歌舞伎見物のお供

歌舞伎、文楽の諸作品の解説です。これ読んで見に行けば、どなたでも混乱なく見られる、はず、です。

「連獅子」 れんじし

2013年09月06日 | 歌舞伎
急ぐとき用の3分あらすじは=こちら=になります。

お獅子が毛を振る、歌舞伎の人気演目の中で、親子で並んで毛を振るほうです。
獅子が2体いるぶん豪華さが増します。

だいたいの流れを書きます。
舞台は天竺の清涼山という山です。山の中には伝説の橋があります。「石橋(しゃっきょう)」と呼ばれる石の橋です。
山の中で、岩が長い年月で削られて細い橋の形になりました。下は千尋(せんじん)の谷ですよ。橋の形をしてはいますが渡る事はほぼ不可能です。橋の向こうは文殊菩薩の住む世界とされています。

狂言師が出ます、右近(うこん)と左近(さこん)です。特に舞台設定との脈絡はありません。
「狂言師」ですが、とくに滑稽なことを言ったりしたりするわけではなく、
むしろ格調高く、ふたりは石橋の様子や、そこに住む文殊菩薩の使いだという獅子について語ります。
そして獅子の親子の有名なエピソード、親獅子が子獅子を千尋の谷に突き落とし、這い上がってきた強い子供だけを育てるというあの話を
語って、舞います。
子獅子は谷底の水辺で楽しく遊びかけるのですが、水に映った父獅子を見て我に返り、
断崖絶壁を駆け登って父のところに戻ります。子育てって難しい。

前半はそんなかんじです。
どこからか迷い込んだ蝶に誘われるように狂言師が引っ込み、ふたりの僧が出て来ます。
日本から修行にやってきた蓮念(れんねん)さんと篇念(へんねん)さんです。
「蓮念」の「連」は「南無妙法蓮華経」の「蓮」ですよ。法華宗の僧です。「遍念」の「遍」は「百万遍」とかの「遍」だと思います。浄土宗の僧です。
ふたりとも石橋の向うの文殊菩薩の世界を拝みたくてやってきました。仲良く道連れで来たのですが、宗派の違いからけんかになります。お互い太鼓と鐘を叩いて主張しますよ。
やがて不気味な風が吹き、獅子が出るかもしれないと思ったふたりは、逃げていきます。

さっきの狂言師たちが獅子の精になって登場します。獅子の舞を舞い、胡蝶(ちょうちょのこと)にたわむれているうちに獅子の精が乗り移ったのです。
親子の獅子は激しく舞い、「獅子の座」に上がっておさまります。

終わりです。


もともとは能の「石橋(しゃっきょう)」という演目を元に作られた「石橋もの」というジャンルに入る作品です。
なので、舞台設定も天竺の清涼山ということになっているのですが、狂言師が出たり、中盤に出る僧ふたりもコミカルな雰囲気で、中国に渡って必死で修行する僧の厳粛さはあまりなかったりと、
設定部分は殆ど背景の書き割り的にしか使われていません。
あくまで、お獅子を見るのが主眼の演目ですよ。

=「石橋」=

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