を脱がせる新妻みたいな(下世話な妄想ですいません)


さてソファで優美な女神さまポーズ決めているカオン様。そして一心不乱に画布に筆を走らせるヒミコ。
と、カオンちゃん、熱っぽい眼差しを注ぐ!注ぐ!(大歓喜!!)
どうみても
誘い目ですッ!!


もう、ココ、悩殺ものですね。獲物狙っている女豹みたいな。でも、清純な千歌音ちゃんと違ってワイルドな感じがするカオンちゃん、美麗なのですが、ちょっと寂しかったりもします。視線がかちあってしまったヒミコは思わず赤面してキャンバスに目を逸らしちゃいます。そんな彼女の反応を楽しんで、悪戯っぽく微笑んでみせるカオンちゃん。うはっ、可愛すぎます!!これぞ、まさに対姫子専用宮様スマイルですね!!
ちなみにこのカオンちゃんの笑顔、本編第十一話でカオン救出に向かうヒミコの回想ででてくるものです。当初(その回のカオンちゃんの作画が乱れ気味でしたので)サービスカットで挿入されたものだと単に考えていたのですが、まさかこの特典話と通じていたとは。カオンちゃんの記憶が削られようと、拉致されてしまおうと、ヒミコはただひたすら、この時の愛しい人の笑顔に辿り着くために、この日のふたりの幸せに戻るために必死に頑張ったのですよね。九話以降は話に先が見えた感があって当時かなり醒めた目線で眺めてしまったのですが、「逢瀬」を観てから新たな発見があったりして『京四郎』観るのが数倍楽しくなりました。
悲喜こもごもあったりする作品で前半部がすばらしかっただけにクライマックス一歩前に感じる倦怠が惜しまれるのですが、『京四郎』は前作と同様にストーリー構成は練られたものだと感じられます。



【その2に続く】

Comments (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ヤミと帽子と本の旅人』 | TOP | 『京四郎と永遠の空』第二・... »
最新の画像もっと見る

2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
目が…目がぁ!(ムスカ風に) (SS)
2007-06-17 00:51:02
又短文で…
くっ……!此の文章読んだだけで眩しすぎて目が潰れる…!
レンタル待ち…;;

返信する
『神無月』は滅びぬ。何度でも蘇るさ! by 寺田農 (万葉樹)
2007-06-17 05:53:43
ごきげんよう、SS様。
「逢瀬」は良いですよ~、そりゃもう、鼻の下のばしながら「い・い…」(by ドーラおばさんの手下)と連発してしまうくらいに良いです。カオンちゃんの裸体の眩しさに目を奪われ、ヒミコのいじらしい涙にこころ削がれつつも、何度も何度も観てしまう良作なんです。もう万葉樹は「逢瀬」中毒なんです。未見の方にはぜひぜひ40秒でレンタルすることをお勧めします(無理です)

ところでこのレヴューかなり盛大なネタバレになっていきますので、なるべくなら事後にお読みになられたほうがよかろうかと。
コメントありがとうございました。
ではでは。
返信する

Recent Entries | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女