陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

「大神さん家(ち)のホワイト推薦」(十六)

2009-05-25 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女

「どうしてです?じつは、先生がヅラだからですか?着物とおなじで、髪型も固定されてますしね。モロバレですね、くす」
「おいっ!ユキヒトくんっ!今のは聞き捨てならんな!」
「学者は若ハゲが多いんですよ? そういえば、日によって額の分け目が、妙に広がったままのときがありましたよね?」
「ネットで根も葉もない悪い噂を広めないでくれ。またよからぬ連中にネタにされるじゃないか。神田正輝じゃあるまいし」
「僕、じつはこっそり見ちゃいました。ソウマさんだって後頭部に十円ハゲがあるんですよ。実のお兄さんは若白髪っぽいし。髪の毛に困難があるお血筋なんですから、気をつけないとね」
「君ね、大神一族をバカにするのかね?!(憤怒)」

ユキヒトはカズキの首ったけに抱きついてきた。絶好のシークエンスに、カメラマンも迫る。

「んもうっ、怒っちゃだーめ。静かにしないと、アタシがムリヤリ黙らせてやるわ」
「おいおい、今度はいきなり、コロナくんの口真似か…(呆れ)」
「こーら、静かにしろって言ってんでしょーが!おとなしくしないと、アタシのオロチのアツーいキスで、…ムフフ♥」
「って、おいおい!おふざけはよしなさい!」
「うっさい!あんたはアタシの声だけ聞いてりゃいいの!」

言うなり、ユキヒトは自分の紅茶いろのウィッグをカズキの頭にかぶせた。そしてまたどこから用意したものか、カチューシャ付きの黒髪のウィッグを被る。カズキの背中をいやな悪寒が走った。
目前に迫ってくるのが、美少女の幻影か、はたまた活き人形か、それならばまだなんぼか救われたかもしれない。しかし、悲しいかな、その正体といおうか、化けの皮はみえみえで、しかも蠱惑的な微笑みをたたえて顔を寄せてくる青年。

「こ、こら!だから、何をする気だ?!」
「え~。もう、わかってるくせにぃ。ほら、先生、観念して~ん」
「やめないか、おい?!」


ねぇ、姫子は私のこと、好き?(黒宮様スマイル)
「姫宮くんの真似をしてなにを?!ハッ!まさか…?」

陽の巫女服のユキヒトは、妖しい笑みを浮かべながら、月の巫女服の姫子ならぬカズキの両頬に手を添えて…そして。

「うあああああああ、近づくなぁああ!!やめんかぁあああ──ッ!!」


───視聴者の皆さまへ。一部の音声と映像が乱れましたことを深くお詫びします───






にわかづくりの爽やかな笑みをつくろったユキヒト。こころなしか紅いリボンがボロついている。カズキに預けた際に、痛めたのだろう。
額と頬とにべったりと歪んだキスマークをつけたカズキは、憮然とした面持ちで。
どうみても、これではふたりは事後のカップルである。カメラの前にそれとなく着衣の乱れた凸凹コンビが再登場したのは、それから五分後のこと。

「ええと、それで何の話だったかね…ああ、そうだ。DVD-BOXのCMについてだったね」
「なにをおっしゃいます。まだ未決の細目があるじゃないですか。先生の髪のミステリー(爆)です」
「な?!あれは、さっきの中断でカットされたじゃないか?!もう忘れてくれんかね」



千歌音ちゃん、わたし、忘れない。十年経っても忘れない!大神先生の髪が相当ヤバいってこと!
「来栖川くんボイスで蒸し返すんじゃないッ?!」
「なに言ってるんですか!考古学上の大発見に匹敵する大ミステリーですよ!」
「んなわけあるか!」
「その謎を明かさないと、僕、気になって夜もおちおち眠れないや」
「睡眠薬を飲みなさい(キッパリ)」
「先生が夜に珈琲ばかりガバガバ飲ませるから、眠れないんですよ。どうしてくれるんです?(プチ逆切れ)」
「君ね、ここぞってときに私をいたぶってくれるね」
「先生につきあってたら、すっかりカフェイン依存症ですよ。もう、こんなカラダじゃ、あたしお嫁に行けないッ!責任とって!」
「いったい、なんの責任だよッ?!」
「なーに、簡単な話。答えてくれればいいんですよ、例の謎にね。答えはイエスなんですか?イエスなんですよね?!どうなんスかぁ?!」

これでは蛍光スタンドと灰皿しかない冷たい机を叩いて、容疑者を吐かせようとする警部補である。現在のカズキの心境をいうとしたら、痴漢の冤罪にされた酔っぱらいおやじ。想像したくはないが、それに近いものがある。

「だから、そういう一方通行な誘導尋問はよしたまえ。さっきからずっと否定しつづけてるじゃないか」
「あっれー。でも、先生が異様に髪が長くてお手入れもたいへんなのに、あまり乱れたふうがないのは、とどのつまり…」

もうすっかり本来の任務を忘れて、おふざけにかまけているに過ぎない。
そんな愉快なふたりのあれこれを、カメラはまだ性懲りもなく追いつづけていた。


【目次】神無月の巫女二次創作小説「大神さん家のホワイト推薦」

 


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「大神さん家(ち)のホワイ... | TOP | 「大神さん家(ち)のホワイ... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女