陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

神無月の巫女設定資料集(二)

2014-10-25 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女


ところで、この設定資料集のキャラクターでいちばん頁が割かれているのは誰だと思われますか? 
正解は、そう、やはり主人公の来栖川姫子なんですよね。千歌音は15頁ですが、姫子は19頁あります。千歌音やソウマとセットの設定画があるためですが、それを除いても単独では多い。つまり、姫子がいちばん着せ替えが多かったということになりますね。設定を一枚描きおこすたびに費用がかかるので、けっこうお金がかかってる子なんですね。アニメではあまり着替えないキャラが多いので、珍しいのでは。(ただし、千歌音の花を活けている着物姿など一枚絵ですむものは、一回限りで作監が描くので設定画を用意しなかったのか、ここには含まれてはいない)

原作漫画だとそうでもないのですが、アニメ本編ですと、意外にも頻繁に髪型や衣裳を変えているのが姫子。なんとなく鄙びてて、漫画が好きで鈍そうな子なのに、けっこう可愛らしいファッションをしてますよね。

そして、いっぽうの千歌音ちゃんはといえば。
この人は、もっぱら乙橘学園の制服か巫女服がトレードマーク。部屋でも着てるし。学園理事長の孫娘なので、デスクワークもあるんでしょうが。もちろんお召しかえはあります。夜会のご令嬢ドレスとか、私服のブラウスとスカート(ちなみに、この邸内でみかける私服は設定資料集には含まれず)とか。生地としては上物なんでしょうけれど、でも、なんとなーく地味めですよね。とても女子高生とは思えないような、フォーマルな感じ。私邸にいてもプライベートがない窮屈な感じですね。

姫子が千歌音よりもお着替えが多いのは、姫子それ自体ではあまり存在感を発揮しにくいキャラでもある、というせいもあるでしょうね。とくに言動に闊達なところがないので、変化をつけたいのならば、外見にアクセントをつけるしかないから。それともうひとつ、姫子が作中、「最大の被害者であり、かつ生存者」でもあるという理由によるでしょう。制服が破れたりするシーンでもラフ画の指定があるので、アニメの製作上は、いわば破れた服を発注しているようなもの、となります。

千歌音ちゃんが自前のドレスをリフォームして、姫子にデート服を贈る場面があるのですが、そのドレスにしても青系統でクールな色あい。渡したお古のパジャマもイエローグリーン。ピンクのように、女の子の媚びたカラーではありません。これってね、ものすごく、女性心理をついた演出です。なぜって、女という生きものは、身近にいる同性があまりに女子力を発揮するのを怖れてしまうから。とくに、姫宮千歌音のようなサバサバした性格(でも、実際は内面がかなり脆いし、どっちかというと女々しさもある)タイプは。この作品は少女にボーイッシュさがないので、あまりそういう性自認が見えにくくなっていますが。

で、この姫子そのままの誰からも守ってもらえそうな素材を、わざわざ異性への媚びを招くものではない装いでくるんでしまった。そのところに、この作品の面白さがあります。というのも、この作品でおそらく色艶があるとして注目を集めてしまうのは、やはりどう考えても姫宮千歌音のほうですよね、外見的に。でも、なぜか、ソウマ少年にせよ、敵方のギロチにせよ、オトコの好意は姫子のみに集中していますよね。(作中、千歌音やソウマが男女生と問わずに絶大な人気があることがほのめかされるが、その学園を二分するふたりがなぜか、この平々凡々な主人公に惚れてしまうという、少女漫画っぽさの王道をいく展開のせいでわかりづらい)。ちやほやする信奉者はいるけれど、千歌音には乙羽さんを除けば助けてくれる人があまりいないのに、姫子にはソウマもマコちゃんもついています。

千歌音ちゃんにしたら、ほんと、ハラハラします。
だって自分の女友だちを他の仲のいい子に取られるときの嫉妬、なんてもんじゃありませんから。千歌音は本能的に、姫子それ自体が(本人が無自覚に)人をたらしこんでしまうような性質(?)があることに気づき、なるべく色難といいますか、まあ面倒なことにならないように、わざと男が萌えないような色彩を着せていたのではと思われます。彼女自身がいいとこのお嬢さまなので、へんな虫がつかないようにと育てられたふしがある。計画性があったのかどうか、さだかではありませんが、まあちょっとゲスな言い方させていただくと「私のイロに染まって」的な。でね、相手のファッションをコントールする、すなわち姿を自分好みに変えてしまうっていうのはね、恋愛におけるあるある、なんですよね。

この考察はまだまだ続きます。



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