陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

インボイス制度開始までの業務フロー

2023-09-24 | 政治・経済・産業・社会・法務

インボイス制度が令和5年10月1日からスタート!
買手は売手に適格事業者の登録をしてもらい、登録番号の記された請求書等を交付してもらわないと、仕入金額の消費税を税額控除できません。

この対応に昨夏から追われてすでに1年余り。
経理員としては、ひじょうに神経を使う制度です。いったいどういった点が事務負担になるのでしょうか。事前の業務フローを検証してみます。

STEP-01:インボイス登録の要否
自社が消費税課税事業者であるならば必ず登録。問題は売上先しだい。相手が消費者や免税事業者ならばインボイス交付は不要。課税事業者だけども、簡易課税制度を選択するならば不要。そして、現在、免税事業者の個人事業主や零細規模企業は、消費税の申告がいやなので、課税事業者になりたがらない。もともと、売上1000万以上でなければ消費税納税の義務はなかったので。けれども、買手からしたら売手が登録してくれないと消費税を税額控除できないので困るわけですね。消費税分を払いませんよ、と価格交渉しても、相手さんは値上げして実質税込金額に価格設定する可能性もあるからです。

STEP-02:取引ごとの書類の確認【売手】
消費税が課税される取引は、売上でなくとも、普通の雑収入をも含む。インボイスとは請求書、納品書、領収書などどれも対象。レシート一枚であっても。電子データなのか、手書きの紙なのか、取引先ごとに確認する。

STEP-03:インボイス取引かの確認と仕入先への相談【買手】
商品や資材の仕入れ、経費において、インボイスが必要な課税取引か確認。少額取引や交通費などは不要のものもあり。自社が簡易課税制度適用ならば不要ですが。仕入先が免税事業者ならば経過措置(50%・80%)もあるものの、やはり、課税事業者になるかの相談、場合によっては価格交渉も。

STEP-03:インボイス化する書類とその交付方法【売手】
インボイスには、売手側の「登録番号」「適用税率」「消費税額等」の記載が必要。端数処理の仕方にもルールがあり、値引きや送料負担を行っている場合もその旨を記載した支払通知書や、仕入側から発行する仕入明細書もインボイスにできます。家賃などは契約書と通帳、追加でインボイス番号を記載した書類を整えればいいとされています。このように、複数の書類をセットでインボイスとすることも可能ですが、それを郵送するのか、電子送付するのか、など取引先の求めに応じて異なるため、対応が難しいのですね。

STEP-04:インボイスの保存方法の検討【売手】【買手】
買手として仕入先から授受した請求書等に限らず、自社発行のインボイスの保存も。改正電子帳簿保存法を契機に、紙ベースをやめて、クラウド管理をすれば保管場所もいらず、検索して探しやすくなりますね。紙出力でスキャナ保存でもタイムスタンプ付与が必要ですので、やはりシステム導入するか、抜本的な業務フローの見直しが必要に。

STEP-05:帳簿への記帳、税額計算方法【買手】
仕入税額の計算は積上計算と割戻計算、これは売上税額と足並みをそろえなくてはならない。経過措置の適用を受けるならば、区別して記帳。さらに、区分記載請求書の保存も必要。


売手としての準備、買手としての準備、両方あります。
インボイス番号の収集自体は、買手としての仕入先から行えばいいのですが、売買相殺がある場合は、売上先からもいただいています。

私の勤め先は商品価格が10%課税だからまだよいものの。
サービス業での軽減税率が混在する業種は、それはもう大変なのではないでしょうか。わが社でも、経費によっては8%(贈答品など)や非課税もあるので、領収書のチェックに苦労しています。端数処理で消費税差額も発生しますし。

わが社は外注さんが免税事業者ばかりですが、消費税はお支払いすることにして、ほんらいは相手が請求書を発行すべきところ、外注明細書を私が作成して交付することにしました。

経理員ですからインボイスに限らず税制改正にも目を光らせていますが。困るのは、経理の事情を理解せずに、営業員がかってに得意先に請われるままに納品書の日付をずらしていたりするパターン。請求書を再発行せねばならず、請求締め日や月をまたぐと、試算表の売掛金や売上額も修正せねばならず、大変な労力になります。

返品や価格訂正があれば、インボイスを再交付せねばならず、その手間もかかってしまいます。
とにかく、このインボイス制度、かなりの事務負担を強いるものでして。経理ソフトの開発会社はクラウドなどの新しいサービスを宣伝してきてくれますが、正直、わが社の業務で必要かと思うような贅沢な機能もありまして、見合わせている次第です。

このインボイス関連の資料を眺めているだけで、もう時間を奪われててしまうのですね。夏休み中はこれで疲弊しました。現在もストレスいっぱいです。

まあ、実際は軌道に乗ったら、あんがいすんなり行くのかもしれませんが。うちは、領収書などを電子保存するのにパソコンが使いづらい仕様になっているので(業務用のデスクトップ型PC二台と一台のプリンタを複数人で使いまわしている状態)、電子化なんてなかなか覚束ないのではと絶望的な気分になります。せめて、経営者が自分の書類を作成する分には、デスクにモバイルのノートパソコンでも置いて、それを使ってくれたらいいのに、と思うのですがね。


(223.09.02)





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