奇想天外で、ストーリーに脈絡がないのに、なぜかひきこまれるお話はままあるもので。筋道のあれやこれやを言い出したら切りがないのですが、最後の一瞬で納得させられる、そんな映画だったといえるのが2005年のオランダ・ベルギー合作映画「ゾウがお家にやって来た」。ただし、これはどちらかといえば女性向けかもしれませんね。
家族ぐるみで象が大好きな少女ポニーは、ママとおばあちゃんの三人暮らし。
ママはいつも気分が憂鬱で、普通じゃないけれど、ポニーはそんなママが大好き。面倒見のいいおばあちゃんが家事をしてくれるから、なにも問題はなかった。しかし、ある日、おばあちゃんが交通事故で亡くなってから生活が一変。児童相談所の相談員がやってきてママと引き離されると危惧したポニーは、ママをなんとか普通の母親にしようとあれこれ頑張ってみるのですが…。
この母親の症状、精神病の一種の躁鬱状態らしいです。
見た目は元気そのものなのですが、気分が昂揚するときと落ちこむときの差が激しく、まともな生活ができない。傍から見れば怠けているようにしか見えないけれど、行動をみればどこか常識にそぐわない。ママが保護者として表に出てくるようになってからというもの、ポニーはクラスでも孤立し、親しかった男友達とも疎遠になってしまいます。子どもが親や家庭の事情でいじめられたり、苦しんだりするのって辛いものですよね。それでも、ポニーはこころ優しいので、ママにも八つ当たりできない。
自分の下に弟がいればいいのにと無謀なおねだりをして、ママを担任の先生とくっつかせてみようと画策するもののうまくいかない。しかも、ママときたらいけすかない靴屋のプレイボーイ男と交際しだしたりして、ポニーは気が気ではない。自分がママに捨てられるのではないか、と孤独感を深めていくポニーの真意に気づいたママは、なんとゾウをプレゼントしてくれて。
途中までは、子どもの目線で子どもながらにどうしようもない大人の事情を切なくもコミカルに描いてみせているのですが、いきなり家の庭に象が現れたあたりから、むりやり感が。しかし、最終的にはポニーの家にやってきたのは、象ではなくして、「新しい家族」だったのですね。
けっしてひとりでは生きていけない子どもだからこそできうる選択肢だといえるのですが、育児放棄、児童虐待もろもろで家族が崩壊し、シングル世帯が多くなった現代においては、他人と共生することのたいせつさを説いた良作といえます。ただし、そううつ病の患者がいることについての対応としては、深く掘りさげていないような気もしますね。
監督はマルティン・コールホーフェン。
(2012年11月26日)
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ママはいつも気分が憂鬱で、普通じゃないけれど、ポニーはそんなママが大好き。面倒見のいいおばあちゃんが家事をしてくれるから、なにも問題はなかった。しかし、ある日、おばあちゃんが交通事故で亡くなってから生活が一変。児童相談所の相談員がやってきてママと引き離されると危惧したポニーは、ママをなんとか普通の母親にしようとあれこれ頑張ってみるのですが…。
この母親の症状、精神病の一種の躁鬱状態らしいです。
見た目は元気そのものなのですが、気分が昂揚するときと落ちこむときの差が激しく、まともな生活ができない。傍から見れば怠けているようにしか見えないけれど、行動をみればどこか常識にそぐわない。ママが保護者として表に出てくるようになってからというもの、ポニーはクラスでも孤立し、親しかった男友達とも疎遠になってしまいます。子どもが親や家庭の事情でいじめられたり、苦しんだりするのって辛いものですよね。それでも、ポニーはこころ優しいので、ママにも八つ当たりできない。
自分の下に弟がいればいいのにと無謀なおねだりをして、ママを担任の先生とくっつかせてみようと画策するもののうまくいかない。しかも、ママときたらいけすかない靴屋のプレイボーイ男と交際しだしたりして、ポニーは気が気ではない。自分がママに捨てられるのではないか、と孤独感を深めていくポニーの真意に気づいたママは、なんとゾウをプレゼントしてくれて。
途中までは、子どもの目線で子どもながらにどうしようもない大人の事情を切なくもコミカルに描いてみせているのですが、いきなり家の庭に象が現れたあたりから、むりやり感が。しかし、最終的にはポニーの家にやってきたのは、象ではなくして、「新しい家族」だったのですね。
けっしてひとりでは生きていけない子どもだからこそできうる選択肢だといえるのですが、育児放棄、児童虐待もろもろで家族が崩壊し、シングル世帯が多くなった現代においては、他人と共生することのたいせつさを説いた良作といえます。ただし、そううつ病の患者がいることについての対応としては、深く掘りさげていないような気もしますね。
監督はマルティン・コールホーフェン。
(2012年11月26日)