陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

おフランスの抱える矛盾

2024-08-01 | 政治・経済・産業・社会・法務
学生時代の第二外国語はフランス語でした。
美学美術史を学ぶのならば英語は必須で、第二言語ならば仏語もしくは独語という空気感が当時の専攻内にありました。ちなみに私はドイツ語の初級講座も取得していましたが、文献が読みこなせるほど学習できたのは英語、仏語だけです。さすがに仏文での執筆や対話は無理でしたが、読解ならば、英語と文法構造が似ているのでなんとかなりました。

大学の専攻内には留学経験者もいましたが、欧米ではやはりフランス人気が高い。芸術の都=パリという刷り込みがあるのでしょう。私は海外旅行も経験したことがありませんでしたが、教授連からもル-ブル美術館で本物を眺めたことがないものは芸術研究をすべきではない!といったお小言をもらったものです。そのたびに、海外の美術家であっても、日本のミュージアムに所蔵作品があったり、資料が入手でき、論文のテーマもしっかり構築できているのならばよいではないか、と反論したものでした。

近年、私が驚いているのは、フランスがとみに我が国のサブカルチャー、とりわけ漫画やアニメを高く評価しているという事実です。日本が評価するよりも先に、爵位に近い賞を与えていたりもする。フランスにある漫画喫茶では、日本のコミックが大人気。フランスにはれっきとしたバンドデシネという漫画文化があるのに。

このたびのパリ五輪の開会式でも、華やかなパリの暗黒面があきらかになりました。
王妃マリー・アントワネットの生首を抱えた歌い手だとか。最後の晩餐をはじめたとした名画や宗教の威光をどこかないがしろにした演出だとか。日本人ならば、こういう露悪的なパロディを国際的な舞台ではやらないと思うのです。

国民の貧窮をよそに贅沢をした王侯貴族をギロチンにかけて、国民主権の政治をかちとった革命国。そのわりには旧来の特権階級の建物など文化遺産を後生大事に文化の全面に押し出してくる矛盾を感じます。だったらセザンヌだとかマネだとかの印象派で生粋のフランス生まれの画家たちでよかったのでは、と。なぜダヴィンチのモナ・リザだったのかよくわかりません。人類史の名画をおちょっくって映像つくっちゃってる俺カッコいい!という厨二病に芸術監督がとらわれていたのでしょうか。

フランスといえばもはやアメリカ並みに人種のるつぼ。
移民も多いので治安も悪く、テロが常習的に発生しているともいわれています。海外旅行者が窃盗被害にあったという報告もよく聞きますね。

ヴィトンだとかシャネルだとか、ファッションブランドのリーダー国であることで権威がある。でも、それってアパレルに微塵の興味もなくて、日々暮らすのが精いっぱいの庶民に関係ありますか? フランス料理みたいな高級グルメも富裕層向けだし、とひねくれてみたりしたくなります。

私がいちばんフランスに嫌悪を抱いたのは、カルロス・ゴーンが日産を私物化して私益をむさぼったことです。
日本の会社が植民地化されて、労働者が奴隷にされてしまったようなもの。日産といえば、よく期間従業員の求人が出ていましたよね。日本人を安くこき使って、無能な経営陣は白人様に会社を売り渡したのです。

何年か前にトマ・ピケティ著の「21世紀の資本」がやたらと売れたけども、あれを読んだ経済学者や経営者層が労使の格差是正のために動いてくれたでしょうか、そんなことはない。

フランスは子連れで結婚したり内縁関係にもハードルが低いともいわれ、日本の少子化解消にお手本にすべきだという意見もあります。しかし、日本のお国柄では相続問題でもめるのが目に見えています。死後でも結婚できるとかすごい制度があるもんですね。

ゆいいつ日本が見習うべきだとしたら、農産品の輸出大国であるという点で、食糧自給率が低く、円安のために極度の物価高を招いている日本からすればうらやましい限りです。

日本人の意識高い系の方々が愛するおフランスをけなしてしまいましたが。
なんだかんだ言いつつも、星の王子様やレ・ミゼラブル、あるいはデカルト哲学は好きなので、私もフランスに一部魅せられてしまったというべきなのでしょう。

それにしても、五輪の開会式で世界各国の代表たる選手団をずぶ濡れにさせたり、自国の船だけゴージャスに走らせたのはいただけないものです。

フランスが自由・平等・博愛を尊ぶ人権大国で美を好み、文化を愛する平和な国家というのは全部が全部ではありません。パリ五輪でその幻想のほつれが垣間見えたのです。

しかし、これは努力や友情、愛をうたった漫画やアニメにあこがれた外国人が日本にきて貧富の格差や差別に直面し、幻滅するのと同じなのかもしれません。

とにかく五輪会期中は無事に競技が終わることを願っています。

(2024.07.29)





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