陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

DV被害者のための定額給付金

2009-04-21 | 政治・経済・産業・社会・法務


そろそろ五月も近づいているので、定額給付金の給付が全国的に進んでいる頃あいかと思う。当地はまだ音沙汰はないのだけれど、とりいそぎ、買いたいというものはないので、あまり期待しないでいる。

ところで、こんな耳寄りなニュースを聞いた。
福岡市 DV被害者にも「給付金」 世帯主と別居 独自財源で救済

福岡市が、DV(ドメスティック・ヴァイオレンス=配偶者による暴力)被害者で、住民票を移動させないまま世帯主と同居している市内在住者を対象に、定額給付金と同額の「給付金」を独自支給するという。
DVの被害者は、居住地が発覚するのを恐れて、住民票を移動させないまま、別の場所で暮らすことが多い。とうぜん、被害者は受けとれないし、加害者が世帯主だった場合、被害者とその子ども、両親などの分をまるまる受けとれてしまう。これは由々しき事態である。

そのため、福岡市は独自財源を組み、「二月一日を基準として、市内に居住している被害者と家族のうち、裁判所の保護命令が出るなど、公的機関から何らかの支援を受けた事実のある人については、定額給付金相当額を支給する方向で調整している」ということだ。
現在、DV被害者の申請方法を検討中とのことだが、もし実現されれば、このうえない善処であるにちがいない。ただし、通常よりは支給は遅れる見込み。


ただし、問題点もあるだろう。
たとえば、住民票が福岡市にあり、かつ別居後も福岡市に在住している人間に限られるとのこと。さもないと、被害者の給付期が二重給付になってしまうからだろうけれど。居所を知らせないまま別居するというぐらいなのだから、たいがいの被害者は、市外、もしくは県外に移住している場合だってあるだろう。つまり、被害者が福岡市に逃げてきた場合、住民票のある市外ですでに給付金がはじまっていれば、とうぜん受けとる権利がうばわれる。住民票が福岡市にあっても、市外で別居していた場合は、管轄外だから、救済されえない。基準日はとっくに過ぎているのだから、いまから急いで市内に引っ越したとしても無理だろう。結果、あきらめざるをえない。
だいたい、家庭内暴力を裁判沙汰にしている被害者はどれくらいいるのだろう。すこしまえに、潜在的なDV被害者は女性の約三割にのぼるというおそろしいデータが発表された。こうしているあいだにも、毎日、暴力をうけて泣きながら過ごし、別居できずにいる例もあるのではないか。

昨年大ヒットしたフジテレビドラマ「ラスト・フレンズ」には、長澤まさみ演じる女性が、恋人から暴力をうける場面がある。しかし、彼はふだんは品行方正な公務員で、しかも暴力を働いたあとに、かならずひとが変わったように泣き伏してしまう。そのため、長澤まさみは暴力をふるう恋人をなんども許してしまい、暴力のスパイラルにおちいってしまうのだ。こうした例は、実際にありうるからこそ、多くの視聴者の共感を呼んだのではないだろうか。

なお、DVとは殴る蹴るなどの「肉体的暴力」はむろんのこと、暴言や無視という「精神的暴力」、行動や自由が束縛される「社会的暴力」、生活費などを渡してもらえない「経済的暴力」そして望まない妊娠や性交渉を強要される「性的暴力」もふくまれる。
家庭裁判所の職員によっては、こうした事実をいくら訴えても認めてくれないケースもあるのだ。事実、生活費を夫からまったく渡されたこともなく、休日の外出も制限され、また彼の都合で職場から遠い新居に住まわされて体調をくずし、別居した妻が離婚を申請したが、裁判所がわがまったく相手にしてくれなかった例を知っている。こうした不幸な例はたくさんあるだろう。

とはいえ、すこしでも困っている被害者にも、給付金が届く配慮をした英断は多いに評価されるべきだろう。
このDV被害者の定額給付金救済策は、すでに札幌市、旭川市も採用している。船橋市は、二重払いもやむなしと、定額給付金や子育て応援特別手当を受け取れない家庭内暴力(DV)被害者とその家族に、市独自にそれぞれ同額の「ひまわり応援手当」を支給すると発表した。

もちろん、DVの被害者が女性ばかりとは限らない。男性が暴力をうけている例も、近年は増えている。しかし、身体への暴力でいえば、圧倒的に体格差で女性のほうが不利。ましてや、別居した女性、しかも幼い子どもを抱えてのそれとなると、自立した生活を営むのはなかなか難しいだろう。この不況期、子どもの病気で仕事を急に休ませてくれるような寛大な職場は、ほとんどなきに等しいのだから。それにだいたいにおいて、結婚した場合、男性が世帯主になることが多いのだから、ほぼ大半は被害者女性への救済とかんがえられるのではないだろうか。

すでに給付が終わっているような自治体では手の打ちようがないが、今後、多くの自治体が、なるたけDV被害者への対応については前向きに検討してほしいと願うばかりである。
それにしても、許せないのは、暴力を与え、その暮らしをうばっておきながら、被害者家族ぶんまで平気な顔をして受けとれるような加害者が、すくなからず存在してしまうということだ。もともと、犯罪服役者までが住民票がある限り、受給資格があることにすら怒りを覚えてしまうのだが。

なお、男女間のDV被害について検討されているのだが、とうぜん、児童虐待の被害者も救済されるべきだろう。しかし、こちらのほうも、なおさら認知がむずかしいのではなかろうか。従来、世帯ごとに配布していた国民健康保険証を各個人ごとに分割して、親が保険料を払っていなくても、児童が医者にかかれるように配慮はされてきたが。ぜひとも、一考してほしいものだ。

飲酒運転の厳罰化がすすんでいるが、DVや児童虐待もぜひとも重罪あつかいにしてほしいものだと、思う次第。

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2 Comments

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Unknown (Sue)
2009-04-24 21:05:15
長澤まさみ演じるみちるは錦戸亮演じるそうすけと結婚していませんよ、ただの彼氏で同棲してるだけだと思います
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Unknown (万葉樹)
2009-04-24 22:40:31
失礼。かなりの勘違いですね(汗)
半年ぐらい前に観たので、細かな設定をど忘れ。

ふだんあまりドラマ観ないせいかDVをあつかったものといえば、あれしかないと思っていたので、ここでの例にはふさわしくなかったかも。
長澤まさみが、恋人の扶養家族にでもされていない限りは、あてはまらないですね。

結婚まえに男女の関係のふたりが同棲という話を、あまり身近な実例で知らないので、思いこみが先走ったようです。
そういや、あんなふうにルームシェリングしてるひとたちって、住民票は親元に置いてるんでしょうかね
からだは置いてないけど、パラサイトシングルと変わらないのでは、とか思っちゃいますね。

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