陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

ディズニーアニメ映画「美女と野獣」

2020-04-29 | 映画──ファンタジー・コメディ

民話やら童話というものには、しばしば訓話が含まれています。
不埒な心構えでいるとひどい目に遭うよとか、清く正しく慎ましく生きていればいつか幸せになるだろうとかの。最後の最後のハッピーエンドは、大金持ちになるか、パートナーを見つけて幸せになるというものが多いもの。人類の歩み古くからそのような物語が存在した裏には、どうにもならない現実があったから、そして世の乱れを統制するに、物語こそは宗教と同じく魅惑的な力を持つものであったことでしょう。

2020年4月23日の金曜ロードショーは、ディズニー史上不朽の名作アニメ「美女と野獣」。
原題は「The Beauty and the Beast」、ヒロインのベルはフランス語の美女を意味する「Belle」からきています。ベルエポックのベルですね。

個人的に、このお話は、ディズニーアニメのなかでも男女ともに人気がかなり高いと思うのですが、紳士諸兄の皆さんいかがでしょうか。すくなくとも、「アナと雪の女王」よりは。命を張ったヒーローがいるのに、雪だるまのほうが人気だなんて悲しすぎます(笑)。中の人、捕まっちまいましたが。


発明家の父親と暮らす娘ベル。
町の人気者ガストンに求婚されるも、粗忽者ゆえに好きになれない。ある日、森の夜道で父親が行方不明になる。後を追ったベルが辿り着いたのは、おぞましい古城。城の主である凶暴な野獣に申し出て、囚われの父の身代わりとしてベルが城に暮らすことになるが…。

この映画、結末だけ知っていたものの、前提としてなぜ城の主が野獣になっていたのかを忘れていました。なるほど、人を外見で差別してしまう男にかけられた呪いだったわけですね。自分の容姿に自信があった分、そこを失うと劣等感の塊として、よけいにひねくれてしまう。しかし、純朴な娘のベルは野獣の外貌ではなく、その横暴さに距離をおいていただけ。狼の群れから救ってくれた後の献身的な看護から一転、ふたりの仲はプラトニックではありますが深まります。

ところで、この野獣の外見はバッファローはじめいろんな動物の合体なんだそうですが。
意外と照れ屋なのか、女性あしらいが慣れてないのか、強面のわりにはところどころ童貞ぽくて(爆)、絶妙に笑えます。周囲の家具たち侍従のユーモラスさも手伝って。

ディズニーアニメって、絶対、あの手の擬人化されたモノがいますよね。起きたら、勝手に服を用意してくれるクローゼットとか、勝手に食事を運んでくれるティーセットとか、スケジュール管理してくれる目覚まし時計とか、本気でほしいですね。あんな至れり尽くせりの道具があったら独り暮らしでも楽しいけど、人間のぬくもりがなくて気が狂うのかな。

豪勢なお城住みのわりには食事のマナーがなってない野獣に対し。
ベルもさほど上品な生まれでもないのか、スープの飲み方を合わせてあげているところなんかがツボですね。見かけが獣のせいか、なんかガタイの大きなペットを可愛がっている感じにも見えてしまうのですが(笑)。

ベルの優しさにほだされて野獣さん。父親会いたさの彼女に懇願されて、ついに解放してくれる。
このときの、愛しているから、彼女を手放した、という野獣の台詞が胸をうちますね。いや、ホント。DV夫だったら、奥さんが里帰りしたり、友だちと会ったりするのさえ嫌がりますでしょ。ベルが帰ってこなければ、自分が人間に戻る可能性が閉じてしまうのに、それを厭わない。そもそも、自己利益のために彼女を振り向かせようともしない。野獣なのに、ずいぶん草食系男子な彼です。女子の皆さんの好感度アップ。ついでにいいますと、父親を大事する娘さんは旦那さんも大切にするので男子からもヒロインの好感度アップでしょう。

が、しかし。恋のお邪魔虫ガストン一味が城に奇襲をかけたことで、野獣のお城がピンチに。
家来衆がうまく連携して撃退はしますが、隙を衝かれたガストンの一刀が野獣の致命傷に…。死の淵で泣き叫ぶベルの告白が、やがて奇蹟を生みます。あとは、お馴染みのめでたしめでたし、と。

このディズニー映画、かなりの好評だったせいか、続編が第二作つくられたようです。
1991年ですからまだ平面的なアニメーションですが、セル枚数が多いせいか表情が豊かすぎて。アメコミ好きな方なら見慣れてるかもしれませんが、自分としては、ヒロインが美女にはあまり見えませんでしたけど。ベルは野獣の姿に恐れず接したけれども、周囲のお膳立てや、お城の豪華さや書架の蔵書数だとか、まあそんな環境要因にもほだされていたんじゃないかなあという気がなきにしもあらず。

生まれながらに豊かで何不自由なく甘やかされて、自己にうぬぼれてしまったら、他人をいたわり愛することが難しくなる、ということが教訓なのかもしれませんね。可愛いが正義!な、美形ばかりが出てくる萌え系なアニメがはびこる日本で育ってしまった私には、ずいぶんとまあ耳に痛いお話なのでした…。

大ヒットしたエマ・ワトソン主演のディズニー社製だけではなく、フランス制作でも実写版があるようですね。いつか観てみたいものです。

(2020年4月23日視聴)






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