昨日の骨董市で初めて見たものに、人形代〈ひとかたしろ〉のような真っ黒な木製の人形がある。
形代自体は穢れを払うために、神社などで白い紙で作られたものが
配布されたりしているので知っているが、この真っ黒な人形には驚いた。
店主にこれはなんですか?と尋ねた。
〈東北を中心とした山岳信仰の中で作られたもので、子どもが産まれると健やかに成長するように願って飾られるもの〉
だとのこと。
人形代とはワタシが勝手に呼んでいるだけで、本当の名称はわからない。
大きさはいろいろで、丈は30から60cm。中には被り物を着けたものもある。
よく知られる滋賀県から出土した木製の形代や、
奈良県平城宮で発掘された、やはり木製の形代は薄い造りだが、
この形代は立体的で重量感があり、黒々としている。
滋賀県で出土した木製の形代。
形代については下記のような解説がある。
〈神霊が依り憑く(よりつく)依り代の一種。人間の霊を宿す場合は人形を用いるなど、神霊が依り憑き易いように形を整えた物を指す。身代わり信仰により、人間の身代わりとされた。3月の上巳の節句に、この形代で体の調子の悪いところを撫でて(このようなものを撫物という)穢れを遷した後に川や海に流し、子供の成育を祈ることがあった〉
やはり子どもの生育に深く関与する、宗教的な意味合いの深い人形なのだ。
半紙で作られた形代。
店主に
〈昔は子どもが死ぬことが多かったから、死なないようにと願って飾ったのでしょうかね〉
と言うと
〈そうやね。子どもを大事に育てるお祈りやったんやろね〉
と店主はしんみり答えくれる。
詳しいことはわからないままだが、こんな会話ができるのも
骨董市ならではの楽しみのひとつである。
値段は一体5万円から10万円と強気である。
とてもワタシが買える値段ではない。
というか、こういったものは個人が収蔵するものではなく、
博物館や郷土資料館のようなところで収蔵・公開すべきものだろう。
つい話を聞くことに夢中になって、写真を撮ることを忘れてしまったのが残念。
この歳になって、知らないことばかりや、とつくづく思う。
とりあえず思い出しながら、絵を描いてみた
下手な絵である。