陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

消費増税、その道しかないのか?

2017-10-06 | 政治・経済・産業・社会・法務
日本でいちばん日本のことを考えて、眠れない夜を過ごしているのは誰だと思います?
やはり、それは日本の内閣総理大臣ではないでしょうか。

べつに自民党を利するわけではありませんが。二十歳で初の選挙権得たときに政治家アレルギーから訳の分からんミニ政党の名前を書き、2009年の民主党連立政権にかすかに期待もしてしまった私ですが、いまは政権を放り出さずにがんばっている安倍政権には、多少の希望はあります。そして、希望という名の党には希望はない。安倍さんの『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』や麻生さんの『とてつもない日本』を読むと、政治家の皆さんだって日本の将来のことを真剣に考えているとわかる。

衆議院議員総選挙2017年秋の陣。18歳から投票できる、はじめての衆議院選挙。
自民党は公明党ともども余裕しゃくしゃくで、公約を発表。それらにおおむね同意ではありつつも、「全世代型社会保障」を掲げて、延期されていた消費税増税に踏み切る構え。しかし、国債返済にあてて財政健全化をめざすよりも、歳出増をほのめかす。これに債券市場が反応して、国債の売却が進み、長期金利が上昇中。国債の売りが多いと、古い債券の人気が下がって価格下落するので、同じ国債の額面価格でも利回りは上昇するのですね。長期金利が上昇すると、住宅ローンや企業の融資の利払いもアップ。そして、日本の借金の利子ももちろん高くなります。就職活動される学生さんは財務状況が悪化している企業は受けたくないし、大人でも怖くてその企業株や社債を買いませんよね。すこしでも財政再建をしないと、日本が国際経済上、信頼を失ってしまうんです。

経済学者のケインズは、不景気の時には公共事業を増やし、失業者の保障をして社会福祉の支出を多くすべく国債を発行し、景気が上向けば支出を引き締めて、借金の返済に取り組めばいい、と提唱しました。しかし、いまはその逆で、せっかく景気が多少良くなってきたのに、どんどん支出をふくらませている。超高齢化社会という未曽有の事態に、従来の経済政策モデルが通用しなくなっている。

民進党は、小池さん擁する希望の党と、枝野さんが突如たちあげた立憲民主党に分裂。枝野さんは堅実そうだから、反自民派の票集めに期待がかかります。ただし、公約はまだ不明。旧民主党は支持母体が労働組合や日教組なのに、教師や労働者の待遇改善には何ら貢献できていないですよね。自民党議員への稚拙きわまる批判ばかりしないで、建設的提案をしてほしい。

希望の党の公約も発表されましたが、消費税増税凍結を明記。
しかし、これも上述の理由で、財政健全化にはいずれ必要だから、主婦層などの支持は得るでしょうけれど一時しのぎ。消費税増税の代わりに、企業の内部留保に課税するとの案。たしかに、企業は社員の賃金引上げもわずかで、溜め込んでいる。しかし、高度なIT化や法改正による規格変更などで設備投資に悩む企業もいる。企業が経営悪化すると他企業に買収され、経営母体が大きくなったはいいが、現存社員のリストラを招く恐れがあります。まだ日本国内同業他社ならばいいけれど、シャープのように海外企業に売られたら…。それに企業がプールした預金に課税という前例を政府がつくってしまうと、いずれ、国民それぞれの口座預金残高にも資産税として課税しはじめるかもしれません。米国トランプ政権に倣わずに、法人税は下げなければよい。法人税が発生していない経営の苦しい中小企業さんは大助かりですし。

たしかに消費税増税すれば消費は冷え込みますが、駆け込み需要もありますし、商品やサービスをいかに魅力的に売り込むかに知恵を絞るのは商人の努力のしどころです。日本はこれまで食品など生活必需品をややないがしろにして農林水産業を衰退させ、国土保全を脅かし、そのいっぽうでめったやたらと娯楽市場を持ち上げはじめたきらいがあります。こうした産業構造を、いまこそ変える必要があるのでないでしょうか。ギャンブル依存症が先進国きって最悪の比率なのに、カジノ施設で儲けようなんて、国を滅ぼす愚策です。

安倍さんが子育て世代にとくにアピールをしているのは、「保育園落ちた、日本死ね」と騒ぎ出すような方々の票離れを恐れているからなのでしょう。幼児教育の無償化は歓迎します。最近は、幼稚園と保育園のセットになった認定こども園が増え、自治体の補助金も増えつつあるので、子を預けた親が働きやすくなってはいる。大都市圏では人口が過密集中しすぎて、入園するのもたいへんですが。少子化なので、きょうだいや近所に遊び手がいない子どもたち。幼児期から社会性をつけさせるために、幼稚園や小学校にきちんと通わせておくのは推奨されるべきです。最近は、企業内の保育所開設も進んで、保育士さんの求人も多いですよね。でも、労働環境がよくない事業所もあるので、保育士資格を眠らせている人も多い。もったいない。

好景気に見えるけれど、2016年度の税収は7年ぶりに前年割れ。
社会保障の担い手が少なくなって、医療費や社会保障費の支出が増えています。高校や大学に通うと学費はかさみますが、高校はいいとして、大学進学は費用対効果に疑問の声が多いですよね。給付型奨学金もできたし、一部の地方優良企業が奨学金弁済を申し出てくれる配慮もできましたし、高等教育の無償化は、世帯所得や学生本人の能力、社会への貢献度を吟味した上で限定すべきでしょう。失業手当だって、就労意欲がある離職者に与えられる。学費を社会保障ととらえるならば、社会の担い手となる可能性のある若者たちに。いま、勉強を、就活を、頑張っている高校生、大学生の皆さん、そうは思いませんか?

日本はひとりあたり840万円の借金を背負っていると言われています。
そんな生まれながらの、自分に責任のない借金なんてごめんだ、税金なんて払いたくない!
という方は、日本を出ていけばいいんですよ。でも、この日本、居心地いいでしょ? アジア圏の高学歴者だって、魅力的なこの日本へ就活しにやってきます。我が国の公的年金や医療保険制度の充実さは、世界でも引けをとらないんです。沈みかけた泥舟を我先に降りんとして、ご自身の党の運営もできなかった代議士先生に、この国の将来を担えるとは、私にはとうてい思えませんけれど。

加速する少子高齢化社会を乗り切るには、健康に、安全に、不公平なく、働けるひとを増やすことがいちばん。配偶者控除や成人している子の扶養控除はなくして、さっさと経済的に自立してもらいましょう。ある程度、からだを動かせばメンタルヘルスも改善します。株価が上がっているなら、配当所得を増税してもいい。

給付金バラマキではなくて、医療費控除のように、育児や介護、教育費にかかる支出を所得控除するような、働き手の負担が増えないような工夫もあわせて検討していただきものですね。



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