歌舞伎見物のお供

歌舞伎、文楽の諸作品の解説です。これ読んで見に行けば、どなたでも混乱なく見られる、はず、です。

「大津絵道成寺」 おおつえ どうじょうじ

2008年11月24日 | 歌舞伎
京鹿子娘道成寺(きょうがのこ むすめどうじょうじ)」をモチーフにした、「道成寺もの」の、いちバージョンです。
「大津絵(おおつえ)」になぞらえて「道成寺」を踊ります。

大津絵というのは、滋賀県大津の、「三井寺(みいでら)」付近で売られた、土地の名産品だった仏教画です。
もともとはお寺で発行する仏教画だったはずなのですが、だんだんバリエーションが増えて宗教色が薄れ、
「独特のタッチで描かれた、ちょっと愉快なお土産用の絵」という雰囲気のものになりました。

巨大なお坊さんの頭に、うしろからハシゴをかけてタヌキが上っていく、みたいな絵柄に代表されるシュールな雰囲気が特徴的です。
琵琶湖のほうから京に入ろうと思ったらかならず大津は通りますから、大津は観光、商用含めて旅行客の多い土地です。
それもあって「おみやげ品」色が濃くなったのだろうと思います。

「大津絵」は江戸前半期、元禄のころからありました。
江戸街のの錦絵(にしきえ)などが時代が進むにつれてどんどん高度に、豪華になっていったのに対して、「大津絵」は低コスト低価格路線を突き進んで、あまり進化しませんでした。
飾りもなくて安っぽいです。絵もあまり上手くないです。
しかし、独特の絵柄や楽しい図案が喜ばれ、「大津でしか買えない」のもあって、根強い人気がありました。子供向けのお土産には最適なのです、かさばらないし。

江戸時代の庶民には「大津絵」はかなりなじみが深いもので、どの家にも一枚くらいは「大津絵」があって、屏風の破れたところに貼ってあったり、子供のおもちゃになっていたりしたのです。
お芝居の小道具にもときどき出てきます。

シュールな図案が多く、ちょっとグロテスクなのもありますが、きれいなお姉さんの絵もあります。
キレイなところでは「藤娘」が有名です。藤の花の下、藤の花を肩にかついだ美女の絵です。
踊りの「藤娘」は大津絵がモデルです。

この「大津絵道成寺」は、「道成寺」の内容に沿って、この大津絵をモチーフに次々衣装を変えながら踊ります。

「道成寺」は人気演目で江戸時代から何度も上演されていますので、お客さんを飽きさせないためにバリエーション増やしました。
いろいろやります。この作品もそのひとつです。

=「京鹿子娘道成寺」=

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