陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

小説『少女革命ウテナ 翠の想い』

2009-05-11 | テレビドラマ・アニメ



ごぞんじ、『少女革命ウテナ 蒼の双樹』の続巻ですね。
翠とあるからには、ウテナの決闘相手は、西園寺莢一。しかし、この巻には主人公ウテナをも食ってしまうほど大活躍する少女がいます。それは、ウテナの親友、篠原若葉。
「翠」というのは、もしかしたら若葉の謂いなのかもしれません。


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西園寺にフラられてしまった若葉は、天上ウテナの優しさによって元気を取り戻す。しかし、彼女はウテナにいつも影のように従っている姫宮アンシーに、嫉妬を感じてしまう。
しかし、ひょんなことから、若葉は意中の人、西園寺に急接近。西園寺のこころは別の人物に向けられているのですが、まんざら悪くはない仲に。
西園寺の素顔、なかなか、かわいい奴じゃあないですか。
しかし、ふたりを引き裂く悲しい陰謀が待ち受けています。

今回も桐生冬芽が、いいヒールっぷりをしてくれます。
前巻ともけっきょく「世界の果て」こと鳳暁生が登場しないのですが、その役割を担っているような。
でも、最後の台詞は寒々しいですね。

意外に樹璃さんがウテナに優しさを向ける場面も。
そして、敗北を喫して強くなろうとする幹のすがたも、けなげ。
若葉がグリーンピースを嫌いなのって、西園寺への当てつけ…?

『少女革命ウテナ』という作品は、王子様とお姫さまというお伽噺的な記号を散りばめながら、その実、たんなるボーイ・ミーツ・ガールストーリーではありません。
この作品をパロディにした安っぽい男女の恋愛譚が、足もとにも及ばないのはそのため。愛情を描く、なんていう気負いがまったくなく、自身それに属しながらも、漫画やアニメのサブカルチャーを平然と唾棄してみせるような冷たさがあります。

この巻は、どちらかといいますと、アニメにただよう乾いた空気感に似通っていますよね。
死の匂いが散らついています。


小説は二巻で終わってしまったのですが、願わくば、もっと読んでみたかった。樹璃さんが主役のお話ですとか。アニメでけっこう深く掘りさげられていたから、無理かもしれないけど。

リマスター編集したDVD-BOX(アナログ音声に対応していないそうなので、私は買ってないのですが。高価とはいえ、話数が四十話近くもあるので、質量ともに申し分なし。DVD-BOXもすごくセンスがいい!)も発売されたことだし、幾原監督とさいとうちほ先生が、二月に対談されてもいるし、まだまだ話題を提供されているのではないだろうか?
二、三年まえに続編がリメイクされるとかいう噂を聞いたけど、どうなったんだろう?

ちなみにそのDVD-BOXのパッケージの帯、当初は裸体に白のカーテンだったけど、「エロすぎて別ジャンルにみえる」という理由で変更されたらしい(こちら参照)

奇才幾原邦彦は、もうアニメをつくる気はないのかな?
いまのアキハバラ文化(メイドや猫耳が出てきて、ありきたり展開のボーイ・ミーツ・ガールのアニメ)にはかなり辛らつな意見をもっていらっしゃるよう(文化庁メディア芸術祭の審査コメントでそのようなことを述べていた)なのだけど、できればまたすばらしい作品を生み出して日本アニメの復興に協力してほしいと思う。ウテナ制作中に倒れられたらしいので、無理なのかもしれないけど…。



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