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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

アニメ「精霊の守り人」

2008-04-05 | テレビドラマ・アニメ

四月になったので番組改編で,新しいドラマやアニメがラインナップですね。今期も毎回百合アンテナを張ってらっしゃる方々によりますと、百合作品は不作のようです。
といっても、めばしいものがあっても、たいがい全話通して観ることがないですけれど。

私はだいたい、週末にテレビを観ることが多いのですが、よく観る日は金曜と土曜です。むかし、はなきんデータランドという番組があって、これが半期に一度アニメ大賞というのをやったんです。ちなみに司会が桂文珍で、あの若かりし頃の和泉元彌くんも出ておりました。で、その裏番組がたしか「ふしぎの海のナディア」で。この「はなきん」におもしろい企画があると、どちらを観ようか夕食も喉を通らないほど真剣に迷った覚えがあります。(そんなことで頭を悩まさないでください、十代の私)

親方日の丸思想なのかもしれませんけれど。なんとなく、もと国営放送アニメって、安心できると思いませんか?宮崎アニメよりも、私、NHKアニメのほうが数倍好きです。(テレビアニメでただ見だから、は言わない約束で(笑)じっさい、企業CMスポンサーがないのに経営維持できてるのか。受信料不払いもあるのに?)いや、正確にいうと好きでした、ですね。他に好きだったのは、「三銃士」。酒井法子の「こころに冒険を~夢を抱きしめたくて~」ではじまるフレーズが、いまでもリフレイン。このOP曲「夢冒険」は、エレクトーンでそらで弾けました。(いまじゃ無理ですが(汗))
NHKって、世界名作劇場とか、とにかくあたりさわりなさそうなものを放送するかと思っていましたが、そうでもないんですよね。CLAMPの「カードキャプターさくら」が放送されたときは、びっくりしました。そういえば「おにいさまへ…」も放送されていたんですね。「火の鳥」シリーズもよかったですが、川澄嬢主演の「雪の女王」も嬉しかったですね。

前置きが長くなりましたが。
今期のNHKアニメ、期待作がひとつ!といいましても、昨春BSで放送されたものの地上波初放映なのですが。
アニメ「精霊の守り人」です。
今日の朝九時から第一話放送開始。全二十六話でした。

これ、「なのは」のDVD借りるときに見かけていつか観たいと思って見のがしていた作品。まさか、テレビで観れるとは!!女性人類学者(といってももっぱら児童文学のほうで活躍されているようですが)が書き下ろした同名の児童文学(初版は九六年刊行)が原作です。なおNHK-FMのラジオ番組青春アドベンチャーでも、〇六年八月より放送されていたそうです。(マンホールのなかで叫んでいるように耳にがしがし響く、日本昔話のナレーターのあのおっちゃん声(だと思うのですが、違うのかしら?)って、なつかしいわ(笑))

一話だけ観ても、かなりの美しい映像、なめらかな動き、斬新なカットの数々。惚れ惚れしますね。ただ、まだ一話ですので楽しみは今後の展開次第。前年やっていた「ロミオとジュリエット」みたく、古典をベースとしつつ大胆な脚色、瞠目せざるを得ないCG技術とスペクタクルに感嘆しつつも、途中のおざなりなシナリオに失望したなんてことにならねばよいのですが。

用心棒の女性、短槍づかいのバルサが、王妃の懇願によって王子チャグムを暗殺者の手から救うため、戦うというストーリー。詳しくは精霊の守り人公式サイトをご参照ください。話のつくり自体は、よくある貴種流離譚と妙齢の女性の親ごころ、そして住処をさだめず浮浪する人間にありがちな原罪意識を負わせたもの。が、映像と音楽がなかなかよろしくて、みごたえありです。
原作は、守り人シリーズとして、バルサの生い立ちに迫ったものや、皇太子に就任したチャグムの活躍を描いた続編があるとのこと。

ちなみに原作者の上橋菜穂子氏は、大のアニメファンでとくに『攻殻機動隊』シリーズが好き。そういえば、主人公バルサには、あの少佐もとい草薙素子の面影がありますよね。声質も似てますし。(最初聞いたとき、ミカ様もとい田中敦子様かと(惚))このアニメの脚本・監督を手がけた神山健治氏は、攻殻機動隊S.A.Cシリーズの総監督を務めています。
韓流ドラマ人気や、アジアンファンタジーブームって、すこし前のNHKでやっていた「十二国記」が典型ですが、私の知るかぎりでは、『後宮小説』を原作とした「雲のように風のように」からの流れかしらと思っています。そんな私も歴史物や古典は好きです。
妙齢の女武芸者と、少年貴人との組み合わせ。現代おんな版子連れ狼といったところですが、いまの精神的シングルマザー気分な女性がた(家庭における父権が薄らいでいる)には、けっこう好まれそうな設定だと思います。原作の忠実なファンには、アニメの見た目が若すぎるというクレームがついたそうですが、若年層の関心をとりこもうと配慮したのでしょう。私も原作者HPにみる挿絵のよりは、このアニメのバルサのほうが好きです。頼れるお姉さんぽくて。『エヴァンゲリオン』のシンジくんとミサキトさんの関係もこれに近い。でも、あのアニメ好きじゃないですけどね(爆)

ちなみに、このアニメ、NHKは後押ししてますが、ふつうの現代っ子アニメファンにはウケが悪いそうです。そりゃそうだ、男の子はかわいく笑顔でなびいてくれる萌えな美少女がお好き。女の子がつごうのいいとき救ってくれる王子様の登場を待っているように、男性諸兄は自分にかしづいて身の回りのお世話をしてくれるメイド少女を欲しがっています。私もせつなちゃんみたいなかわいいメイドが欲しいです(殴)

このバルサとおなじ三〇代ってのは、男女ともに生きにくさがあらわれる年代ですよね。団塊の世代がしでかしてきた社会のひずみを、いちばん押しつけられている世代です。もちろんすべてのこの世代が悪いわけではない。でも、名士と呼ばれてふんぞりかえっている方のなかには、人間としてどうかと思うような方もいらっしゃいますよね。同僚に嫌がらせして自分の保身を図り、若い世代を不安定な雇用形態で安くこき使い、年功序列の恩恵をうけていた自分は退職金と年金をもらって趣味にうちこみながら、いまの若者は教育がなっとらんなどとお小言を言います。そんな親父世代の背中をみて育ったジュニア世代、不安定な中間層です。こどもにも戻れやしないし、かといってすこし上の世代をみても、四十にして惑わずどころか、大いに迷走している。既得利益を保守して老後の安泰を得ようとする老獪なエゴに押しつぶされようとしているんです。

いまのアニメ文化をみて育ってアニメ作りてに回った世代も、たぶん三〇代前後が多いと思います。たいがい、お話のパターンがどこかでみたもので飽き飽きするものですが、その表現のなかにはファンタジーの衣につつまれた社会への諷刺がみてとれます。極端に高度にナノテクノロジー化された未来社会を夢想するのも、幻想を超古代異世界ファンタジーへと落しこむのも、自分たちが身をおいてうんざりな現実をつつくがためです。でも、現実をしっかり壊そうとか,価値観ひっくりかえそうとまでは思わない。おとなとしての生活がかかっているから。

最近やたらと、マスコミ周辺が凶悪犯罪とむすびつけてアニメ漫画カルチャーを叩こうとするのも、そうした痛烈な表現者たちの口封じをおこなおうとしているように、思えてなりませんね。現代っ子のいくばくかが、テレビを信じちゃいないことはご存じ?CMを間にはさんだドラマなんて見たくないでしょ?いま、パチンコ業界のCMまで堂々と夜九時台に流しているくせに、まともな公共広告機構だか環境保護のCMは深夜アニメの間にはさむんです、テレビ局。まともな中堅企業は、ネットの広告に活路を見出し、数字をねじ曲げられそうなブラウン管のなかの視聴率よりも、読者の反応がすぐさまフィードバックするブログ界をあてにするでしょう。

ふつうはありえないような豪壮な都会のワンルームマンションにすむビジネスマンやOLのラブロマンスを斜に構えて眺めていて、学園ドラマやバトルファンタジーにのめりこんでしまうのも、道理です。こうした現実逃避は、過去なんたびもおこった古典ルネッサンスとおなじに、最新メディアを用いた懐古主義に相違ないのですから。現実の役者やコメンテイターたちが発言の自由を奪われているので、物語の作り手が架空の人間に真理をかたらせているだけです。

話がずれてきましたが(いつものことです(開き直り))、ウケ狙いでないこのアニメ、NHKで放映されることには万々歳です。大河ドラマ篤姫の商標登録問題(こちらの記事で触れています)などでNHKには不信がつのることもありますが、良質な番組を放送しつづけているのはまぎれもない事実。今後とも、良質なアニメを流してほしいものです。

【参照サイト】
NHKアニメワールド:精霊の守り人
livedoor Anime News 「精霊の守り人」アフレコレポート 
Ask Johnふぁんくらぶ 「『精霊の守り人』の続編はないのですか?」 


画像はDVD第一巻表紙です。

精霊の守り人シリーズ

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